BRAVELY DEFAULT BRILLIANT LIGHTS
REPORT錬⾦ゼミ活動レポート
[第009章] 9-6
戦端
ブルース元国王の前に通された例の宣教師は、特段へりくだるわけでもなく淡々とブラスの情報を語り始めた。
官民の関係は良好...といっても事実上の指導者は顔役のデバコフ教授で、何事も彼の采配で動いているといっても過言ではない。
街の防衛に関していえば、城壁はところどころに崩れが見られ、さほど進軍の障害にはならないが、城壁の内側に堀があり豊かな水量があるために侵入には注意が必要になる。
続いては各国の状況について...。
ザレルの士気は盛んで、いつクランブルスに攻めてきてもおかしくはない状況にあるが、テロール将軍が守る国境の街ニーザを落とすにはかなりの時間を要すだろう。
ガーマ王国は、相変らずまとまりに欠ける国民性で、問題を常に他者の責任とする気風がさらに物事を決められずにいる。
宣教師が仕組んだイトロプタの問題も未だに解決できずにいて、かといって武力をもって併呑する果断も見せられないでいる。
北のサイローン帝国には大きな動きがあった。
長年病に臥せっていた皇帝が崩御し、初代皇帝以来2人目となる女帝が誕生したのだという。
20年前の天衝山麓の戦いで喪ったサイローン七将も復活したことをみれば、サイローンの七軍すべても復活したとみてよいだろう。
今のところ、国内にも国外にも、ブルース元国王のブラス侵攻を邪魔する者の存在は見当たらない。
ブルース元国王が満足そうに頷くたびに、鍔広帽の豊かな羽飾りが跳ねるのが周りの誰にとっても煩く感じられた。
***
王軍が狙っているという『賢者の意思』をクレアの身体から取り除くことはできないのか...?
相手が望むものをくれてやれば、戦いは避けられるのではないか...。
僕たちの楽観論は、即座に否定された。
たとえ『賢者の意思』をくれてやっても王家が庇護する『世界教』は『先人』...つまり、錬金の徒と争い敗れた者たちの末裔である...。
錬金学を非常に嫌忌していて、ある意味、争いは避けられないといえる。
「そレニ...」
瀕死のクレアの命をつなぎとめるために錬成した『賢者の意思』をクレアから取り除けば、クレアは死んでしまう...。
「なんだ...、端から選択肢に入らないじゃないか。先に言えよな」
少々不遜な物言いかとも思ったが、皆、大きくうなずいている。
そう...そんなの、お話にならない...!
***
王軍がブラスに迫る期日は、遅くとも5日以内...。
そんな話をしていると、イヴァールとクリッシーが大講堂にやってきた。
街の様子は、外から来た交易商などは退去の準備を始めているが、生まれた時からブラスに住むものはどうしたらよいか迷っている様子だという。
とりあえず、俺とサンディ―で来訪者の何人かに声をかけて、城壁の点検を始めることに。
クレアとルーファス、イヴァールで街の人に避難を呼びかけてみることに。
当たり前のようにクレアたちについてゆこうとするクリッシーをデバコフ教授が呼び留めた。
「あなたにも頼みたいことがありマス」
国境の街ニーザへ向かって、テロール将軍に救援を依頼してほしい...。
将軍に面識のあるクリッシーであったが、重要な役目だった。
「わかりました」
クリッシーが少し上ずった声で返事をした。
***
思ったよりも、西側の城壁の損傷が激しかった。
21年前、ザレルの猛攻に晒された東側は当たり前だが、西側もまた目立った修繕などは一度もされていない。
「たった5日では、どうにもならんぞ?」
ハインケルのおっさんもお手上げとばかりに唸り声をあげる。
「やはり、(王軍が攻めてくる西側とは逆の)東側の防御は棄てるしかないんじゃねぇのか?」
渋面の3人がうなずき合う中、その場に呼ばれていたニハルがぽそりとつぶやく。
「...わ、わたしは、何を...?」
ニハルの仲間が城外にいることは、前から知っていた。
それが大きな蛇で、ニハルによく馴れているとはいえさすがに街中で飼うわけにはいかないというニハルの配慮だった。
「そのナードの力を借りて、敵陣の様子を探ってきてほしいんだ」
ニハルは小さくうなずくと、スタスタとその場を去っていった。
***
クレアやルーファス、イヴァールの住民避難の説得もまた難航していた。
誰も住みなれた街を離れようとはしない。
ましてや、迫りくる恐怖の対象を見ていないのだ...。
「でもね、こんなこと言ってるうちにも...」
そんなクレアの言葉に呼応するように、辺りが揺れ、次いで大きな炸裂音が響き渡る...!!
ブラスの街が、砲撃されていた...。
「は、始まったのね...」
次弾と思しき飛翔音が迫ってきた...!!