BRAVELY DEFAULT BRILLIANT LIGHTS
REPORT錬⾦ゼミ活動レポート
[第005章] 5-11
略奪者たち
高山特有の霧なのか、はたまた戦火に包まれた城下から上がる煙のせいか...、辺りの風景は絶えず白んでいる。
男は、聖廟と呼ばれる高台に立ち、自らの下知によって放たれたその炎と煙を眺めている。
「よう、軍人さんじゃないか。あんたもこれから引き揚げるのかい...?」
男は『軍人』、声をかけてきた者は『支配人』と呼ばれていた。
「まだ残っていたのか...」
軍人は、ゆっくりと振り返り、バンダナをした顔に大きな傷を持つ『支配人』に応える。
「聖廟の中に、まだ財宝でも残っているんじゃないかと思ってね」
"あんたと同じでね"と前置きされたのが心外だったが、軍人は、何かめぼしいものでもあったのか? ...と尋ね返す。
「いや、城下を略奪し、王墓まで暴いたあんた同様、大したものは残っていなかったよ」
ひと言が多い男だった。それも、ついうっかり...ではない。
相手のイラつきまで計算して、敢えて言ってきているのだ...。
「まったく、クリスタル以外はチンケな国だった」
それは同感だったが、言葉には出さない。
「『司祭』に『絵描き』...、あの2人は?」
軍人は、さほど興味もない2人の呼び名を挙げてみた。
支配人によると、『司祭』は火のクリスタルを、『絵描き』は土のクリスタルを持って2日前には引き揚げていったのだという。
(そして、この『支配人』は水のクリスタルを、俺は風のクリスタルを懐中に抱いている...)
***
軍人と支配人、そして司祭と絵描きの4人は、身元の詳細は明かさずに、それぞれあだ名で呼び合い、このミューザを襲った。
シーフのアスタリスクを持つ『支配人』。
魔獣使いのアスタリスクを持つ『軍人』。
ピクトマンサーのアスタリスクを持つ『絵描き』。
導師のアスタリスクを持つ『司祭』。
絵描きは、ふだんの言動もだが出身も生い立ちもよくわからなかった。
糸目の司祭は、おそらくライムダールから来たんだろう。しかし、微かにホログラードの訛りがあった...。
(べらべらとよくしゃべる男だ...そして、概ね的を射ているのが気に入らん...)
「ずいぶんと饒舌じゃないか支配人...。さては、聖廟の中で貴重な財宝でも見つけたのではないか?」
「ふっ、滅相もない」
支配人は、軍人がかけたカマを、それと知りつつ軽くいなす。
「俺は、そろそろ出立する。支配人、お前とは二度と会うこともないだろう。さらばだ...」
軍人は、そう言うと足早に去っていった。
***
これまで、わずかにまとっていた卑屈さを棄てた支配人が、ぼそりとつぶやく。
「ふん、軍国ホログラードの魔獣部隊でも率いた部将といったところか...。あの器量では、大した地位にあるとも思えねぇ...」
「いっそのこと、襲うか...?」
自問してみせた支配人は、口の端を歪めながらすぐに自答する...。
「...いや、風のクリスタルなんざ、あっても金にはならん」
小物とはいえ、アスタリスクの所持者...。反撃に遭ってケガでもしたら元も子もない。
聖堂内を漁っていた配下たちが、財宝を入れた麻袋を肩に担いでやってきた。財宝は、残らず運び出したらしい...。
「ああ、わかった。俺たちも引き揚げるぞ」
風が、哭(な)いていた...。