INTERVIEW

Vol.01

松多壱岱(演出・脚本)/マッシュトラント(衣装・特殊造形)/小泉萌香(フクロウ役)

――今回『トワツガイ』の舞台化が発表されました。ゲームの配信前に舞台化が発表されることは珍しいと思うのですが、どういった経緯で決まったのでしょう?
松多: ゲームのプロデューサーの藤本さんからお食事会に誘われて、そこで新しいタイトルを立ち上げることに加えて、そのゲームを舞台化したいということを聞いたのが始まりですね。 その時点では、“鳥の名前にちなんだ女の子”たちが出るというお話だけが決まっている状態でした。ストーリーとか世界観とか固まり切っていなくて、まだまだフワッとした状態でしたね。 それから、関谷さん(※1)と一緒に舞台を作った時に、藤本さんも舞台を見に来られていて、このタイミングでまずはゲームのシナリオの監修に入ってもらえないか、みたいな話になって。そこから、今回の舞台のプロデューサーである小林さん(※2)とつながると、あっという間に舞台化の座組も決まりました。
――人の縁のつながりで進んだ話だったのですね。まだゲームの概要が固まっていない状況で舞台化の話を聞いたときはどう思われました?
松多: 女の子同士の尊い雰囲気、バトルアクションというところでイメージがつきやすく、(舞台化は)とくに問題はないという印象でした。尊さのエッセンスがかなりピックアップされていて、お互い助け合う、想い合うっていうことに命を懸けた世界観。舞台化するイメージがつきやすかったですね。そして何より音楽がMONACA(岡部啓一・瀬尾祥太郎)さん(※3)だというのも組み合わさって、これは観客の心に届くものになるという予感がしたんですよ。
――ゲームと舞台の物語の関係性はどのようになっているのでしょう?
松多: 細かいところはまだ言えませんが、ゲーム側のあらすじの構想に関わったり、監修したりしていくうちに、舞台はゲームのストーリー上で非常に盛り上がるところを表現しよう、という流れに落ち着きました。ゲームとは完全に別で新しいストーリーを作るのではなく、ゲームのメインストーリーを軸に起承転結して、次の世界が見えるように綺麗に落とし込もうと思っています。
――小泉さんは、最初にゲーム&舞台化の話をお聞きになった率直な感想をお聞かせください。
小泉: 舞台があることは、ゲームのフクロウ役が決まったお話の際にマネージャーさんから同時に聞きました。その時に速攻で舞台にも出たいです、と答えさせていただきました!ゲームはゲームの、舞台は舞台の楽しさを知ってるので、ゲームで世界観を感じつつ、舞台でもトワツガイの世界を生で感じて欲しいなと思います。
――フクロウという役を演じるにあたって気を付けた点や苦労した点を聞かせてください。小泉さんから見たフクロウとは、どういうキャラクターだと思われますか?
小泉: 心がどうにかなりそうでしたが、基本的に常に不安な気持ちで挑みました。闘いたくない、早く帰ってゲームがしたい、私のせいで誰かを嫌な気持ちさせたくない、もう苦しい思いはしたくない。だけど、そんな気持ちのどこかに、怖いけどここを乗り越えたらまたいつも通りの生活が戻ってくるかも、幼馴染のフラミンゴがそばにいてくれて嬉しい。フラミンゴという希望の光がいてくれたから、嫌なことも踏み出せてるんだと思います。そんな雰囲気が伝わってくれると嬉しいです。
――ありがとうございます。さらに、今回松多さんの舞台化に欠かせないひとりとして、『舞台ヨルハ』などで衣装を手掛けられてきたマッシュトラントさんも参加されることが決まっています。今回も最初の段階から担当されることが決まっていたんですか。
松多: かなり初期の段階からだったと思いますよ。
マッシュトラント: 2021年12月ぐらいに制作中のキャラクターイラストを小林プロデューサー(※2)に見せていただいたのが最初です。スマホで見たので、「なるほどね、これくらいのシンプルで単色のキャラクターなのか」という認識だったんです。その後2022年4月くらいに、改めて正式なイラストを見せてもらってびっくりですよね。描写がじつに細かい(笑)。 この仕事を30数年やっていて、キャラクターをアニメや舞台で動かすときは、コスト的にも時間的にも引き絵(特撮でいうアップ用、アクション用みたいな)の簡素化されたキャラクターにすることが多いんですね。 ただ、コストや時間は言い訳で、内容の濃いゲームキャラクターをいかに具現化するかっていう課題に取り組まないといけないのが我々の仕事だと思っているんですね。いかにみなさんの頭の中にある100点に近づけるかを大事にしています。そういう意味で『トワツガイ』のキャラクターたちは手ごたえがありましたね。
――衣装に関してですが、1体おおよそどれぐらいの時間がかかるんでしょうか。
マッシュトラント: もしゼロから全部1人で作るとしたら、1体1ヶ月はゆうにかかりますね。衣装はいただいた情報、資料を元にして作るんですが、ゲームの場合、キャラクターひとりに対して三面的なもの1枚とイメージ画が1枚、よくて2、3カットというケースが多い。これらの情報から何を読み解くのかが大事なんです。
――読み解く作業?
マッシュトラント: キャラクターの衣装・造形は、伝言ゲームに近いんです。絵を描く側の筆圧や描き方によって、どこがこのキャラクターのキーアイテムで、どういう風に造形してほしいのかを読み解いていくことから始まるんです。 イラストの1本の線から描いた方の気持ちを読み取ったり、全キャラクターを見て連動性がある記号を見つけたりとか。イラストや資料などをただ見るだけではなくて、込められたメッセージを読み解くことで、お客さんが見たときにすんなりゲームの世界観に没入してもらえる出来になると思うんです。
――そんな中、今回『トワツガイ』で作られているもので手ごわかった部分はありましたか?
マッシュトラント: 白衣を着ているキャラクターは手ごわかったですね(笑)。そもそも白衣はどう作っても白衣にしか見えない。だからといって、まわりのキャラクターたちにあわせて突拍子もないことをやると、白衣っぽさが消えてしまうんですよ。

