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REPORT錬⾦ゼミ活動レポート

[第001章] 1-18

火種

担当:クレア

事情がさっぱりわからない私たちにスティールが解説してくれる。

クランブルス共和国の南に、ガーマという王国があるのは前にも何度か聞いていた。
ガーマ王国は、クランブルスがまだ王国だった頃からの同盟国で。22年前、ザレルとの『王都の戦い』にも援軍を出してくれたのだという(結果は、王都に到達する前にザレルの遊軍と遭遇して逃げ帰っている)。

クランブルスの幼王ブルースが王都を脱し、西の副都(現在の『新都』)に落ち延びて、敗戦の混乱がある程度収束した頃、クランブルスはガーマに対して、国境付近にある『イトロプタの街』を割譲した。
数年前の戦いに援軍を出してくれた礼として...。

サンディは、援軍を出しながら戦場に到達せずに逃げ帰った国に、何年もしてから出兵の礼として街を割譲するとは、クランブルスはザレルの侵攻でよほど疲弊してしまったのだろうと推測した。

ひとつの街を割譲する...そこまでして同盟を維持しておきたかったということか...。

ところが...。

肝心のイトロプタの住人たちは、ガーマ王国の民になるのを激しく拒み、ガーマから派遣されてきた役人たちを追い出して自治を主張するようになった。

以降、クランブルスとガーマとの関係は、決して良好なものとはいえなくなってしまい、その微妙な関係は、クランブルスが共和国となった今も続いている。

  ***

クリッシーさんが持つというデバコフ教授とテロール将軍への書簡は、おそらくイトロプタの街を再びクランブルス共和国領にしてほしいという直訴状だろうとスティールは推測した。

デバコフ教授は、イトロプタに一番近い街、ブラスの顔役。
テロール将軍は、クランブルス共和国で唯一の将軍。
この2名を動かせば、クランブルス領に復帰できると踏んだのだろう。

スティールさんによると、厄介なことはもうひとつある。
クリッシーさんの背後に控えるローブの男が、十中八九『世界教』の宣教師であろうとこと。

『世界教』とは、今から150年ほど前まで、クランブルス王国やサイローン帝国、ガーマ王国などの西方諸国で広く信仰されていた宗教のこと。

"世界"の概念を、最初に唱えたとして有名な宗教であったが、ある事件をきっかけにしてクランブルスの国教の座を追われ、今では北方のサイローン帝国が国教としているだけで、クランブルス共和国もガーマ王国も弾圧すらしていない。すでに滅びきって久しい宗教ともいえる。

すでに滅んだ宗教の何が厄介なのか...?
クランブルスとガーマの中枢から追われ、地に潜った世界教の信徒たちは、草の根的な布教活動を続けていて、ザレルの西方進出の混乱に介入して、あわよくば国教の座に返り咲くことを夢見ているというし、現在もなお世界教を国教としているサイローン帝国あたりが、中央の3国を混乱させるために、積極的に資金援助しているという噂もあるらしい。
クリッシーもローブ男も、クランブルスにとっては厄介者...そんな2人にデバコフ教授やテロール将軍と知り合いだと名乗ったのは、やはり失敗だったのかもしれない。

  ***

ナメッタのあばら家の中に、重苦しい空気が流れる。
この状況、どうしたものか...その答えを導きだせないでいるところに、外から悲鳴が聞こえてくる。

「た、た、大変だ~~~~!! さ、サソリ団だ~~~っ!! サソリ団が出た~~~~~~~!!」

私たちが制止するよりも早く、スティールはあばら家を飛び出していった...。