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REPORT錬⾦ゼミ活動レポート

[第009章] 9-7

王軍第一陣

担当:クレア

砲撃のたび、炸裂音が轟き、地面は揺れる。

「ひ、避難じゃあ~」
「避難って、いったいどこへ逃げる場所なんてあるんです...?」
「婆さんの親戚の知り合いがニーザの街にいたはずじゃ...! い、急ぐのじゃ~~!」

さっきまで避難に二の足を踏んでいた住民たちが、思い思いの方向に逃げ去ってゆく。

***

城門を点検していたスティールたちにも、砲撃の音は聞こえていた。

「お世辞にも上手い砲撃とは言えんがな...」
砲撃の頻度をみても砲台はひとつだけのようだった。

先遣隊の威力偵察か、あるいは一部のはねっ返りの暴発か...。
ハインケルさんの推測にサンディもスティールも異存はない。

「敵は数名の兵士と青い大きな機械が1台。ナードが調べてくれたの」
いつの間にかニハルが側にいる。

一部のはねっ返りの暴発説が濃厚になってきたわけだが、流れ弾に当たりでもしたら痛いじゃ済まない。

スティールとサンディは、ハインケルさんたちに後詰を頼み、出撃して敵部隊を叩くことにした。

***

「いいぞ! どんどん撃ちこむのだ!!」
ヤーラ・レヤック指揮官は、いつになく高揚していた。

命令では、偵察に徹して決して攻撃を加えるなといわれていた。

「ふん...! 命令違反など、それ以上の戦果をもたらせば帳消しになるものだ。我が一族は、代々領地も持たない下級貴族...このまま共和制が、王制に戻ったところで出世など見込めんからな...!」

王軍の虎の子、『エリートバエル』を1両預けられながら、王軍全体で50両あるエリートバエルの数をみて自身のチャンスも50分の1とみたのか、非常に功を焦っている。

***

「あれは...」
「ああ、地下神殿で光の球から現れたヤツと同じ形だな...」
「たしか、ゲレスの技術者が残骸を回収していったと聞いたが...」
「まさか、こんな形で量産されてたとはねぇ」

ヤーラ・レヤック指揮官が檄を飛ばしているのを、回り込んだ私たちが岩場の陰から観察している。

よく見ると、弾の補給のためか冷却のためかはわからないが、主砲塔が4発撃った後に、しばし間が空く。

(次の途切れに合わせて斬り込むぞ)
スティールの指示に皆でうなずいた後、また青い機甲兵器が主砲を撃ち始めた。

***

デバコフ教授が、ところどころ煤けたマニュアルのページを開きながらつぶやく...。

「そうでスカ...。あの青い機甲兵器は、ゲレスの技術者が回収していったものでしタカ...」

私たちは、敵兵が逃げ出したエリートバエルの操縦席にあったマニュアルを持って帰ってきていた。

あの地下神殿で撃退した機甲兵器は、グランツ帝国が開発した『超弩級戦者バエル・改』というもので、記載によれば"初の単座機体"であるという。

ゲレスの技術者が書いたと思しきメモには、地下神殿から回収されたバエルの操縦席には、ミイラ化した操縦者の遺体とバエルの操縦マニュアルが残されていた。
検死の結果、その操縦者は少なくとも1年以上前に落命していたとみられ、私たちと交戦した時には、機体の暴走状態だったものと思われる。

ゲレス側が記載したマニュアルは私が、グランツ帝国側が記載したマニュアルの方はサンディが読んでくれたのだが、血相が変わっていた。

超弩級戦者バエルの脚の装甲に刻まれた紋章が、サンディの旧主グランツ伯爵家の紋章と同じものであったことや、バエルの年式が公国暦18年...と、サンディがヴェルメリオに転移されてきた翌年が刻まれていたことなどが、とても気になったのだという。

グランツ帝国とは、サンディの旧主にゆかりのある組織ということになるが、当のサンディはそのような帝国など近年のルクセンダルクには存在していないという...。

***

「...となると、機工島ゲレスは王軍と手を組んだということ...厄介でスネ...」
そして、それが50両もいるとなると、一斉砲撃などされたら堪ったものではない。

「錬金術で隔壁を造ってみましょうカネ...」
教授は、聞き慣れない言葉を発した。