松多: 『トワツガイ』は鎧のような衣装を着たキャラクターもいますし、そのなかで白衣というのはある種、異質ですからね。
マッシュトラント: ですね。白衣の素材だけで、5種類ほど試しました。本当は近未来的に見えるようにもしたかったんですが、前置きがなく始まる舞台だと、初めて観る人が白衣だと感じない可能性もあると思ったんです。
松多: これだけ世界観やキャラクターについて考えた衣装なんですが、なおかつ“動きやすい”んですよね。これがオンリーワン。イメージ通りに作るだけじゃなく、ちゃんと人が着用できるものにしてくださるんですよね。ちゃんと殺陣もやれてダンスもできて、しかも、動いても乱れないように調整されていて、強度面や安全性も考慮されている。このレベルのお仕事は、マッシュトラントさんにしかお願いできません(笑)。
――小泉さんは、ご自分の衣装や武器をご覧になっていかがでしたか?
小泉: 髪型がウルフヘアぽかったりインナーカラーが入ってたりで可愛いなって思いました。あとフードがちゃんとフクロウの羽角っぽい部分を再現してあるのもポイントです…。武器は初めて弓を扱うのですが、「遠距離武器だから遠くから打つだけかも〜」と余裕ぶっこいてたら壱岱さんに、「矢でも戦えることを知らないのか?」と言われてしまいました…。すごく戦わされそうです…(笑)
――このインタビューを聞くと、本番が俄然楽しみになりますね。最後に『トワツガイ』を心待ちにしているユーザーのみなさんに一言ずついただけますか。
小泉: 自分達の日常を取り戻すために勇気を振り絞って戦うトリたちの生き様を見ててください。繊細で美しくて、だけど残酷で苦しくて。そんな世界観をゲームでも舞台でも表現できならなと思います。1人でも多くの方に遊んでいただき、そして劇場に遊びに来ていただきたいです!
マッシュトラント: ゲームを遊んだユーザーの方々が舞台を観に来られた時に、『トワツガイ』の世界に引き込めるよう1体1体の衣装を手掛けました。役者の方々がいかに着こなしてくれて、どう舞台を盛り上げてくれるか、個人的にも楽しみにしています。
松多: 今回はゲームのシナリオ監修、原作から入らせてもらえて、非常にやりがいを感じました。これまで舞台で培った経験を、セリフの流れや行動の意味など、ゲームのシナリオにも活かせたと思います。 また、舞台の方は逆に、そういう世界観、ゲームの画面から舞台美術、役者さんなどチーム全員の力を借りて、どう具現化して本当に生きているように見せるか、っていうことを追求したいというのがテーマです。 今回、舞台に関しては、ストーリーとかキャラクター設定は原作から自分が手掛けていることもあり、これまで手掛けてきた作品より深く理解しています。そのことを役者たちに伝えて、生々しく、リアリティあるキャラクター作りを一緒にやれたらと思っています。少女が持つ切なさ、儚さとMONACAさんの音楽の融合による、少女たちの生きざまを感じてください。 そして、ゲームはただ単に女の子たちが敵たちをやっつけるだけのアクションものでなく、お互い唯一無二の「ツガイ」としての縁も、そしてその縁に結び付くまでの過程も見どころです。 『トワツガイ』はゲーム本編が始まる前の物語と設定がかなり細かい部分があり、それを紐解くようにストーリーがつながっていきます。“この世界がなぜ破滅に向かっているのか”という大きな謎解きを軸に、女の子たちの尊い絆が紡がれていきます。リリースのあかつきにはぜひストーリー部分にも注目して楽しんでください。
――ありがとうございました。

