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REPORT錬⾦ゼミ活動レポート

[第1章] 1-20

将軍の下へ

担当:クレア

断末魔の咆哮をあげて、ドラゴンが地に崩れていく...。
満身創痍のスティールが、膝に手をついて息を整えている。

それを見ていたビリーがニヤつきながら近づいてくる。
「なかなか、いい助っ人をつれてきたんじゃねぇかよ...」

その助っ人が...、またお前のせいで死んでゆくってわけだぁ...。
悔しい~な~、スティールよ。

スティールは斬りかかろうとしても腕が上がらない。
私たちも一緒だった。
せめて...私はこれ以上ない表情でビリーを睨みつけた。

  ***

ビリーは、もう2つばかり壺を持ってこさせ、私たちにとどめを刺そうとしていたみたいだが、突然の地震によって間道のひとつが飲み込まれそうだという報告を受け、舌打ちをした。

ビリーはいくつもの間道を知っているようだったが、大所帯のサソリ団が抜けられる間道となると限られており、部下から「『会同』に間に合わなくなる」と注進されると即座に撤退を決断した。

「そういうわけだ...。お前らを血祭りにあげられなくて残念だが、俺様たちはここでおいとまさせてもらうぜ」

スティールが、なけなしの力を振り絞って投げた長剣が、ビリーの足元に突き刺さる...。それを見たビリーが、肩を揺すって笑う...。
「スティールよ...、ま~た...届かなかったなぁ。くっくっく...! あばよっ...!」

ビリーは、踵を返し、立ち込める煙の中に消えてゆく。

「くっっっそぉおおおおお~~~~~~っ!!」
スティールの叫び声が響き渡る。
駆け寄ろうとする私の肩をサンディが掴んでかぶりを振る...。

「くっっっそぉおおおおお~~~~~~っ!!」
スティールの叫びは続く。その声は、ガラガラに割れていた...。

  ***

サソリ団が村に放った火は、村にいる者総出の消火作業で鎮火した。
こういった時は、ならず者だろうが闇商人だろうがしっかり団結するようで、クリッシーから路銀を巻き上げようとしていた者でさえ、私が錬金の力で生み出した水を木桶で運ぶのを手伝っていた。

あばら家に集まった私たちは、村人から手に入れた情報を持ち寄って語りあった。
スティールだけはみんなの輪から外れている。

サソリ団とは、いくつもの国家を跨ぐ広域の盗賊団で、盗賊稼業の他に、大規模な抜け荷や密貿易、人の売り買いにまで手を染めているらしく、近年では、ザレルやガーマ王国にも太いパイプを持っているという噂だった。

ビリーたちが口にしていた『会同』については、誰もが口が堅くて、サンディがレンガを握り潰したくらいじゃ誰も口を開かなかったようだ。
(つまり、会同のことを知りながら話さなかったということになる)

いずれにしても、サソリ団のような大所帯が移動できる間道が、このナメッタ村の近くにあるということは、小部隊ならばザレル軍も通ってこれるということ...テロール将軍が懸念していたことは現実のものになりそうだということになる...。

外からサソリ団の残党がいることが告げられ、無言のスティールが戸口を出てゆく...。

  ***

サソリ団の残党は、人質をとって徹底抗戦の構えをとっていた。
うかつに手を出すわけにはいかず、村人が遠巻きに包囲する中、すたすたと歩み寄ったスティールが人質を羽交い絞めにしている男に礫を投げて人質を逃がすと、後は一方的な鎮圧劇となった。
私たち3人は、スティールよりも前にサソリ団員を気絶させ、どうにかして殺害しないよう心がけ、それを知ったスティールは、無言で戦いの場を去っていった。

  ***

またもや大きな地震が大地を揺らす。
ならず者や密売人たちが、ここ最近、大きな地震が頻発していることや、村がある大地がますます傾いていることなどを憂いていた。

ひょっとして、この地震もまた、クリスタルの...土の息吹が関係しているのでは...?
私の疑問を、まるで待っていたかのように姿を現すルミナ。

スティールの身にいろいろあったことを伝えると、人間同士のゴタゴタは人間同士でなんとかしてちょうだい、とにべもない。

ルミナによると、クリスタルのないヴェルメリオの大地は、いわば制御が利いていないと言え、すべての現象がどんどん極端になってゆく状況にあるという。

土の力が影響を及ぼすといわれるのが地脈で、地盤の沈降や隆起、地震などは、地脈の乱れが影響する最たる現象といえる。

つまり、もうひとつの土の息吹を手に入れてくれば、この頻発する地震も、きちんと制御されるということなのか...。
いささかルミナの口車に乗らされている気もしないでもないが、この地震を止めることは、ヴェルメリオからひとつの災厄を祓うことになるのは間違いない。

  ***

このまま北上して、国境の街ニーザでテロール将軍に間道の存在を報告し、錬金の街ブラスに帰って準備を調え、賢者の間へ...。
ナメッタ村を出発しようとした私たちに声をかける2人がいた。

「私たちも、一緒に連れていってください...!」
クリッシーと、あのローブの男であった。