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次世代ゲームAIアーキテクチャ

生き物の知性と身体は常に環境と共にあり、環境とそれに適応する身体の複雑化は、進化の中で常により高度で強力なそれを制御するための知性を必要として来ました。これからのデジタルゲームを考える時も、やはりゲームステージとキャラクターの複雑化は、高度で複雑な知能(=AI)を要求します。しかし、ゲームAIには常に「カスタム性」「拡張性」「多様性」が必要とされます。複雑なものを複雑に構築していていたのでは、それは適いません。そこで、50年に渡る学としての人工知能の知見と、この15年のデジタルゲームのAI技術の発展を基礎に、次世代のゲームに耐える汎用的なアーキテクチャを探究して来ました。

基礎となるアーキテクチャは、環境と生物の間で循環を為す情報の流れ(インフォメーション・フロー)を形成するものですが、様々な経路を通る大小たくさんの情報の流れが複雑に絡み合って、一つの大きな奔流を形成し、知能の様々な機能を駆動して行きます。また、生物の知能と身体にも固有のダイナミクス(運動の構造)があり、そのダイナミクスとこの流れが相互作用することで、その場に応じた新しい知的運動を産み出して行きます。

今回は、このフレームの概要をご説明することで、これからのゲームAIが進むべきビジョンをお伝えいたしたいと思います。

講師紹介

三宅 陽一郎(AI担当リードリサーチャー)

京都大学で数学を専攻、大阪大学で物理学(物理学修士)、東京大学工学系研究科博士課程(単位取得満期退学)。2004年よりゲーム業界にてゲームタイトルにおける人工知能の開発・設計に従事し、デジタルゲームにおける人工知能の体系化・理論化を進める。同時に、その成果を講演や論文を通じて広くゲーム産業全体における人工知能分野の推進に努める。2011年、スクウェア・エニックス入社。ゲームエンジンにおける人工知能の役割を深く追求する。CEDEC2006-2009 の講演を始め、KGC(Korea Game Conference)、筑波大学、東京大学、JAISTその他招待講演多数。特集論文「ディジタルゲームにおける人工知能技術の応用」(人工知能学会誌 Vol.23 No.1 2008/1)。デジタルコンテンツシンポジウム2008論文「エージェント・アーキテクチャに基づくキャラクターAIの実装」(船井賞受賞)。「オンラインゲームにおける人工知能・プロシージャル技術の応用」(日本知能情報ファジィ学会誌 Vol.22, No.6 2010/12)。共著『デジタルゲームの教科書』 ロングインタビュー『デジタルゲームの技術』(ソフトバンク クリエイティブ)。

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