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REPORT錬⾦ゼミ活動レポート

[第005章] 5-9

老剣士スローン

担当:サンドラ・カサンドラ

やれやれ...、死ぬかと思ったよ...。久々にね...。

老剣士スローンが腰を落とし、剣に手をかけ、一閃を繰り出せる体勢になるまで、あたしもスティールも棒立ちだった...。

それぐらい、剣の腕前に歴然とした差がある。

「この状況でグローリア王女を知る4人の手練れ。その方らは、いったい...」あたしらに斬りかかるのに、少しだけ躊躇いを見せてくれているのが救いだった。

「おっとっと...、爺さん、何の真似だ...!」
そううめくスティールも、応戦する体勢をとれていない。

初手はあたしに向かってくるのか、それともスティール...いや、場合によってはクレアに向かう場合だって...。

「あたしらが、ミューザを襲ったヤツらだと思ってるのかもしれないねぇ」
皆に言っている体で、老剣士スローンに対して"決してそうではない"ことを伝えたつもりだったが、間合いの中に発せられる殺気に何の変化もない...。

(これは...、いろいろと覚悟しないといけなそうだねぇ...)
見れば、スティールも何かを覚悟したらしい...。

(クレアは任せた...)
(ルーファスは頼んだよ)

突然、クレアのランタンが光りはじめる...!!

「ねぇ、ちょっといい...?」
ルミナに促されたクレアが、あたしたちが殺気を放ちあっている間合いにつかつかと入ってきてランタンをかざす。

「スローンさんが取り返しに行こうとしているのは、ミューザから奪われたクリスタルではありませんか?」

「!! な、なぜそれを!!」

「あなたの中から、クリスタル...風のクリスタルの何かを感じるのよね...」
老剣士スローンの殺気が、ふいに消え去る...。

ルミナを見ても驚かないということは、やはりクリスタルにかかわりがあると見てよいのだろうか...。

「話を、聞いてもらえますか...?」
クレアの問いに、老剣士スローンは剣の柄から手を離すことで応えた。

***

手短に(それでも要点を端折らずにとなるとそこそこ長時間にはなってしまったが...)あたしたちがクリスタルの息吹を手に入れるため、異世界から時空を超えてやってきたことを説明すると「にわかには信じられぬが...」と言いおきつつも老剣士...いや、スローンさんは、信じようとはしてくれているようだった。

「荒唐無稽、そうじゃな...。だが、わしもこの年まで生きてきて、世間の人たちにはとても信じられない出来事にも多々遭遇しておるでな」

ルミナを見ても驚かないのもそれで? ...クレアの問いに対しては、「このように小さな妖精を見たのは初めて。そういう意味では驚いておるよ」と、やはりまったく動じている感じには見えない。

「...それで、あなたが取り戻しに行くといっていたのは、クリスタルで間違いないの?」
ルミナが、ここにいる誰よりも食い気味に...まるでクリスタル以外にはまったく興味を持っていないかのように(いや、現に持ってはいないだろう)問いただす。

スローンさんが、燃えさかるミューザの城下からグローリア王女の手を引いてここハルシオニアまで落ち延びたのが3日前のこと...。

先ほどの者のような避難民から、ミューザを襲った者たちが引き揚げ始めているという情報を得て、単身クリスタルを奪還するためにここまでやってきたのだという。

「...わしは、風のクリスタルとちょっとした縁があるのじゃ」
他のクリスタルはいざしらず、風のクリスタルはまだミューザを出てはいない...それがわかるらしい。

「...スローンさん。私たちに、その風のクリスタル奪還のお手伝いをさせてください」
しばし思案していたスローンさんは、あたしたちひとりひとりの目を見ながらいった。

「ミューザへの道は、この滝つぼの裏にある。風のクリスタルの気配が徐々に近づいてきている。急ごう...」