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REPORT錬⾦ゼミ活動レポート

[第005章] 5-15

違和感

担当:スティール・フランクリン

俺たちは、賢者の間へと帰ってきた。

「さ~て、何日経過していることやら...」
「ハルシオニアには、一晩いただけだからねぇ」
今回は、誰も何も仕掛けていない。何日経っているのか、またノータイム帰還だったのかさっぱりわからない。

「私、時々不安になるの...。この世界に戻ってきたら途方もなく時間が過ぎていたらどうしよう? ...って」
クレアが、誰もが一度は考えたことのあること(...まあ、大概ガキの頃に考えることだけどな)を口にすると、風の紋様が点灯してウキウキなルミナが、小躍りしながら悪戯な表情で答える。

「あり得なくはないわよ...」
曰く、ルミナがランタンの中で眠りについた時、クランブルスなどという国はこの世になかった...。
眠りから覚めたら、まったく知らない国になっている...今クレアが感じている不安と同質のものということか...。

「あまりにもとてつもない時間が過ぎているとね、不安なんて感じていられなくなるものよ」
ルミナは、自分の実体験をそのまま語っただけだろうが、こればかりは経験したことがない俺たちにとっては共感できるものではなかった。

考え込んでも仕方がないことに思いを巡らせて不安になっても始まらない...たしかにその通りなのだが、そこで考えを止めるのも...そんな無限ループに陥りかけていると、クレアに呼び止められる。

「ブラスの街に帰って、準備をしたらオーベック家領ゼビュンカ渓谷へ暴風が収まっているかどうかを確認しに行きましょう」
俺たちは、賢者の間を後にした...。

***

(...何か、景色が違う...)
そう思っていると、ルーファスが声をかけてきた。

違和感...。
ああ、そうだ...。
たしかこの辺りに、最初の異世界転移する前に戦った、バカでかい機械人形(...サンディによると『バエル02』と型番に書いてあったそうだ)の残骸があったはずなのだが、忽然と消えてしまっている。

「他の魔物に食われちまったんじゃない?」
あの鉄の塊をか...? そんな魔物がいるもんかねぇ...。

サンディが、"お客さん"の到来を告げる。
どうやら、鉄とかは食いそうにない魔物の群れだった...。

***

大都の地下深く繭の玉座に、風の将ナンナンは呼び出されていた。

「喜ぶがよい。たった今、副将サガンが風の命脈を持って復命を果たしたぞ」大神官は興奮だったが、サガンは大きな体を折り曲げて膝をついている。
かなりの深手を負っているようだった。

「小娘はひと捻りで黙らせたのですが...」

サガンは大きく息を吸おうとするも、上手く息を吸えていないようだった。
さっきから、気管がヒューヒュー音を立てている。

「...あのジジイと王に気づかれ...、さすがに2人の手練れ相手は、骨が折れました...」

「サガン、だいぶ深い傷のようだが、次の作戦に支障はないな...?」
ナンナンは、一瞬大神官が何を言っているのかわからなかった...。

「支障はない...。そうであろう...?」
表情が見えない大神官が、ふと哂ったようにも見えた。

息も絶え絶えに返事をするサガン...。

「下がって休むがよい...。風の将ナンナン、そなたもだ」
決して休息を勧めているのではない。玉座の間から出て行けと命令しているのだ...。

「...なんなん、なんなん...」
ナンナンのつぶやきが、繭の玉座からの回廊内でずっと響いていた。