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REPORT錬⾦ゼミ活動レポート

[第009章] 9-4

謎の機甲軍団

担当:サンドラ・カサンドラ

思わぬ場所でデバコフ教授と合流したあたしたちは、西から謎の軍団がブラスに迫っていることを知らされ、対策を練るべくブラスへ急ぐことに...。

ただならぬ雰囲気を察知したのか、魔物たちも荒ぶっているようだった。
あたしたちは、それらを一蹴しながらブラスの街へと急いだ。

***

ブラスの西門をくぐると、いつもの下役人が近寄ってきて教授に何やら耳打ちして去ってゆく...。

ブラスに逃げ帰ってきた旅人から、異変は伝わりつつあるようだった。

「...それで? 西からブラスに向かっているという、強大な軍勢とは...いったい」

「謎の青い機甲軍団...とでもいいましょウカ...」
実際にその陣容を見たという教授をもってしても詳細には形容できないらしい。

見慣れぬ軍装の兵たちの中に、数十両もの巨大な青い機甲兵器が蠢いているという。

***

発端は、四家筆頭のアルデバイド家領で起きたクーデター騒ぎだった。

一部のはねっ返りが起こしたクーデターが、アルデバイド私兵団に鎮圧されかかった時、オーベック家領、カッシーオ家領でも同時多発的に小さなクーデターが起き、そこに、いずこからか現れた青い機甲軍団が合流を果たし、圧倒的な火力で各家の私兵団を圧倒した...。
(この青い機甲軍団は、いずこからか船舶で輸送されてきたらしく、オーベック家領もカッシーオ家領も、海からの侵攻を受けたらしい)

3つの家の領内を制圧しながら進む青い機甲軍団は、カルモ家領をも制圧し、ゴリーニ湖へと進軍し、教授はその威容を目撃したのだという。

青い機甲軍団は、ゴリーニ湖の南北両岸を東へと進軍し、おそらくゴリーニ村も攻撃されただろうとのこと...。

教授は、村長と新郎殿に村民を全員船に乗せ、新郎殿の本拠地グラネ島へ避難させることを指示してからブラスへと戻ってきたのだという。

青い機甲軍団とは、いったい...。

巨大な機甲兵器と聞いてあたしは、地下神殿で光の球から現れた、あの蝶の紋章をつけた機械の化け物を思い出していた。

***

一方その頃、例の青い機甲軍団の陣では、あのMr.ローズとローズのお供が話をしている。

四家の当主はすべて死亡し、その子息たちは全員捕縛されているという。

「親の後を追わせましょうか?」
恐ろしいことをいともさらりと言い放つお供であったが、ローズはかぶりを振る。

新都にでも送りつけて監視をつけておけと命じるローズに、将来の禍根を絶つべきでは? と暗に粛清を促すお供に対し、

「いや、俺も四家の庇護を受けてここまで来れたのだ...。命は助けてやれ」
もうこれ以上は言うな...そんな雰囲気を漂わせ、ローズは自らの仮面に手をかける...。

「この仮面も、もう要るまい...」
ローズが仮面を一緒にローブを脱ぎ捨てると、そこには黄金の鎧を身につけた偉丈夫の姿があった。

「第41代クランブルス国王...ブルース国王陛下ぁ~~...!!」
ローズのお供の名乗りによって周囲の者が一斉に振り返る。

「錬金の街ブラスへ進路をとれ...!! 預けていたものを返してもらいに征くぞ...」

ブルース元国王の号令で、青い機甲軍団は再び進軍を開始した。

***

教授の推測によると、謎の青い機甲軍団は、おそらく王軍だろうとのこと。

王軍、すなわち、5年前の王制廃止によって平民に落とされた、そして、スティールの両親が命を懸けて守り通したあの幼王ブルースが挙兵して、仇敵の四家を滅ぼしたことになる。

「王軍の目的はここ錬金の街ブラス...いえ、」
教授は、クレアの顔を見て言葉を呑みこんだ...。

***

一方、繭の玉座前では、大神官ヅクエフが左胸に手をあて、いかにして錬金術師カウラの思念を理解できたのかを語りだす。

「それは...、私の胸郭内に収まっているこの『騒乱の種』のせいでございましょう」

この『騒乱の種』とは、錬金術師カウラの思念を凝縮したものであるという。
古の大錬金術師とその双子の弟カウラが主導した、原初のクリスタル創造の計画は頓挫した。
繭にまでなった原初のクリスタルを奪い落ち延びたカウラは、この地に賢者の間と同じ施設、『繭の玉座』を造り、独りで繭を孵そうとしたが叶わなかった。

死期を悟ったカウラは、未来の誰かに自分の思念を移し、本懐を遂げようとし、自身の念をより先鋭化するために敢えて情の部分を分離した。

自身の念を込めたものが『騒乱の種』、情の部分を込めたものが『賢者の意思』として別々に遺された。

もちろん、この騒乱の種も、賢者の意思も、後世の錬金学者が勝手につけた名称に過ぎない。

このカウラが自らの思念を2つに分けて残した地が、後のクランブルス王都、そして、今ではザレルの都の大都ということになる。

20年前、天衝山麓の戦いでザレル2世が重傷を負った時...、ヅクエフは王都の地下深くに秘匿された不思議な力を放つ『騒乱の種』を手に取った。

すると『騒乱の種』からカウラの遺志が流れ込んできて、同じように王都の地下深くに秘匿されていた『原初の繭』をザレル2世に同化させ、命をつなぎとめることを教えてくれたのだという。