BRAVELY DEFAULT BRILLIANT LIGHTS

REPORT錬⾦ゼミ活動レポート

[第005章] 5-8

滝の下で

担当:ルーファス

「...そんなことがあったのかい」
サンディが視線もくれずに背後のゴブリンを斬り伏せる...。

もう慣れ親しんだといっても過言ではない賢者の間までの回廊...襲ってくる魔物もほぼ決まっていて、軽く雑談しながらあしらえている。

それにしても、あのクルーンという男もしつこい...。
ブラスを出立する前、スティールがまたもやクルーンにつかまって、散々悪しざまに言われたらしい。

器用にも、ゴブリンどもに蹴りを入れながらスティールがつぶやく。
「許せなかったんだろうな...。自分たちが憎むランケードの子を、街の英雄だなんてほめそやしていたことを...」

「スティール、あんたは平気なのかい?」
「平気じゃねぇさ。だが、痛みはじきに慣れる、きっとな...」

こんな会話の間も、おびただしい数のゴブリンが襲いかかってきては、2人に撃退されている...。

「さあ、ほころびができた。ルーファス、デカめのを一発頼む!」
スティールの合図を待っていた僕は、詠唱していた雷撃を、狼狽しているゴブリンの群れに向かって一気に放った...!

***

賢者の間、いつものように魔法陣の上に集まる。

「...見える、見えるわ...! 滝を前にひとり闘志を燃やす老剣士の姿が...」

「さあ、旅立ちましょう...! 奪われた至宝を取り返し、宿命の王女の元に風を届け、繋げる旅へと...」

僕たちは、光に包まれた...。

***

まばゆい光が晴れてゆき、ごうごうと水の流れる音が聞こえる...。

夜...?

「グルルル...!!」
「ひ、ひぃ~~~っ! た、助けてくれ~!」

暗闇にようやく目が慣れてきた頃、漆黒の獣が牙をむくのが見えた!

***

なんだか、耳が遠くなったかのような感覚に陥っている...。
ごうごうと水の流れる音が、すぐ近くにある滝のものであることを認識できるようになってからもウルフたちとの戦闘は続いていた。

一匹一匹が強いわけではない。
僕たちが、倒しても倒しても次から次へと現れてくるウルフに辟易していると、ひとりの落ち着いた老剣士が現れて、静かにつぶやいた。

「難儀しているようじゃな。助太刀いたそう!」
剣士がとてもゆっくり...とした(と僕には思えた)動きで剣を引き抜いたかと思うと、裂帛の気合いとともに無数にも見える光の刃を繰り出し、瞬く間に周囲からウルフたちの気配が消えていた。

「危ないところを、ありがとうございました」
礼をするウルフに襲われていた男は、安堵しつつもどこかそわそわしている。
「素晴らしい太刀筋、感服いたしました」
サンディが、珍しく神妙な口調で助太刀してくれた老剣士に礼を言い、あのスティールすら軽く頭を下げている...。
(僕には物腰の柔らかい、背筋がぴんとした老人にしか見えなかったけど...)
「たまたま通りかかったところに、その方らの気が満ちるのを感じたのでな。わしは、...旅の剣士スローン」
そう名乗った老剣士は、"奪われたものを取り返しに"ここ滝の隠れ道にやってきたと言った。

僕たちは、それぞれ名を名乗り、さきほどからそわそわしている男の人に、こんな夜更けにいったい何をしているのかを尋ねた。

「私は、ミューザから落ち延びてきたのです」

「え!? ミューザだって...?」
僕は、滝の音のせいかよく聞き取れなかった...と思いたがっていたかもしれない...。

男によると、何者かによって聖廟が襲われ城や街に火が放たれた。
男の家族も知り合いも、みんな殺されたという...。

息を飲む僕たちの側で、スローンさんはあまり驚いていない...いや、むしろよく知っていたかのように悠然としている...。

騒乱の渦中、男は気絶していたため殺されずに済んだといい、ミューザを襲撃した者たちが引き揚げ始めたのを見計らって、隣国のハルシオニアまで逃げてきたのだという。

男は、もういいでしょう? ...とでも言いたげな表情を浮かべている。
スティールが目で合図すると、男は逃げるように去っていった。

「ミューザが、滅んだ...!?」
僕たちは、ミューザが滅んだ直後の世界にやってきたというのか...!

すると、今は、僕が光の球でヴェルメリオ大陸に転移させられる2年前...。
先にサヴァロンで水の息吹を手に入れる2年前でもある...。

「なんてこった...。あのグローリアって王女の祖国が滅びた年にやってきちまったってことか...」
スティールの何気ないつぶやきに、スローンさんの雰囲気が硬化する...。

「その方ら、グローリア王女を知っているのか!」

その口調の厳しさに戸惑いながらもクレアがうなずくと、スローンさんが剣の柄に手をやり、殺気がほとばしった...。