BRAVELY DEFAULT BRILLIANT LIGHTS

REPORT錬⾦ゼミ活動レポート

[第006章] 6-8

精霊と使徒

担当:スティール・フランクリン

「...なるほどねぇ」
サンディが四方の風景を眺めては、何度もうなずく。

「大よそだけど、ここはラクリーカの街から南に半日ってところだねぇ」
この砂漠のど真ん中で、よくわかるね...そんなルーファスのつぶやきにほほ笑んだサンディは、メモをとる俺に向かって語りだす。

「東にうっすらと見えるタントアール山脈の峰々...」
語源も知らずただ言われた地名をメモる俺を待とうともせず、北東の方向を指し示し、
「そしてあの北東に見える積乱雲の形...。あれはナダラケス砂漠から吹く熱風が、内海フロウ・ラクリーによって冷やされてできるものなのさ」

内海フロウ・ラクリーは聞いたことがあった...。
水の神殿と隣接していて、たしか闇の大穴で海洋が腐食しても清浄を保っていた内海だったはず...。

「あの雲がどの季節のどの時間帯にどんな位置に見えるかで、ナダラケス大陸の緯度がだいたいわかるって寸法さ」
少々荒っぽいが、サンディの解説は地図作りを志す俺にとって、とてもわかりやすいものだった。

「大穴が開いた時期といえば、公国暦16年の秋...」
ナダラケス砂漠の秋の気候についてサンディが説明しようとすると、さっきまでクレアと話していた巫女様が近寄ってきて大きくうなずいてみせた。

「なるほど...! では、ラクリーカへは、北へ向かえばよいのですね。行きましょう...!」
そう言って巫女様は、東の方へずんずん歩いてゆく...。

「おいおい、巫女様よう、そっちは東だぜ」
振り返った巫女様は、少し頬を赤らめた後、今度は南にずんずん歩いてゆく。

(あ~、そういう属性か~...)
見れば、サンディもこちらを見てわずかにうなずいていた...。

***

日は傾き始めてまだ間もない。
俺が見張りに立ち、サンディが火を熾し、クレアとルーファスが食事の準備を始める...。

「...ラクリーカまでは半日の道のりだったはず。どうして野営などするのですか?」
巫女様が、自分が何をしてよいかわからぬままにただおろおろとしている。

「どこかの誰かさんが方向音...」
俺がそう言いかけた時、火が付きはじめたデカめの木っ端が吹っ飛んでくる。
...当たりはしないが...、最近、サンディの突っ込みの殺傷能力が増している気がする。

「ナダラケス砂漠の夜は、危険なのです。それに、夜間にラクリーカ入りしても衛兵に止められてしまいます」
危険なら野営なんかしていられないし、陽が暮れるまえにラクリーカ入りもできそうだった。
辻褄合わせのために、サンディが適当に口にした言葉をまったく疑いもせず、まるでそのようなことは知っていたとばかりにうなずいて見せる巫女様...。

ルーファスが、焼けた干し肉を金属製の皿に盛って巫女様に差し出すも、
「あ、...すみません。私、その...お肉が苦手で...」

申し訳なさそうにする巫女様...。
そんなことを口にしながら、この逃避行で食料もなにも携帯していない...。
(本当に、世間知らずなんだな...)

見れば、我らが世間知らず代表格、クレア級長どのが、ブブにナッツやドライフルーツ、乾燥した海藻をとるように命じていた。

***

陽が暮れ、皆で食器を砂で洗い終えると、巫女様はよほど疲れていたのか。焚火から少し離れたところで眠ってしまっていた。

クレアのランタンが輝きだし、ルミナが現れる...。
また道草だとなんだの文句を言いに来たか...はたまた野営飯のおこぼれにでもあずかろうと出てきたのか...。
俺が冷やかす気満々でいると「そんなんじゃないわ」と鼻で笑うルミナ。

ルミナのためにとっておいたドライフルーツを差し出すクレアにうなずきながら、珍しいことを言ってくる。

「あの子を護衛することに、何の異存もないわ」

「あの子の向かう先にクリスタルの気配は感じない。でも、あの子がクリスタルに深く深く関わるのだけはわかるわ...」
ルミナが何を言っているのか、俺たちにはピンとこなかったが、サンディだけには通じているようだった。

「そうだね...、ルミナの言う通り。アニエス様は闇に飲まれたクリスタルを解放して...」
そう言いかけたサンディの後ろに巫女様が立っていた...。

慌てて姿を消そうとするルミナだったが巫女様は、ランタンを凝視してそれを許さない。

「その小さきものは、もしかして...」
「クリスタル正教に伝わる、クリスタルの精霊ではありませんか?」

「あなた方は、クリスタルの精霊に私を導くために...」
何と答えていいか躊躇う俺たちを尻目に、巫女様はひとり興奮している。

***

苦難に打ちひしがれる自分に、クリスタルが屈強な4人と、クリスタルの精霊まで遣わしてくれた...!!

そんな感動に浸る巫女様をなだめ、不承不承ながら納得(してねぇだろうが)させるのに、だいぶ時間がかかった。

「いいじゃねぇか。結果的にはあんたを護衛してるんだから...」
俺は、焚火を踏み消そうとするサンディを右手で制し、左手で砂に置いていた長剣を引き寄せた。

お客さんがやってきたようだ...。
俺たちが、それぞれ得物を手に取る中、焚火の側で巫女様の目はとろんとしてきていた...。