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REPORT錬⾦ゼミ活動レポート

[第1章] 1-16

ナメッタ村

担当:サンドラ・カサンドラ

みんなで飲み明かした翌日、クレアの望みどおり焼きたてのベーグルで朝食を済ませたあと、武具の手入れや食料の調達をしていると、なんだかんだと昼になった。

あたしたちは、南方の肉料理ケバブを出すという屋台で軽く昼飯を済ませ、ナメッタ村へと向かった。

ブラスから東に向かうと南の大地溝の反対側に行き着いてしまうので、一度北へ向かってから南下するという遠回りをしないといけない。

あたしたちは、幾度となく、襲ってくる魔物を撃退しながら、3日ほどかけてようやくナメッタ渓谷の入り口に到着した。

  ***

「おいおいおい...」
前方を眺めていたスティールが、クレアのカバンに提げられているランタンに向かって毒づく。

ぜ~~~~んぜん、収まってねぇじゃねぇかよっ!!
どうなってんだルミナ...!!
ま・だ・樹・が・生・え・た・ま・ま・な・ん・で・す・け・ど~。
...と、ランタンを小突きまくる。昔の生業を彷彿とさせるガラの悪さがにじみ出ている。
ルミナは激しく抗議するも、ルミナ自身がなぜここの樹木がまだあるのかわかっていないようだった。

顎に手をあて、しばし何かを考えていたルーファスが、何かに気づき、クレアに耳打ちする...。

よく見ると、怪樹の足元の地面に小さな新芽が出ているではないか...。
まるで、ブラスの街中で見るような普通の植物の芽に見える。

「ねぇサンディ、あの幹を切り倒してみて!」
クレアにそう言われて、あたしは大剣を構え、目の前に立ちはだかる樹木に一閃する。

すると、前と違って樹木の再生がされない!!

土の息吹によって、異常に活性化されていた樹木の成長が抑制されるようになった。
そして、土の力の調和がとれはじめた大地に新芽が出るように...?

スティールは、あたしにあと2~3本の伐採するように言って、ルミナの方を見る。
自身の推測をシカトされた形のルミナは、ランタンの中でプンスカ怒りまくっていた。

  ***

あたしが大剣で2~3回斬りつけると、怪樹の壁に人がひとり通れるぐらいの隙間ができた。

あたしたちが順番に隙間を通ると、向う側には何人かのガラの悪い男たちがいた。

樹木の壁が崩れたぜ。
あの大女がなぎ倒したみたいで再生もしない。
これでようやく荷を売りさばけるってもんだ...。

あまり品がいいとはいえない会話をしていた男たちが、通り過ぎようとしたあたしたちに声をかけてきた。

「ちょ~~っと待ったぁ...! そこのご一行さんよぉ、開通早々で悪いが、通行料を払い忘れてるぜぇ...!」

せっかく開通してやったっていうのに通行料までふんだくろうとしている...。

「ケガしたくなかったら、身ぐるみ置いて...」
調子に乗った男たちがお決まりのセリフを発しかけた時、逆手に構えられたスティールの長剣が先頭の男に迫っていた。

  ***

すがすがしいまでの負け犬っぷりを発揮して、男たちは駆け去っていった。
あたしたちは、すぐそこだと言われた『ナメッタ村』に向かって歩き出した。

  ***

何ともはや、首が痛くなりそうな光景...いや、実際に村の様子を見ていると首が痛い。
村が、地形ごと斜めになっている。

スティールは、顔を傾けなきゃいいと言うけれど、村全体が斜めになっているものを見て顔を傾けないなんてことができるほど、あたしたちは器用じゃなく、3人揃ってずっと顔を左側に傾けていた。

  ***

もともとこのナメッタ村が大地溝のすぐそばの土地にあって、大きな地震があるたびにその土地自体が傾いたまま大地溝に沈下してしまったというのは前に聞いた。

枯れかけた井戸がひとつと、狭い田畑...。
豊富な地下資源があるわけでもない小さい村、それがナメッタ村だという。

しかし、テロール将軍は、偵察の範囲にこのナメッタ村を入れていた...。
このような何もなさそうな村で、何を偵察するというのだろう?
あたしたちは、ニヤリとほほ笑むスティールの後をついていった。

  ***

村へ入ってみると、ある独特な雰囲気が漂ってくる...。
フロウエルのスラム街、あるいはイスタンタールの裏路地...、あの全方位から害意が向けられるような、いつも誰かに監視されているような、慣れていない者にとっては耐えられない雰囲気...。

見れば、ずいぶんと人相が悪いヤツらにあふれている。
ブラスの飲み屋街で見かけるようなヤツもいれば、ザレルの交易商の姿も目に入る。

何の産業もない村のわりに人が多い...、あたしの言葉をスティールが遮る。
「地下資源はなく、痩せた田畑しかないとは言ったが、産業がないとは一言も言ってねぇぜ」

そろそろ答え合わせが欲しくなったあたしたちは、スティールの顔を覗き込んだ。

  ***

南の大地溝は、巨人の一の矢を中心にして、放射状に伸びるいくつもの地溝で構成されている。
その中で、北に伸びる大地溝が、ザレルとクランブルスの国境の一部になっていて、東側の大地にここナメッタ村があり、西に伸びる大地溝が、クランブルスと南の小国『ガーマ王国』との国境になっている。

そして、大地溝は、ザレル側へ通じる山岳地帯にも幾筋か伸びていて、そこには間道のようなものがいくつも存在するという。

抜け荷...、このナメッタ村は、物に限らず人や情報にいたる様々な抜け荷の中継地点として国々のアウトロウたちで賑わっているのだという。

間道といってもかなりの難所で、どの間道も大地溝に崩れた大きな岩などが、たまたま地溝を渡れる程度に引っかかっただけの非常に危険な道で、足を踏み外せば奈落に真っ逆さま...。

リスクはあるがそれを承知で運びたいってヤツが集まり、集まった荒くれたち相手に商売する者、運び込まれたお宝をつけ狙う者、間道の難所をガイドする者...と実に様々な人間でこの村は大賑わいだという。

将軍は、ここナメッタ村がザレル軍の進入路になるかもしれないと思っていて、あたしらに偵察を依頼していた。

たまたまあの怪樹がナメッタ渓谷を封鎖していたために、クランブルス側への道だけは閉ざされていたことになるが、それをあたしたちが開通させてしまった...。

要らぬことをしてしまったか...少しだけ後悔していると、悲鳴が飛び込んできた。