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REPORT錬⾦ゼミ活動レポート

[第004章] 4-13

予兆

担当:クレア

あの街中が私たち錬金ゼミを祝ってくれた宴の翌日...私たち"2人"は、大講堂にいた。
はた目には、ひとりで大講堂の最上段の椅子に座り、机に置いたランタンと話している変な娘にも見えるだろう。

ルミナは、最近夢を見るらしい...。
ルミナがまだ眠りにつく前のことなので、ざっと5500年ぐらい前の夢...。
5500年という響きだけで、雰囲気にのまれそうになる。

古の大錬金術師が、震える手でルミナを包み、ランタンを錬成した。
そして、大事そうにランタンを玉座の前に置くと、そのまま崩れ落ちた...そんな内容の夢らしい。

今回の夢でルミナが新たに思い出したことが2つほどあるという。
1つ目は、古の大錬金術師は、その時泣いていたこと。
2つ目は、その最後は安堵の微笑みを浮かべていたこと。

ルミナは、今までずっとこのランタンの中に"閉じ込められていた"とばかり思っていたらしいが、もしかしたら..."このランタンで護られていた"という可能性も出てきたと思っているらしい。

私は、ルミナに指摘されて、そんなことない...と否定してみたけれど、きっとニヤニヤしていたのだと思う。

  ***

「朝っぱらから何の話だい?」
声をかけてきたのは、ランタンに向かって話す私を不思議がらない数少ない仲間...ルーファスだった。
昨夜、宴と途中退場した時とは打って変わって、元気そうに見えた(髪の艶が雲泥の差!)。

あの食の細いルーファスが、私たちがドアノブに提げておいた折詰を朝から完食したというのだからもう体調は万全とみてよいのだろう。

ルーファスは、スティールとサンディからの街の西門まで来てくれという伝言を届けにわざわざ大講堂まで来てくれたらしい。

(そういえば、昨夜そんなことを2人で話していたような...)
私たちは、西門へと向かうべく、大講堂を後にした。

  ***

ザレルの都『大都』の地下深く『繭の玉座』に続く回廊にて...。
水の将ソーニャが歩いていると、かすれた声でソーニャを呼ぶ声があった。

「ウガン...!! いつ戻ったのですか...」
ソーニャの前で膝をつくウガン...。体中に無数の傷を負い、息が荒い...。

「撤退に手間取りまして...ね...」
ウガンは、バーナードという男からクリスタルの命脈を奪った後、駆けつけたあのニハルという少女と激闘になったという...。

「これを、水の命脈を...あなた様に...」
ウガンは、水の命脈をソーニャに手渡すと崩れ落ちそうになる。
小さなソーニャが、大きなウガンの体を支え、励ます。

「わかりました。さっそく一緒に、大神官様に報告を...」
ウガンは大きくかぶりを振って、これはソーニャの手柄として報告すべきだと訴え、この手柄によってソーニャ様は悲願に向けて一歩近づく...そう諭した。

あれほどソーニャや土の将ガイラ、サージらをバカにしていたウガンが、どのような心境の変化だろう...ソーニャはウガンの変化が不思議でならなかった。

「私の手柄にしたとて、私の待遇は...何も変わりません。なぜなら...」
ウガンは、ここで意識を失ってしまう...。

  ***

ウガンの活躍を報告しても、大神官の反応は素っ気ないものだった。

ウガンを褒めてやってほしい...ソーニャの願いに、大神官は、
「余計な気遣いは無用...。そもそもヤツはワシの...いや、なんでもない」
そう言うと、ソーニャによって納められた水の命脈を持って繭の玉座へと向かう。

「...そうだ。故郷から連れてきた配下は、すべて深手を負っているそうだな」
振り返った大神官が、初めて温かみのある声をかける。

「大都にお前たち主従の幕舎を用意し、医者も遣わす...。配下たちの療養とともに、お前も少し体を休めるがよい」

その中に、ウガンも入れてよろしいでしょうか? ...ソーニャの問いに大神官は少し哂ったような気がした...。

  ***

4つ目の命脈を繭の玉座に奉納した大神官は、ひとりの神官を呼びつけて言った。

「水の将ソーニャ...、本人はともかく、副将のウガンがあれでは、使い物になるまい。新たな妃候補の選定は...?」

神官は、すでに用意していた人選を伝える。
大陸の遥か東南、『ラヴィヤカ国』の姫君が大都に来ているそうだ。

ラヴィヤカ...考えを巡らせた大神官は、ラヴィヤカ国が、今まさにザレルの兄弟国ザナ・ウルスの侵攻を受けている小国であることを思い出す。

大王様の妃となって、ザナ・ウルスとの和睦を成したい...そんな目論見が見え隠れしているが、命脈を手に入れるための死兵とするにはうってつけの人選かもしれない。

急ぎ、その者に参内させるよう神官に命じた大神官は、繭に包まれたまま眠り続けるザレル大王を仰ぎ見た...。

  ***

スティールとサンディが西門で待っていたのは、昨夜思いついた連携を確かめる訓練のためだった。

私たち4人がスティールとサンディが考案した連携を確かめるうちに、野良の魔物に襲撃されたので、途中から実戦になってしまいはしたが、なかなかに上手く連携できていたと思う。

「よお、ブラスの英雄たち。訓練の帰りかい?」
そう、声をかけてきたのは、昨夜ごちそうしてくれたクルーンさんだった...。

「昨晩、あんたに酒をご馳走になって浮かんだ作戦さ」
スティールが当たり障りのない言葉で持ち上げると、クルーンさんは急に眉をひそめて耳打ちする...。

「気をつけろよ。ついさっき、テロール将軍から早馬で報せが入ったんだ」
予想外の情報に、少し戸惑うスティールとサンディ...。

「サソリ団と思しき一団、囲みを突破して血砂荒野を西進せり」
街の中では、その話で持ち切りなのだそうだ。
クルーンも郊外にいる商隊にそれを伝えるためにやってきたのだという。

「スティール、落ち着いて...」
スティールは、落ち着いているさ...と、まるで自分に言い聞かせているようだったが、その表情は険しいものだった...。