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REPORT錬⾦ゼミ活動レポート

[第007章] 7-18

激戦

担当:スティール・フランクリン

ゴキリッ...!!
怒りに打ち震え、食いしばられたビルの奥歯が、鈍い音を立て欠けたようだった。

ベッと、血とともに吐きだした欠けた歯は、そのガタイに見合ったデカさだった。
(なんだありゃあ...。まるで以前陳さんに教えてもらった雀牌じゃねぇか)

おかげで冷静さを取り戻したビルは、部下に例の壺を持ってこさせた。
いったいいくつ持っているのか...ルーファスなどは辟易としていたが、この状況で出し惜しみしている余裕などあるはずがない。
今持ってきた2つが最後だろう。

「スティール!! 手前ぇがいるせいで、俺は闇の会同には出れねぇんだとよ...」
声のトーンがすっかり落ち着いたビルが、不可解なことを言い始めた。

「まあ、聞けや...。今、クランブルス共和国がザレルの侵攻に喘いでいるように...、闇の世界でも、東方からの脅威に戦々恐々としているんだ」

ビルがいうには、クランブルスやサイローン、ガーマ王国...、それら西側諸国を縄張りとする闇の者は、連合を組んで東方からの侵攻に備えていた。
それが、『闇の会同』なのだという。

そして、俺たちの親、フランクリンは、闇の会同でも一目置かれる大盗賊、『闇の十傑』の一員だったというのだ。

「俺は、サソリ団を結成し、親父に負けねぇくれぇにデカくした! 国を越え、多くの盗賊と交わって、名を上げてきた! 他のヤツら、誰にも負けないような財物を納めて親父のいた椅子に座ろうとした!!」

「...だが、ダメだった」

(...そりゃあ、そうだろうな)
闇の会同について何も知らない俺だったが、ビルがしでかしたこと...親殺しもそうだが、何よりも、名を上げるために敵対する組織であるザレルとも手を結んだことそれこそが、闇の会同を怒らせたことは容易に想像がついた。

「親父を殺し、親父の姓を棄ててサソリ団を創った俺は、親父の椅子には座れねぇンだとよ...」

ビルの理不尽極まりない不平を聞かされて、俺はだんだん悲しくなってきた...。
そして、思わず出してしまったであろう憐みの表情を、ビルは即座に感じ取って再び怒りに火がついてゆく...。

「血も繋がりもねぇ!! 手前ぇの、手前ぇのぉぉおおお...、何もかも、スティール! 手前ぇのせいなんだよっ!!」

(もういい...)

「くっそっぉおおおおっ...!! スティール、手前ぇだけは許しておけねぇ!!」

ビルが、ひとつ目の壺を叩き割った。
光の球がスパークして、中から異様な姿の魔物が現れる...。

黄色いぶよぶよした巨大な脳みそのような物体に、大きな一つ目と、全身から生えている槍や剣などの数々の武器類...。

「ほう、こりゃまた変なのが出てきやがったな...」

ビルがゆっくりと振り返り、義手に手をかけた...。
死闘が始まった...!!

***

あのぶよぶよとした魔物が力尽き、地に落ちた...。

さっきビルの義手の鉤爪で薄皮一枚裂かれた脇腹の傷を、クレアが手当してくれている。

サンディが、地面に突き刺していた2振り目の大剣に手をかけ、ルーファスがエーテルをごくりと飲み干した。

ビルは、俺の手当てが済むのを待っているかのようでもあった。

「どうやら、奥の手を使わないといけねぇらしいな」
どうせまた壺を割るんだろう、と高を括っているルーファスを鼻で笑い、ビルは思い出し思い出し、義手に手をかける。

「この上腕のカバーを外し...隠しスイッチを押せば...」

「この義手が、バーサーカーモードってのになるんだとよ...」

義手から白煙が噴き出し、かなり危険な感じのする音が鳴り響く...。

「パワーは4倍、2倍の火力...反応速度は...何倍だったか忘れちまったぁ」

殺意の籠った鉤爪が不気味に開閉され、その威力に満足したビルは、ニヤリと笑った。

「それに加えて、壺がもうひとつだっ!!」
勢いよく割られた壺から光の球が炸裂して、中から牛頭の巨人が出現する...!
「ほう、最後になかなか強そうなのが出たな...。さあ、覚悟しな...。スティールと...、スティールに味方したバカなヤツらめ」

ビルの踏み出した一歩で、血砂に幾筋もの地割れが走った...!