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REPORT錬⾦ゼミ活動レポート

[第6章] 6-17

ナダラケスを後に

担当:サンドラ・カサンドラ

あたしたちが崩れた外壁から神殿の外へと這い出ると、修道女が大きな岩の上にちょこんと座り、心細そうにきょろきょろしていた。

「あっ、みなさんっ!! ご、ご、ご無事だったんですね!」
あたしらに気づき、まるで飼い主を出迎える子犬のように駆け寄ってくる。

「ところでよ、2つの頭がある、翼が生えた大きな犬のような魔物に、心当たりはあるかい?」
スティールの問いに少し首をかしげていた修道女は、胸のところに大きな鎖の魔装がついていたことを告げると、

「魔装...? まさか、災厄を引き寄せし者『オルトロス』?」
そうつぶやいた直後、修道女は顔面を蒼白にし、カタカタと震えはじめる。
つい魔物の名を口走ったはいいが、急に恐ろしくなったようだ。

オルトロスとは、クリスタル正教の伝承にある魔物で、"災厄を引き寄せし者"の二つ名を持っている。

『凶風の鎖』という魔装を身につけ、2つの頭、翼が生えた巨大な魔物らしく、あたしらが撃退した犬形の魔物と同じだったといえる。

あたしが耳にしたアニエス様一行の冒険譚に、風のクリスタルの解放劇があり、その証としてマヌマット王に示したのが『凶風の鎖』だったと記憶している。

アニエス様は、仲間たちと出会い、あの魔物を見事滅して、風のクリスタルを解放したというのか...。

あたしたちは、ラクリーカへ向けて歩き出した。

***

風の渓谷を抜けて、ナダラケス砂漠を北上する...。

「あ、ラクリーカの街が見えて参りました」
あたしたちの監視という重責から解き放たれるからか、それとも正教に伝わる魔物を倒したからか...あれだけ挙動がおかしかった修道女が、今はあたしたちと普通に話をしている。

ここまで街に近づけば、魔物に襲われることなどはないだろう...。

「私たちはここで失礼します」
クレアがそう告げると、修道女は小さく驚く。

あたしは、クリスタル祭壇の様子を詳しく記したメモを修道女に渡し、いずれこの国へお戻りになるアニエス様のためにこの情報をご活用くださいと伝えてもらうよう頼んだ。

「宰相によろしくな」
あたしたちは、ルミナが現出させた魔法陣の上に立ち、修道女に手を振った。
この修道女は、眩い光の中に忽然と消えてしまったあたしたちのことを、宰相になんて報告するのだろう?

そんなことを想いながら足元から光の中へ解けてゆくような感覚に囚われ、あたしたちは光に包み込まれた...。

***

足の裏に硬い床を感じ、少しカビ臭く懐かしい匂いが鼻腔をくすぐる。
目はまだ暗闇に慣れてはいないが、どうやら賢者の間に戻ってこれたらしい。
あたしにとっては懐かしいナダラケスの砂漠の旅ではあったものの、宿にも泊まらずの数日間の強行軍...いい加減、ひとっ風呂浴びたい気持ちだった。

あたしたちは、ブラスの街へと帰るべく、賢者の間を後にした。