※1『トワツガイ』アートディレクター関谷マコトさん(ILCA) ※2『舞台少女ヨルハ Ver1.1a』制作プロデューサー小林諸生さん(ABC&SET) ※3『トワツガイ』の楽曲を手掛ける岡部啓一さんと瀬尾祥太郎さん(MONACA)

Profile

松多壱岱(まつだ いちだい)

俳優として活動を始め、2002年より演出家の道へ。
代表作に、舞台劇『ヨルハ』の演出※、『NieR:Automata FAN FESTIVAL 12022 壊レタ五年間ノ声』朗読劇パートの演出、永井豪原作の国民的アニメ、キューティハニーの舞台化『Cutie Honey Emotional』などがある。
関ケ原古戦場にて『関ケ原合戦再現劇』や、石田三成陣跡を使った音楽朗読絵巻『吉継』を演出。炎や大筒を使い、群衆が駆け抜けるダイナミックな演出で評価を高めた。
スクウェア・エニックスの新作スマホアプリ『トワツガイ』ではシナリオ監修をつとめている。 ※『舞台少年ヨルハ』の演出を除く

早瀬昭二(マッシュトラント)

舞台、CM、ライブなどでの特殊衣装、着ぐるみ、プロップス、アイドル衣装などを、デザイン、パターン、縫製まで幅広く手掛けている。

小泉萌香(こいずみ もえか)

2月27日生まれ。アミューズ所属。
代表作に『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』大場なな役、『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』三船栞子役、『オッドタクシー』市村しほ役など、女優・声優として活動中。
2022年12月には舞台『私立探偵 濱マイク -我が人生最悪の時-』濱茜役として出演し、23年2月には、舞台『少女☆歌劇 レヴュースタァライト -The LIVE-』にキャラクターCVも担当する大場なな役で出演する。
『音楽と物語はいっしょに歩く』をテーマに、おとぎ話のような世界を表現するコンセプトで、楽曲展開している女性声優ユニット『harmoe』としてアーティスト活動も行っており、3月8日にはmini Album『impress』をリリース。