BRAVELY DEFAULT BRILLIANT LIGHTS
REPORT錬⾦ゼミ活動レポート
[第9章] 9-18
王に忠なる者
従者と宣教師を倒したスティールが、長剣を逆手に持ってブルース元国王に迫る...。
「これで、あんたもお終いだな。悪しき愚王ブルース...!!」
(とか何とかいって...結局は許すんだろう? スティール)
漠然と、そんなことを考えていた僕だったが、予定していた絵面と違う情景が目の前に展開する...。
(あれ? スティールが大慌てで...。おわっ!? ひ、火の玉...!?)
「チッ...、だ、誰だっ...!!」
寸でのところで火の玉を避けたスティールが叫んだその先には、あの見慣れた巨躯が仁王立ちしている。
「我は、王に忠なる者なりっ!!」
ブルース元国王の隣に、あのコレス・テロール将軍がいる...。
(なぜあなたが、なぜここに?)皆が驚く中、
「やはり...、勤王派のあなたは、ブルース元国王の下に駆けつけるのでスネ」
デバコフ教授だけは、将軍の行動に納得がいっているようだった。
将軍は、将軍職と軍権を返上する使者を新都へ送り、マイヨ兵士長に国境の街ニーザの防衛を任せ、たったひとり従者も付けずにこの地へ駆けつけて来たのだという。
予想外の援軍に、一番驚き、喜んだのはブルース元国王だった。
「おお、テロールよ...。昔と同様、俺の危難に駆けつけてくれたのか...。お前の忠誠、俺は一生...」
僕は、すべてを消し去りたくなっていた...。
目の前の下品な笑みを浮かべる王も、勤王に縛られて道理を曲げようとする将軍も、スティールの...そして僕たちの痛みに気づこうともしないこの世界も...、何もかも...全部...。
(消しさってやる...!!)
僕の憎悪が、雷となって将軍を貫く...はずだった...。
しかし、予想した絵面とは違う情景がまた視界に飛び込んでくる...。
(あ...れ...? 将軍が、王に向かって...)
次いで、割れ鐘を崖の上から突き落としたような声が僕の鼓膜を襲う...!!
「ブルース国王陛下っ!! いったいこの騒ぎは、何事ですかっ!!」
あまりにもの舌鋒に、ブルース元国王の長髪や豊かな羽飾りが後方になびく...。
「長年の確執があった四家への復讐を遂げ、武力をもって国を正したのはまだわかります。国土の半分を奪っていったザレルに決戦を挑むのもよいでしょう...」
僕の鼓膜が悲鳴をあげ、それでもなお将軍の叫び声が聞こえてくる。
「しかしなぜ今、このような大軍をもってブラスの街を攻撃しているのです...!」
「陛下にとって守るべき存在の民に、なぜ矛を向けておられるのですか!!」
(ああ、この将軍は、ホンモノの忠臣なんだな~)
僕は、右手に込められていた力を緩め、増幅した雷を再び手のひらへと戻した。
一度放ちかけた魔力が体内でバーストし、右手に激痛が走る...。
そんな痛みも、気にはならなかった。
なおも叱声を浴びせる将軍と押し黙るブルース元国王に、これまで一言も発していないクレアが突然口を開いた。
***
「それは、私の中にある『賢者の意思』を得るためです」
その場にいる誰もが息を呑んだ...。
スティールなどは、クレアを自分の背に隠そうとまでしていた。
クレアは、静かにそれに抗い、一歩前に出る...。
デバコフ教授は、天を仰いでいた。
「たとえこの場はやり過ごせても、ブルース元国王は何度でも...」
「『賢者の意思』とは?」
「21年前のブラスの戦いにおいて、私の命を救うためにデバコフ教授が錬成した秘宝で、同時にザレル軍を一掃した超兵器」
...そんなやり取りが将軍とクレア、そして教授の間で続き、いつの間にか将軍の激昂は収まって、代わりにブルース元国王の感情は大いに昂ってきている。
「小娘...! 我が悲願、我が大望のために...! 何が何でも『賢者の意思』を渡してもらうぞ...!!」
ブルース元国王の巨躯が、下品な装飾のガトリング砲を抱える。
それを僕たち全員で阻む...!!
「させるかよっ...!!」
「わがままな王様には、きついお仕置きをしてやらないとね」
サンディが、すっかり静かになった将軍に声をかける。
「テロール将軍、何をためらってるんです...?」
将軍は、王のために地位も名誉も投げ捨てて馳せ参じてきたんだから"王に忠なる者"を貫き通せ。
そんな、サンディとスティールが送った塩に、将軍は小さく「すまんな...」とつぶやき、大きく息を吸い込んで叫ぶ...。
「我は、コレス・テロール...!!」
「クランブルス王に仕え、クランブルス王のために忠誠を尽くす者なり...!!」
「錬金ゼミの一行よ...。いざ、正々堂々の勝負を所望っ!!」
テロール家に伝わるという『獄炎の鉄槌』が唸りをあげ、巻き起こる熱風が僕らの頬を打った...。