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REPORT錬⾦ゼミ活動レポート

[第4章] 4-5

怜悧な王子

担当:スティール・フランクリン

ここは、渇水の国サヴァロンの王宮...。
誰も座っていない玉座の傍らに立つ青年と、それに付き従う長身の老人の姿がある...。

青年は、老人だけに聞こえるような声で、旅人の話に耳を傾けるわずらわしさをこぼし、老人は、「リオン王からの倣いにございますれば」...と、青年をなだめている。

老人の静かな、そして礼に違わぬ圧に屈した青年は、聡明そうな笑みを作り、本日の旅人を呼ばせるのであった。

  ***

「ようこそ、渇水の国サヴァロンへ。僕は、この国の王子カストルです」
カストルと名乗った青年は、父のリオン王に代わって俺たちの話を聞いてくれるらしい。
まずは、オルフェがさすらいの詩人と名乗り、次いで、クレアが、俺、サンディ、ルーファスの順番でいつもの名乗りをした。

カストル王子は目を細めると、長身の老人アンドロに対して、オルフェだけをこの場に残し、俺たち4人には引き取ってもらえと命じる...。

どういうことだ...?
王子の冷めた物言いには、俺じゃなくとも苛立ちを感じただろう...。

「殿下はリオン王の代わりに様々な国事に目を見張らねばならず、間もなく議会にも出席せねばなりません」

「殿下は、お忙しいのです」
アンドロという老人の穏やかながら鋭い圧に、俺たちは反論の言葉も出せずに王宮を退室させられていた...。

  ***

「いったいどういうことだ...! 旅人や行商人から話を聞く王じゃなかったのか!」
...と意外にも...いや、順当に、か...ルーファスが激昂している。

「スティールは悔しくないのかい...?」
偉いヤツの物言いから悔しさを感じるなんて、いつ以来していないだろう...。

「王族なんてのは、どこの世界もあんなもんだろう?」
俺は、会ったこともない自分の王族像を披露して、鼻で笑ってみせた。

自身の怒りを共有しようとしない俺にがっかりしたのかルーファスは、ブツブツと何かをつぶやく...。
「僕のような魔法学者を差し置いて、あんな吟遊詩人のような男を...!」
(ふっ...、ルーファスのヤツ、やっぱりズレたところで怒っていやがる)

サンディによれば、吟遊詩人や道化師などは、民衆の心を掴み、すんなりと受け入れられることから、おのずと情報が集まるともいえ、王族としては学者や冒険家などよりは、そちらと話す方が得だと思ったのではないか...とのこと。

俺たちは俺たちなりに、いつも通りに町の様子でも見て回って、クリスタルの情報を手に入れることにした。

  ***

俺たちが町の人の依頼で魔物を退治している頃、サヴァロン近郊の砂漠を西へと歩く一行がいた。

水の将ソーニャと副将ウガン、そして数名のザレル兵である...。

どちらかといえば重装といえるウガンやザレル兵たちも砂漠の暑さに参っているが、極寒のツララスタン育ちのソーニャにとってはまさに灼熱の地獄だった。

もう少し西へ行くとサヴァロンという町が見えるはず...ウガンの励ましも、ソーニャの耳には半分も届いていない...。
ソーニャは暑さで気を失い、砂に倒れ込んでしまう...。

  ***

ふと目を覚ましたソーニャの視界には、激しい日差しを遮るヤシの葉が見えた...。

戦死した兄からもらった毛皮の帽子は脇に置かれ、額には冷たい水で浸された手ぬぐいが置かれている...。

「砂漠の暑さで倒れられたのですよ」
すぐ隣のヤシの木陰に座るウガンが、少し離れたところにいる集団を指さして教えてくれた。

「あの者たちがここにオアシスがあることを教えてくれたのです」

集団からひとりの少女がこちらに向かってくる。
少女は、無口なのか言葉がわからないのか、ソーニャの顔を覗き込んでいるだけでずっと黙っている。

「危ないところを、ありがとうございました」
ソーニャが立ち上がり、礼を言うと、少女の後ろに現れた大蛇が叫び声をあげる。

ま、魔物...!!
身構えるソーニャに、少女は静かにかぶりを振って、「...この子が、私に知らせてくれたの」とぽつりとつぶやく。

この大蛇は、この少女の仲間ということですか...ソーニャが驚いていると、少女のいた集団の中から乱暴な声が聞こえてくる。

「おいニハル、いつまで油売ってるんだ...」
ニハルと呼ばれた少女は、サヴァロンの町への行き方を教えてくれて、乱暴な声の主の元へと足早に駆けていった。