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REPORT錬⾦ゼミ活動レポート

[第004章] 4-14

遭遇

担当:サンドラ・カサンドラ

大講堂には、あたしたち錬金ゼミの生徒や、各ゼミナールの級長たち、ブラスの衛兵長、新都から赴任してきたばかりの街役人ウエニオ・モネールをはじめとする役人連中が集まっていた。

「テロール将軍からの報せによルト...」
デバコフ教授が、黒板に描かれたブラス周辺地図を見ながら、集まった一同に向けて状況を説明する。

一昨日、サソリ団と思しき一団が将軍の追撃を振り切った地点は、ブラスの街の北北東...。
サソリ団が西に向かったとすれば、新都への略奪などが考えられるが、その可能性は低く、サソリ団が南下したのであれば、その狙いのいくつか想像できなくもないという。

サソリ団は、ブラスの街を襲撃しようとしているのか...?
ここに集まる一同、共通の懸念はそこにあったが、デバコフ教授はそれを否定した。
教授の采配で、サソリ団を見失った地点からブラスの街までの偵察網を厚くしているが、今に至るまで哨戒にかかったという情報は届いていないのだ。

次に考えられるのが、エサカルモ火山南麗を突いて、豊穣の地『西海岸』を狙うことであったが、サソリ団がいくら国をまたぐ広域盗賊団とはいえ、クランブルス四家が抱える精強な私兵団と事を構えるなんてことは考えられない。

「ビルのヤツ...いや、S・ビリーは、そんな間抜けじゃねぇよ」
最前列に座り、腕を組んでいるスティールに、その場の全員の視線が集まる...。

  ***

(...ではいったい、サソリ団の狙いは何なのか...)
大講堂内に、居並ぶ面々のつぶやきが静かに広がってゆく。

デバコフ教授は、板書された地図上のブラスの街からゴリーニ村の中間地点を、指し棒を使って指し示した。

「現在ここに、サソリ団が思わず手を出したくなるものがやってきていマス」
教授が指し示した地点を見ていたスティールが、突然立ち上がり叫ぶ...。

「謝礼だ...!!」
教授は、大きくうなずき、周囲の人はスティールの発言の意味がわからず、ざわざわしている。

教授とスティールの推測は、カッシーオ家から贈られてくる謝礼を積んだ馬車の車列をサソリ団は、狙っている...そう一致したのだ。

「おそらくその車列には、クリッシーも随行しているはずデス...」

「クレアたちは、急ぎここから西に向かい...、クリッシーたちを救い出してくだサイ」

「カッシーオ家からの謝礼の品々なんかは、サソリ団にくれてやってもよいデス。決して無理に戦おうとはしないことデス。いいでスネ?」

教授は、不満そうにしているスティールの目を見据えて語りかける...。

「スティール、あなたの事情は、理解しているつもりデス」

「仇を見つけ、確実に勝てると踏んだその時は、勝負を挑むのもよいでしョウ。しかし、少しでも危ういと思った時は、恰好なんか気にせずにとっととお逃げなサイ」

「俺が危うくなるわけねぇだろうが...!!」
スティールは、やはり冷静さに欠けているようだった。
教授はあたしに、決してスティールに無茶させないようにと念を押し、クレアもルーファスもそれに応えるように大きくうなずいていた。

  ***

ブラスの郊外、西に半日ほど進んだところで、あたしたちは待機していた。

「...そろそろ、だな」
腕を組んで目をつぶっていたスティールがそうつぶやいた時、2時の方向に砂煙が見えた。
その数は、80、90...と徐々に増えてゆき、最後は100名を超えているようだった。

砂煙が向かう方向に、クリッシーたちが居るはずだった。
あたしたちは、大至急クリッシーたちの車列に向かうべく、西に向かって疾駆した。

ルーファスが、周囲のブラスの偵騎に向かって雷撃を放ってみせてサソリ団襲来を報せていた。

  ***

クリッシーは、前方から疾駆してくるあたしらにだいぶ驚いたようだった。

「クリッシー、今すぐ馬車を捨てて、御者たちと一緒に南西の方に逃げるんだ。急げ!!」

「北東からサソリ団が襲い掛かってくるんだよ。あたしたちがここで踏ん張る間、逃げられるだけ逃げるんだ。いいね...!」

戸惑うクリッシーを説得しているうちに、北東からの砂煙がどんどん迫ってきている。
追い立てるようにクリッシー、そして、各馬車に乗っていた御者たちを南へと走らせると、あたしたちは、迎撃の陣形をとった。

先頭を走る、欲に目がくらんだサソリ団員の顔がよく見える。
「さあ、サソリ団の先頭が見えてきたよ~...!! 準備はいいね!!」

  ***

いったい、何波目のサソリ団を撃退したことだろう...。

あたしらの後方に打ち捨ててある、お宝を積んだ馬車目掛けて次から次へと押し寄せるサソリ団員。

あたしたちは、ひとりひとりにトドメを刺すことはせずに、戦意を喪失する程度に傷を負わすぐらいにしていたが、それでもこの数となると体力は消耗されてゆく...。

敵の波が一瞬途切れた時、あたしたちはクリッシーが無事逃げおおせたことを確認すると、引き揚げを決断する...。

そこに、あの大きなダミ声が聞こえてきた...。

「よお~~! 誰かと思ったら、スティールじゃねぇか...!!」
スコーピオン・ビリーが巨体を揺すりながらザレル団員の後方から歩いてくる。

「ビル...!!」
スティールの言葉に、ビリーは大仰に眉をひそめる...。

「おいおいおい、いつまでそんなシケた呼び方してンだよ」

「俺様は、スコーピオン・ビリー!! 泣く子も黙るサソリ団の首領様だ。手前ぇとつるんでいたあの頃の俺とは違うんだぜ」

「戦災孤児の手前ぇを拾って育ててくれた義理の父親...、そして俺にとっちゃあ実の父親フランクリンをこの手で殺めたあの日からなぁ~!!」

ビリーが口を開くたびに、スティールの額に浮かんだ青筋が太くなる...。

「ぶっ、ぶっ殺す...!!」

我を忘れたスティールが、ビリーに突っ込んでいった...。