BRAVELY DEFAULT BRILLIANT LIGHTS
REPORT錬⾦ゼミ活動レポート
[第003章] 3-3
ゴリーニ村
湖畔をしばらく歩くと、沖合をじっと見つめる老人に出会った。
クリッシーが駆け寄り、挨拶を交わす。
どうやらあの老人がゴリーニ村の村長らしい...。
さらわれた村長の娘も、娘を追って舟を出したデバコフ教授も戻ってきていない...状況は、クリッシーがゴリーニ湖からブラスの街へ向かった日から、あまり変わっていないとのことだった。
デバコフ教授の教え子だと紹介された俺たちは、まずは湖水が濁り始めた経緯を村長に尋ねた...。
***
湖水の濁りが目立つようになったのは、今からちょうど2か月ほど前。
(サバ缶売りに売れてないサバ缶を買わされそうになった時は、すでに濁りが目立つようになっていたということか...)
はじめは大量の小魚が水面に浮き、1週間もしないうちに"ぬし"と呼ばれるほどの大魚ですら水面に浮くようになった。
不漁が続き、人々が悲鳴を上げだす頃、『ゴリーニ湖賊』どもが村にやってきて村長の娘を連れ去っていった。
ゴリーニ湖賊とは、ゴリーニ湖中央の小島『グラネ島』をねぐらとする湖賊で、ゴリーニ湖を航行する船や湖畔の村々を襲うといわれている。
水質調査のために村に滞在していたデバコフ教授が小舟に乗って、ゴリーニ湖賊のアジトへと向かったのだが、その直後から湖水の"腐食硬化"が始まってしまったのだという。
腐食硬化とは、ゴリーニ湖の今の現象をデバコフ教授が分析した結果で、水面に近い部分から湖水が腐食しながらドロドロに粘り気を出すようになり、やがて櫂(かい)や櫓(ろ)も動かせなくなってしまい、船舶の航行ができなくなるというものだった。
***
「ふ~ん、そんなに湖面が硬くなるのなら、歩いてそのグラネ島ってところへ行って、賊を討伐すればいいじゃねぇか...」
(そんなわけね~だろうな~)と試しに言ってみた俺の発言は、やはりダメみたいだった。
舟が出せないほどに硬化が進んだ湖水も、人がその上を歩けるほどには硬くはなく、落ちて腐食した湖水を飲んでしまったりしようものなら腹を壊すだけでは済まないのだという。
状況を聞けば聞くほど、サンディが言っていた『大穴事件』の時と一致する。
俺たちが顔を見合わせていると、村民が駆けこんできた...!
活性化した魔物の群れが村を襲ってきたらしい。
俺たちは、村民の案内で魔物が出現した場所に急行した...!
***
ゴリーニ村を襲ってきた魔物は、大したことのない、それこそ"雑魚"ではあったが、次の襲撃も近くありそうだった。
村民の話によると、村人の多くが夜中に湖面がピカピカ光っているのを目撃したらしく、村を襲撃した魔物の中には今まで見たことがない魔物も見受けられたという。
『光の球』は、魔物をも異世界から転移させてくる...俺たちは、そう確信していた。
引き揚げる俺たちを、顔面蒼白なルーファスが出迎える...。
「大変だ!! クレアが倒れてしまったよ」
***
クレアは、錬金術をもって湖水の清浄化を図ろうとしたらしい。
小舟に乗って湖水を浄化する術をかけ、小舟の周囲の水が浄化されている隙に小舟を漕ぐというものだったようだが、湖水の汚濁はクレアの術よりもはるかに速く、ほんの少し舟が進んだところでクレアの体力が尽きてしまったというのだ。
幸い、命に別状はなく、少し休めば起き上がれるようになるとのこと...。
クレアの枕頭に置いてあるカバンにかけたランタンが、何かを伝えるように瞬く...。
ランタンを手に取ってみると、ルミナが現れる。
「お、呼ばれもしないのに珍しいじゃねぇか」
俺がからかってもまったく取り合わず、自らの羽の紋様を指し示す...。
すると、ルミナの右側の羽の水色の紋様が、微かに瞬いているのが見えた。
「この一帯の水の力が弱まっているわ。それも極端にね」
このままゴリーニ湖にいても埒が明かない。さっさと賢者の間に戻って異界から『水の息吹』を入手することこそが早道だと言った。
少しだけ躊躇いを見せるルーファスが、「異界に向かうのが楽しみ?」...そうからかうルミナに色をなして反論する。
沈黙が流れ、クレアの小さな寝息が聞こえてきた...。