BRAVELY DEFAULT BRILLIANT LIGHTS

REPORT錬⾦ゼミ活動レポート

[第001章] 1-1

異世界

担当:ルーファス

足元から身体が細分化され、次に頭の方から身体が再構築される感じ...。
テレポなどの転移系の魔法をかけられた時のような感覚。
軽いめまいと指先のしびれ...。

気がつくと、僕たちは緑があふれる森の中にいた。
ここが、異世界だというのか...。

僕は、指先を動かして、身体に感覚が戻ってくるのを確認する。
見れば、スティールもサンディも辺りを窺いながら、それぞれに自分の体の動きを確認している。

「空気の匂いが、濃い...」
クレアが目をつぶって大きく息を吸って言った。

確かに...。
そして、僕はこの匂いを嗅いだことがある...。

「心当たり、あるようだね...ルーファス」
サンディによれば、僕は、最初こそ見知らぬ風景を確認していたようだが、すぐに、まるで知っている地形を確認するかのような眺めた方をしていたそうだ。

うん...、間違いない。
ここは、エクシラント大陸の『魔法の国ウィズワルド』近郊...。
何度も訪れたことがある森の中だった。

ルーファスの故郷ってわけか...スティールは周囲を見定めながらそういったけれど、正確には僕の故郷ではない。
この近くにある『ウィズワルド』という町の『魔導研究所』というところで数年間、魔法学の研究をしていたのだ。

  ***

サンディが腕組みをして、何かを考えこんでいる。
曰く、僕たちは異世界にやってきた。
ならば、あの光の球は、どうしたんだろう?

そういえば、あの目を刺すような光もなかったし、僕たちがいる森の中もどこもえぐられてはいない。

「当り前じゃない」
ルミナは、賢者の間からここに転移してきたのは、古の大錬金術師が編み出した異世界転移法で、『光の球』による転移は、野蛮な転移法であるという。

つまり、ルミナは、僕やサンディがヴェルメリオ大陸に転移してきた『光の球』について何か知っていることになる。

多少話が長くなろうが難解だろうが、当事者の僕は聞く気満々だったのに、さっさと姿を消してしまうあたり、最初から説明したくなかったみたいだ。

  ***

まずは肝心のクリスタルの元へと行かないといけない。
サンディは、クリスタルに会いにゆくにはどこへ行けばいい? ...と、まるでクリスタルが安置されている場所が決まっているような口ぶりをしていたが、ここエクシラントでは少し事情が込み入っている。

クリスタルを管理しているといわれる『ミューザ』という国が2年前に滅んでしまい、僕が旅の空で聞いた噂によれば、ミューザは2年前、何者かに襲撃されて4つ保持していたクリスタルはすべて奪われてしまったらしい。

旅の宿で、酔っぱらった交易商が話していたことなので、信ぴょう性の方は怪しいものだが...。

サンディは、クリスタルの探索の前に近くの街か村へ立ち寄って、探索の拠点にしたいようだった。

僕は、この近くに『ウィズワルド』の町があることを告げ、みんなで向かうことにした。
  ***

しばらく歩いた後、僕は木の枝を拾って地面に簡単なエクシラント大陸の地図を描いた。
木の枝で、大陸の東方...『魔法の国 ウィズワルド』の地点の辺りに○印をつけ、南の『渇水の国 サヴァロン』、北の『深雪の国 ライムダール』、サヴァロンの西に『春風の国 ハルシオニア』、大陸の西方に『軍国 ホログラード』...と、次々と代表的な国の位置に○印をつけていった。

最初は食い気味にメモまで取っていたスティールが急に謝ってきた。
「知らない世界の事情を詰め込まれるのがこんなに苦痛だとは思わなかったぜ」

知らない者に、知っている者が教える時によく陥る現象だった。
僕の方こそ詰め込み過ぎていたようだ。

「いや、すべてを理解できないにしても、ざっくり一通りのことは教えてもらった方がありがたい」...とサンディ。

一方でこういった考え方をする人もいる。
僕は、周辺諸国のことについてはこのぐらいにして、これから向かうウィズワルドについて簡単な説明をすることにした。

  ***

ザレルの『玉座の間』――。

大神官の元を訪れた土の将ガイラは、大神官から指輪を授かった。

すわ婚約指輪か...!
ガイラらしい早とちりではあったが、婚約指輪にしては形状が禍々しい。

大神官は、あくまでも妃候補の指輪であるとごまかしていたが、ガイラが任務を遂行する上で役立つ機能のいくつかを封じ込めた指輪であった。

命令通り、家中の選りすぐりを5名連れてきたというガイラに、大神官は任務を告げる。
これより土の将ガイラは、この『繭の玉座』の魔法陣から異世界に向かう...。
そして異世界にて、『クリスタルの命脈』を入手して持ち帰ることが任務となる。

クリスタルとは、万物の源となる石で、命脈とはそのクリスタルの命という意味になる。つまり、クリスタル自体を奪ってくるのではなく、あくまでも『命脈』の入手が任務の要諦ということになる。

重要なことは、ガイラが入手してくる『命脈』こそが、20年間眠り続けているザレル2世を目覚めさせるのに欠かせぬものであること...。

驚くガイラに大神官は、先の指輪にはクリスタルのある世界に転移させ、また、ヴェルメリオに帰還する力があること。そしてもうひとつの能力として、現地で闘争に至った時、他者の介入に邪魔されぬよう、外界と隔絶された専用の戦いの場を現出させることができることなどを説明した。

最後に、『クリスタルの命脈』を持ち帰り、ザレル2世が目を覚ますことこそが、ザレル全体の悲願であることを言い含め、土の将ガイラ主従を魔法陣の上に立たせ、指輪に念を込めるよう命じた。

土の将ガイラと5名の精鋭、そして副将のサージが光に包まれた...。

  ***

ウィズワルドまでの道中、クレアやスティールのヴェルメリオ組は、草木にあふれているこの光景に慣れないらしい。

クレアなどは、緑に悪酔いする感じ...と感じるらしく、砂漠や荒野での生活に慣れ切った2人にとっては、豊か過ぎる緑に軽い拒否反応を覚えるらしい。

先行していたサンディが大剣の柄に手をやり、僕たちを制止した。
木立の間から、見るからに植物の魔物と思しきものが現れる。

サンディが大剣を構え、スティールが長剣を引き抜く。
クレアが大きなスプーン状の杖を構え、僕は...

僕は、魔物が向かう先に、ひとりの少女の姿を見つけ、思わず駆け寄っていた...。

  ***

僕が少女の方へ駆け寄ったためにできた陣容のほころびを、サンディ、スティール、クレアはよく補ってくれた。
それなのに最後は僕が放った雷撃でとどめを刺すことになり、なんとも心苦しかった。

「あ、ありがとう...」

「大丈夫だったかい? アモナ」
見知らぬ旅人から自分の名前が返ってきて、少女は驚いていた。
しかし...、実は、僕が魔導研究所に世話になっている時、研究所の所長ロディさんの娘さんのアモナとは何度か会ったことがある。

「あ...、ルーファスの...お兄ちゃん?」
アモナの表情が、ぱっと明るくなり、そしてすぐにうつむく。

そう...お兄ちゃんが"みちびきの人"なのね...
アモナのつぶやきは、最後の方は聞き取れなかった。

「ルーファスのお兄ちゃん、ウィズワルドの町を...、みんなを助けて...!」
アモナの必死の形相は、ウィズワルドの町に何か大変なことが起きていることをまざまざと伝えていた...。