BRAVELY DEFAULT BRILLIANT LIGHTS
REPORT錬⾦ゼミ活動レポート
[第004章] 4-11
サヴァロンを後に
「...ったく、夜が明けたばかりだっていうのに、もう炎天下かよ」
スティールがいの一番にぼやきだす。
ついさっき東の空が白んだと思ったら、早くも強い日差しが僕たちをあぶりだしているのだ。
ルミナの羽模様は、ゆっくりと瞬いている。
しっかりと水の息吹を入手できたのを確認した僕たちは、ヴェルメリオに帰る準備をし始めた。
***
一方その頃、バーナード評議員は、自身の屋敷に急行していた。
昨日、オルフェという自称詩人が近寄ってきて、「早く屋敷に帰るべきです」と耳打ちしていった。
嫌な予感がしたバーナードは、議会に欠席する旨を報告し、わずかな供回りとともに夜の砂漠を疾駆してきたのだ。
屋敷の中では、兵士たちが其処かしこで頭を押さえてうずくまっている...。
薬を盛られたらしい...、侵入者か...!
バーナードは高価な調度品や金庫などには目もくれず、あの応接室へと直行する。
「隠し扉が...、開けられているだとぉ~~!!」
バーナードは隠し扉をくぐり、水のクリスタル祭壇の元へ駆けつける。
「へっ、なんだ...。水のクリスタルは無事じゃねぇか...」
至宝は、盗まれていない...。
ほっとしたバーナードは、水のクリスタルからあふれ出る水量が減っていることに気づいていない。
「...これは、殿下の差し金か...? だとすると、それを報せてきたオルフェは...」
腕を組んで少し思案していたバーナードは、笑いだす。
「そうだな、しばらく餌を与えておくのも手だな...。くっくっく...、ふっふっふ...」
***
肩を揺すって笑うバーナードの背中を見ている男がいる。
水の副将ウガンである...。
「ふん...、その水のクリスタルはもうすぐ命脈を奪われて枯死するのさ...」
ウガンは右手に力を溜め始める...。
「カストルとかいう王子の夢も、バーナードの野望も、砂漠に生きる民の暮らしも...。すべてが水泡に帰すことに...いや、水がなくなるんだ。水泡にすらならんか...」
バーナードが異変に気づいて振り返った時、ウガンの右手に込められた殺気が一気にほとばしるのであった。
***
砂の上に浮きあがった魔法陣の上にみんなが集まる。
僕は、オルフェのことが気になって、遠くサヴァロンの町を遠望していると、皆もそれに倣った。
「あいつのことだ。カストル王子とバーナード評議員、どちらに取り入ろうか品定めでもしてんだろうぜ」
あるいは、どちらにも取り入って、敗れそうな方をいかに見極め、裏切るか...を考えていそうだった。
「ミューザの国費を使い込んだって話、きっと本当の話だぜ」
スティールの見立てにサンディも同意を示す。
ぐずぐずしている僕たちを、ルミナが急かし、ランタンを掲げているクレアが苦笑している。
魔法陣に乗った僕たちは、光に包まれヴェルメリオへと帰っていった。
そして、それとまったく同じ場所に、小さい光の球が発生し、みるみる膨張してやがてスパークする。
球形にえぐれた砂漠に、目つきの悪い少年が立っている。
「...キャンキャン吠えんなブス!」
「まさかそんなクソみてえなこと言うために、ここまで乗り込んできたってのか? イラつくぜ...。そういう偽善ぶった態度...。...あれ?」
少年は、今しがた自分の元に押しかけてきた者たちを怒鳴りつけていたはずなのに、なぜ砂漠の真ん中にいるのか、さっぱり見当がつかず混乱している。
「ああ、のどが渇いてヒリヒリしやがる...」
少年は、のどを押さえながら、トボトボと砂漠を歩きはじめた...。