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REPORT錬⾦ゼミ活動レポート

[第006章] 6-11

襲撃者たち

担当:スティール・フランクリン

ラクリーカの街から西にあるナダラケス遺跡の最奥は、盗賊ジャッカルのアジトになっている。

そこに訪ねてきたイクマ・ナジットが、風の巫女が北へ逃亡したこと、作戦の変更を告げた。

ジャッカルもナジットも、『マヌマット・ボリトリィ商会』の一員である。
商会といってもその内情は、エタルニア公国軍の第二師団で、ラクリーカを経済的に侵攻し、クリスタル正教を排斥することを目的としている。

かねてより風の巫女を国外に追放するという路線で準備をしていたジャッカルとナジットであったが、追加の指令が加わった。

「執拗に恐怖を与えた結果、"巫女が国外に出られぬようになった"場合、すべての痕跡を消すように」というものであった。

要するに、やり過ぎてしまった場合、証拠を残すな...ということで、やり過ぎを戒めるものではないらしい。

「へぇ~、えげつない指令を出しやがる。これが商会のやり方ってことか...」
そう驚いてみせるジャッカルであったが、その実、これっぽっちも心は揺らいでいなかった。

ボリトリィがマヌマットに取り入ってつい最近創立された商会に、元々知り合いだった2人が加入した形になったのか、あるいは...。

ナジットは、何に使うのかはジャッカルにさえ名言してはいないが、とにかく莫大な額の金を必要としていた。
ジャッカルは、引き取った孤児たちを食わせるために、それぞれが手を血で汚しながら生きてきた。

今さらそこに、風の巫女の血が追加されたとて...。
すっかり空気が重くなったアジトの中に、隣の房から子どもたちの騒ぎ声が聞こえてきて、2人の沈黙はさらに深くなった...。

***

一方その頃、ラクリーカの街と港町サンヴァシィの中間地点...俺たちが進む少し後方に、転移してくる一団があった...。

風の将ナンナンと副将サガン、そしてザレル兵たちである。

サガンが目ざとく砂丘の尾根を進む俺たちの姿を発見し、言葉少なにナンナンに報告する。

ナンナンたちの執拗な追撃が始まった...。

***

巫女様の足が重くなってきていた...。
水筒を差し出しても、何を遠慮しているのか受け取ろうとしない。

「アニエス様、お飲みください。砂漠で水を遠慮すると命取りになります」
じゃあ僕が...と水筒に手を伸ばすルーファスに肘鉄しながらサンディが諭す。
巫女様は、元正教騎士団のサンディの言葉は、少しだけ聞き容れようとするが、それでも心を開いているとまではいえなかった。

まるで出会ったばかりの頃のクレアみてぇだ...俺がそんなことを思って見てみると、察したクレアが口をとんがらせている。

躊躇する巫女様に、サンディが厳しいまなざしで続ける。
「...そして、この国はやがて水不足に陥り、そのひとすくいの水が高騰します」

ラクリーカでは、風車群の動力で地下水を汲み上げている。
風が止み、風車群が動かなくなると当然地下水の汲み上げ量は減り、そこに、国王と結託した商人ボリトリィが水の専売権を取得し、水に法外な値をつけて暴利を得ようとする。

それだけではない。
ラクリーカの民が、西にあるオアシスで水を汲もうと商隊を組んで向かうと、それを狙う盗賊がその商隊を襲う...そして、盗賊もまた、商会の一員というカラクリになっているのだという。

「な、何を仰っているのですか?」
巫女様は、サンディが語ることを本当に理解できないでいるらしい。
言葉のひとつひとつが理解できないはずはない。
なぜ、そのような非道なことができるのか...。
要は、悪事への耐性がほとんどないともいえるのは、クレアが同じような表情をしているのを見てもわかる。

ある意味この巫女様も、マヌマット国王と同じように無垢だともいえる。

***

ラクリーカの経済を破壊し尽くそうとする商会の裏には、エタルニア公国がいる。

公国の手の者である商会、そしてマヌマット国王は、ラクリーカからクリスタル正教の影響力を完全に排除するために、「風の巫女は大穴の調査を名目にしてこの国を見捨てた」と喧伝するつもりである。

ついこの間、闇の大穴の調査を依頼した国王の存念が、アニエスとクリスタル正教の国外追放にあることを知り、アニエスは肩を落とす。

その視線の先...砂丘の麓に、2手に分かれた一団が、俺たちを待ち受けている。

あの、風体と姿勢が悪いターバン男たちで構成される一団...。
商会は、巫女様の国外追放では飽き足らず、その命まで取ろうとしているようだ...。

隣にいるサンディが、スーーーーッっと長い息を吐く。
精神統一などではない。
静かなる怒気...サンディが大剣を肩に担ぐようにしてから、そのまま振りかぶった...!