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REPORT錬⾦ゼミ活動レポート

[第006章] 6-18

名を継ぐもの

担当:スティール・フランクリン

風の副将サガンは、転移してくるやいなやその場に崩れ落ちた...。

「ほう、サガン...戻ったか。風の命脈はいかがいたした...」
大神官は、サガンの様子が尋常ではないことを目の当たりにしつつも、ただ風の息吹をよこせとばかりに左手を差し出す。

サガンは、まずは先に帰還した風の将ナンナンの安否が先だとばかりに風の命脈を秘匿しているであろう懐を両手で覆う。

風の将ナンナンは、サガンよりも少し前、大怪我をして帰還してきていた。
命に別状はないというが、それは健常に過ごせているというわけではない。
ましてや戦場に復帰することなどしばらくは望めないだろう。

「我が主はっ...!!」
ナンナンの失態をあげつらう大神官を遮るようにサガンが叫ぶ。

「我が主ナンナンは、果敢にも敵に向かい...! 兵たちを...守る...ために...」そこまで言い募るとサガンはどうとその場に崩れ落ちた。

「"修理"で欠損したのは記憶だけではなく、覚悟のほどでもあったか。愚か者め」
大神官は、サガンの体に向けて手のひらを向けるとそう唾棄した。

サガンのわき腹と腰は、巨大な獣かなにかに大きく食い破られていた。
そのサガンの懐中から風の息吹が浮かびあがり、大神官がかざす左手へと入ってゆく。

「そして、我が左眼も返してもらおうか...」
サガンの身体から、目の形をした何かが浮かび上がり、大神官の中へと還ってゆく...。

突然元に戻った視界に大神官は少し戸惑った。
なにしろ大神官にとっては、実に19年ぶりに視界が戻ったことになるのだ...。

目の前に転がるサガンの抜け殻を一瞥(べつ)した大神官は人を呼び、骸を片付けるよう命じた。

駆けつけた神官が、王麗(おうれい)という人物が大都に来ていることを報告する。

しばし思案していた大神官は、やがて王麗とは、ザレルの重臣王嵐(おうらん)の娘であり、22年前のこと...大神官の過去を知る女であることを思い出す。
「今は風の命脈を大王様に捧げる儀式が何よりも重要。儀式が終わるまで待たせておけ。よいな...!」

神官は一礼すると、後から来た数人の神官とともに、サガンの骸を運び去っていった。

***

「これは、これは、使者殿...。ようこそサソリ団の陣営へ」
いつになく愛好を崩したスコーピオン・ビリーが、異形の者を出迎えている。
異形の者は、闇の盟主からの使者と名乗った。
さしずめ闇の使者とでもいおうか...。

闇の使者は、闇の盟主からの返答をビリーに言い渡す。

「サソリ団頭首、S・ビリー殿。機構が闇の会同にお納めいただいた数々の財物に、一同驚愕しております」

ビリーの見えている方の目が、ますます細くなり、口元が緩む。
しかし、闇の使者はそれを打ち消すかのよう言葉を吐いた。

「しかしながら...、会同の席次に空きはなく、貴公の参加は認められませぬ」
みるみるビリーの顔面は赤くなり、こめかみには太い青筋が浮かび上がる...!

「な、な...、何だとぉぉおおおっ!!」
「貴様っ、な、何を言っている!! 我が父のフランクリンの座が空いておろうがっ!」

「お、俺は、フランクリンの実子だぞ!?」
ぶるぶると震えてたビリーの顔色は、いまや土色に変じている。
しかし、闇の使者は...仮面でその表情を伺えぬとしても...まったく動じずに答える...。

「...その御尊父を、貴公は殺害したのを知らぬ者はおりません」

使者は、ビリーから視線を外してとどめの一言を放つ...。
「そして現在、フランクリンの名を継ぐ者は他にいらっしゃいます」

「なっ...、スティールか...!? スティールの野郎が、フランクリンの名を...」
ヤツは拾い子で、親父との血のつながりも何もない...ビリーの空しい叫びが風に消えてゆく。
その血のつながりがある実の父を、ビリーは殺害しているのだ...。

「血のつながった御尊父を貴公は惨殺なさった。そのような不義理を働く者に、フランクリンの名跡を継ぐ資格などないと思われますが、いかがですかな?」
ビリーに返答はなかった...。

「お納めいただいた財物はすべて返却します。では、私はこれにて...」
闇の使者は、ビリーが闇の会同へと贈った財物を積んだ馬車をそのままにしてビリーの陣営を後にした。

血砂荒野にS・ビリーの怒声が響き渡った...。

***

「お、覚えておけよぉおお~~~!!」
「スティールの野郎~~...るさない。許さないから...な...」

ルーファスが、カウンターに突っ伏して俺への怒声をあげている...。
...といっても、俺のジョッキを間違えて飲んでしまったルの字がおっちょこちょいなだけな話だが...。

街の浴場で旅の垢を落とした俺たちは、馴染みの酒場に集合してジョッキを交わしていた。
風呂上がりで火照った体に、みんなでジョッキを心地よさそうに飲み干しているのを見たルーファスが、アイスハーブティをジョッキに入れてもらって雰囲気だけ味わっていたところ...間違って俺の酒をぐいっと飲み干してしまったというのだ...。

ふいに酒場全体が揺れる...。
ルの字は、まだ酔いのせいで視界が回っていると思っているようだったが、建物全体がビリビリと振動していた。

クリッシーが駆け込んできて叫ぶ。

「みなさん、大変です!! エサカルモ火山が、噴火を起こしたようです!!」

サンディが空にしたジョッキが、カウンターの上でカタカタと音を立てていた。