BRAVELY DEFAULT BRILLIANT LIGHTS
REPORT錬⾦ゼミ活動レポート
[第1章] 1-19
激昂のスティール
ナメッタのあばら家から飛び出すと、まず重油が燃えるにおいが鼻をついた。
東...か、においが流れてくる方向を見ると、燃えさかる炎と空まで立ち上るどす黒い煙が見えた。
長剣を手に疾駆してゆくスティールの姿が見える...。
「チッ!!」
あたしは自身の舌打ちを背中に残しながら、その後を追った。
クレアとルーファスもついてきている気配がしている。
***
立ち止まり、激昂を隠しもしないスティールの向うに、何人かのサソリ団員を率いた大男が見える。
(あれが、スティールの仇...スコーピオン・ビリーか)
筋骨隆々の大男が、聞いていた通りのサソリのマークが入った眼帯をし、左手の上腕から下が、3本の鉤爪と火炎放射器がついた義手になっている。
あたしらが到着した時、ビリーが放つ"形見"、"烙印"などの言葉がようやく聞こえ、スティールは完全に我を失っていた
クレアが制止するのもまったく聞こえていないスティールは、ビリーを斬りうと跳びかかるも、足を滑らせて転んでしまう。
***
ビリーは、部下に何かを命じると、スティールを見下ろしてこう言った。
「我を忘れて単身突っ込んで、...挙句は、大切な身内を危険に晒す。俺は、手前ぇの...いや、手前ぇや親父のそういうところが、昔っから大っ嫌いだったんだよ」
赤い大地に唾を吐き、両手をすくめてなおも続ける。
「血のつながりがないとはいえ、お前ら、そっくりだったぜ。格好つけて、最後は無様に泥にまみれて歯噛みするところなんて、そっくりだ...!」
赤い砂を握りしめたスティールの歯ぎしりが聞こえる。
あたしは、大剣を下段に構え、ルーファスは詠唱を始める...。
***
「首領、持ってまいりやした...!」
先ほどビリーに何かを命じられていた配下が、大きな壺のようなものを抱えてきた。
「スティール、これがなんだかわかるか?」
ビリーが身をかがめながら、地に置かれた壺を指す。
それは、ひと月ほど前に、ビリーが略奪した村で手に入れた壺のひとつで、"光を捕らえて封じた壺"なのだという。
「なんでも、村に光の球が現れて、そこから魔物が出てこようとするのを村の神官が壺に封じ込めたんだとさ」
あたしたちに、戦慄が走る...!
(まさか...、光の球...?)
言い終わるやいなや、ビリーは左手の義手を振り上げ、壺を叩き割ると、光の球が現れ、どんどん膨張してゆき、スパークする...。
***
目の前には、巨大なドラゴンが雄たけびをあげていた。
ルーファスなどは、"世界中に一匹しかいないドラゴンが!"と驚きの声をあげていたが、ルクセンダルクでは、少なくともあたしが何度かお目にかかるぐらいには、ドラゴンは生息していた。
ドラゴンの咆哮が、辺りに響き渡った...!!