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REPORT錬⾦ゼミ活動レポート

[第004章] 4-4

砂漠と詩人

担当:ルーファス

「ふぅ...。サンディ、ルーファス、ここはどっちの世界だ?」
スティールに急かされて、僕もサンディも慌てて周囲の景色を確認する。

僕は、ざっと見た感じサヴァロンの風景のように感じたが、別にエクシラント中を歩いたわけじゃないので甚だ自信がない。

何せ、特徴といっても巨石がごろごろしている砂漠というだけ...。
照りつける強烈な日差しが、コートに身を包む僕とクレア、黒革のジャケットを着るスティールを、容赦なく攻撃する。

「なんだい、あれは...」
サンディが、遠くをこちらに歩いてくる旅人らしき人影と、その背後から今にも襲いかかろうとしている魔物の姿に気づく。

僕らは砂を蹴って、旅人らしき人影に向かって走った...!

  ***

「...こ、ここは...?」
粗衣をまとった旅人らしき人が尋ねるも、実はこの場にいる誰もが、ここがどこなのかわかっていない...。

状況としては、砂漠で魔物に襲われていた人がいたので助けただけ...。
自分が、目の前の男女に命を救われたと理解した旅人は、いきなり歌いだした...!

「おお~...! 失意に打ちひしがれ熱砂を歩む詩人の前に~、温かなる手を差し伸べし4人の勇者よ~...」

「昔ガテラティオの劇場で観た歌劇の演者のようだ」とサンディは言っていたけど、クレアもスティールも、もちろん僕もそんなのは見たこともなく、目の前で歌い続ける旅人が、どこか不気味にすら思えてきた。

「私は、さすらいの詩人オルフェと申します...! あらぬ濡れ衣を着せられ、ミューザを追放されて早5年...。このような温情を受けたのは、いったいいつ以来だろうか~...♪」
オルフェと名乗った男が口走った『ミューザ』という耳馴染みのある響き...!
ミューザについての詳細を問う僕に、オルフェは謡いながら説明する。

5年前、オルフェにぬれ衣を着せて追放処分にしたのがミューザ国。
その報いか天が下した罰なのか、2年前に何ものかの襲撃に遭って滅亡した、オルフェにとっては憎んでも憎み切れない国なのだという。

どうやらここは、エクシラント大陸で間違いないらしい...。
2年前にミューザが滅んだということは、僕がヴェルメリオ大陸に転移した年に近いということか...。

ちなみに、オルフェは国費の使い込みをしたとぬれ衣を着せられたらしい。
あるやんごとなき人物の国費の使い込みを、オルフェが正義の糾弾をしようとした矢先、その人物にバレてしまい、逆に国費の使い込みをしたぬれ衣を着せられてしまったのだという。

  ***

オルフェは、ここから東へ行ったところにある『渇水の国サヴァロン』へと向かうところだったらしい。
オルフェは、僕たちもサヴァロンに向かう途中であったと誤解してくれているらしく、断る理由もないのでそのまま一緒にサヴァロンへ行くことにした。

  ***

砂漠をしばらく歩くと、巨石とヤシの木に囲まれたサヴァロンの町が見えてきた。
町に近づくと、岩陰に佇むサヴァロン住人の声が聞こえてくる。

「...もうダメだ...。1階はもう床下まで水がきちまっている...。せっかく借金して建てた新居なのに...」

(こんな砂漠で何を...?)
僕たちは、気にはなりながらも住民のぼやきを聞き流しながら街へと入った。

  ***

大きな岩のアーチをくぐると、強い香油の匂いと、辻々で行商されている香辛料の匂いが交じり合ったような、砂漠の町特有の空気が鼻腔を刺激した...。

そして、水滴のような形状の屋根が特徴のサヴァロン建築の建造物、砂を練って塗り重ねただけの簡素な庶民の家々、極彩色に彩られたテントや茣蓙...そして大量の水...。

えっ...、大量の水だって...!?

「ぜんぜん渇水してねぇなぁ...」
スティールが言う通り、町中が水没しているといわんばかりに水で溢れていて、人々の往来は、町中に架けられた丸太橋とボートというありさま...。

水で潤っているという感じではなく、人々は明らかに水浸しで困っている。
(町の入り口で住民がぼやいていたのは、これだったか...)

砂漠の町なのに、これほどまでの増水...これはまさか...!
僕の問いに、ルミナが姿を現して応える。

「おそらく、水のクリスタルが暴走しているのに違いないわね」
以前、フロウエルに行ったときは、クリスタルの減衰が騒動の一因だったが、ルミナによれば、クリスタルはその力が弱っても逆に暴走して強くなっても環境に悪影響を与えるのだという。

カシオタ海岸の高潮も、水の力が暴走してしまった結果...。
そしてその解決のために転移してきたここサヴァロンでも水の力は暴走している。
ルミナは、「私たちは、このサヴァロンに呼び寄せられたのかもしれない」と、意外なことを言った。

「呼び寄せられた...? ルミナが選んでいるんじゃないのか?」
スティールが、誰もが思ったことを代弁する。大きくルミナはかぶりを振る...。

「いいえ。私は、賢者の間の魔法陣でただ扉を開いただけ...どこに行くのかなんてわからないわ」
あの「見える。見えるわ」というのは、扉が開いた瞬間に脳裏に浮かんだ情景をそのまま口にしているだけなのだという。

  ***

「みなさん、朗報ですよ」
オルフェが、大げさにふり向いて、白い歯をきらりと見せる...。

ここサヴァロンの『リオン王』は、行商人や旅人から異国の話を聞くのを好むことで有名で、オルフェが各地を放浪して見聞きした情報は、必ずやリオン王を満足させて、ゆくゆくは宮廷詩人の座に登用するであろう(...後段はほとんどオルフェの妄想だが)とのこと。

オルフェが宮廷詩人になれるかどうかは置いておいて...。
僕たちは王様から何か情報が聞き出せるかもしれない...と、サヴァロン王宮に向かうことにした。