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REPORT錬⾦ゼミ活動レポート

[第7章] 7-17

サソリ団包囲作戦

担当:サンドラ・カサンドラ

大講堂に集まったあたしたちは、イヴァールの進行で対サソリ団包囲作戦会議に臨んだ。

スティールの気持ちを先回りしたルーファスが、いつもにましてイヴァールにウザ絡みをしてクレアにたしなめられていた。

***

国境の街ニーザから400の兵士とともに派遣されてきたコレス・テロール将軍の側近、マイヨ・ネィズ兵士長が作戦の骨子を説明する。

錬金の街ブラス周辺で発生しているサソリ団による商隊襲撃は合わせて8件...昨夜の7件からすでにひとつ増えている。

次にサソリ団が現れそうな地点は、ブラスの北へ2日、ピラミッドの北東半日の地点と予測され、そこは比較的浅い地溝が、まるで塹壕のように張り巡らされている地形になっている。

兵を伏せるにはうってつけの場所...マイヨ兵士長は、自身と数名の配下が商隊に変装して、その地をブラスに向けて通行し、サソリ団が食いついたのを合図に地溝に伏せていた兵が反撃する...それが作戦の前段階だった。

マイヨ兵士長がニーザから率いてきた兵は全部で400名。
この作戦でサソリ団を全滅できるとは思っていないらしく、包囲の網を、一か所だけ緩めておくので、そこに、あたしたちに待ち伏せをするように...スティールに本懐を遂げるよう示唆している。

首領のS・ビリーさえ討ち取ってしまえば、サソリ団は瓦解する...マイヨ兵士長の作戦の要は、その一点にあった。
あたしたちは、他の細々とした取り決めをしてブラスの街を出発した。

***

商隊に変装したマイヨ兵士長たちに、サソリ団はすぐに食いついた。

逃げ惑う商隊を後ろから斬りつけ、奪った荷を焼き払う簡単な仕事のつもりで襲いかかったはずなのに、変装を解いたマイヨ兵士長たちの痛烈な反撃を浴び、サソリ団の先鋒は大いに狼狽したが後方から押し寄せる団員にはうまく伝わらなかった。

構わずにやってきたサソリ団本隊の周囲に、地溝に伏せていた400名の共和国兵が突如湧きあがり、包囲の輪を絞り込む。

S・ビリーは、即座に撤退を決め、マイヨ兵士長が緩めておいた包囲の隙を、好機とみて突き破った。

***

西の地平に、統率の取れていない砂煙がいくつも確認できた。

「どうやら、始まったみたいだよ」

壊走するサソリ団の先頭が見えてきた。
あたしは、大剣をスラリと引き抜いた。

***

壊走してくるサソリ団を片っ端から斬りつける。
浅手を負い、武器を落としたザレル団員は、その場に踏みとどまろうとはせず、一目散に東へと逃げにかかる。

下っ端の団員を無理やり追って、武器を傷ませることはない。
本ボシはあくまでもS・ビリー...。

戦場の空気にあてられたのか、興奮した野良のオークどもがいきり立っている。
襲ってくるものには対処しないわけにはいかなかった...。

***

最後のオークが膝をついた時、聞き覚えのあるダミ声が鳴り響いた。

「よお~、スティールじゃねぇか~。サソリ団と共和国軍が戦ってるってぇのに...お前らはブタども相手になに楽しんでんだよ」

出会い頭でまずは一発かまさないと気が済まないS・ビリーであったが、スティールだって負けてはいなかった。

「てめぇこそ...、なに悠然と歩いて余裕かましてんだよ。待ち伏せのために開けてもらった包囲の穴に気づかねぇとは...焼きが回ったんじゃねぇのか?」

自分たちの力で切り拓いたと思っていた包囲の輪が、実はスティールたちの元へと誘導されていたことに気づかされたS・ビリーの片目に、怒りの色が宿る...。

いつものように胸の火傷の痕について、拾ってもらった大恩ある養父が惨殺されたこと、スティールの実の両親がクランブルス中から嫌われたランケード夫妻であったことなどをまくし立てるS・ビリーであったが、スティールはまったく動じていない。

「幼い王と民を捨ててザレルの軍門に降って死んだランケード伯の方はいざしらず...夫人の方は、違った」

「わが身を顧みず、幼王を救うためにあらゆる手を尽くした賢婦であったことがわかったよ」

スティールの一言一言に、その解明の旅に同行したクレアが、ルーファスが力強くうなずく。

「てめぇみたいな捻くれ者にはわからねぇだろうが...、少なくとも、この火傷の半分を俺は大いに誇りに思っているぜ」

S・ビリーのこめかみに、太い青筋が何本も走り、奥歯を噛みしめるギリィッという音がこちらにまで聞こえてくる。

「さあ、話は終いだ...。おとなしく縛につきやがれ!!」

少し顎を上げたスティールが、逆手に構えた長剣とは別の手でくいくいっと手招きする...。

「負け犬が!! ...生意気言ってんじゃねぇえよっ!!」
S・ビリーの巨躯が、スティールに迫った...!!