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REPORT錬⾦ゼミ活動レポート

[第006章] 6-1

氷解の兆し

担当:ルーファス

サンディが浮かない表情で鍛冶工房から出てきた。
どうやら、預けていた武具のメンテが済んでいないらしい。

「仕方ねぇさ。今までこまめに手入れする暇なんてなかったもんな...」
そうつぶやくスティールも、例の傷んだ長剣を何振りか預けていて、今腰に佩(は)いているのは3番手のものらしい。

僕とクレアが一緒に仕入れた食料やその他の物資はもう万全だった。
出発直後の野営で食べようとしている鮮度の高い食材が、そう何日も足止めされると傷んでしまうことになるので、武具組に様子を聞きにきたわけだが...。

「た、助けてくれ~~~!!」
今日も今日とてブラスには助けを呼ぶ声がこだまする...。

「こうやって予備の武具もどんどんすり減っていくんだよな~」
...そう言いながらスティールの足は城門に向かっている。
ここぞとばかりに僕がからかうと、武具の消耗を避けたいサンディも口を出してきて、「あんたの雷撃が頼りなんだからね」と、僕の肩をかなり強めに城門の方へ押し出す...。

「エーテル、いつでも飲めるように準備しておくね」
クレアの微笑みが、僕の逃げ場を確実に消しにかかっている...。

***

数刻後、僕たちはブラスの北に位置する血砂荒野にいた。
商隊は、この辺りでオークの群れに襲われたらしい。

オークとは、二足歩行する豚鬼のことで、元々ヴェルメリオ大陸にはいなかった魔物なのだそうだ。
僕がエクシラントで時々遭遇したオークとは、少し姿が違っていて、サンディ曰く、ルクセンダルクからの来訪者なのではないか、とのこと。

国境の街ニーザの辺りや、血砂荒野の西部での目撃例があったようだが、ここ最近はブラスの近くにまで現れるようになり、徒党を組んで組織的に旅人を襲うこともするらしい。

そんな話をしていると、商隊を襲ったというオークたちが僕たちを見つけ、さっそく襲いかかってきた。

***

オークに奪われたという荷駄は、積み荷の食料が少しかじられたぐらいで、ほぼ無事だった。

「クルーンのヤツから聞いたよ。あんたの母親のこと」
荷駄を護衛しながらブラスの街まで戻ると、商隊の男がバツ悪そうにつぶやいた。言うか言うまいか迷っていたみたいだ。

思わぬ不意打ち(...と本人は感じたらしい)...に、スティールの目が泳ぐ。

「俺たちは、ただただランケード夫人を悪く言うことで憂さを晴らしていたようだ。真実がどうだったかなんて気にもせずにな...」
男は、息子の頭に手をやりながらスティールに詫びた。

「...いや、それは俺だって一緒さ」
どういう顔をしてよいかわからず、それでも少し柔らかい表情でスティールが続ける。
将軍が調べてくれるまで、スティールだってランケード夫人のことは蔑んでいたのだ。街のみんなと同じく...。

「...わ、ワシは認めんからな!!」
突然、商隊の男の父だという老人がやってきてスティールに杖を向けて叫んだ。
「時の宰相ランケード伯がしっかりしていれば...、王と四家の確執は生まれず、王都も陥落することもなかったのじゃ!」

「王都さえ無事でありさえすれば、この街も戦地にならずに済んだであろう...。あんなに、あんなに多くの人が死ぬこともなかったじゃろうに...!」

老人は、息子と孫に手を引かれるようにして去っていった。
商隊の男は、最後までスティールに詫びる仕草をしていた。

「気にすんな...」
目で問う僕たちに、スティールは手をすぼめておどけてみせた...。

氷解の兆し...しかし、氷解してはいない...。