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REPORT錬⾦ゼミ活動レポート

[第5章] 5-12

風の気配

担当:スティール・フランクリン

滝つぼの裏に洞窟だーあ?
そんな男のロマンみたいな話が...本当にあった。
(まあ、クレアやサンディに、「そのロマンは男だけのものではない」と注意を受けたが...)

『滝の隠れ道』
...単なる洞窟かと思いきや、ずいぶんと昔から使われていた道らしく、人の手で拡張された跡が随所に残っており、飛び飛びではあるが照明らしきものもある。

「ふむ...。この辺りで待つとしようか」
しばし洞穴内を歩き滝の音が小さくなった頃、スローンさんは歩みを止めた。
「なあ、爺さ...あ、いや...、スローンさんよう...」
爺さんと言われかけたスローンさんが表情を歪めたとかそういうのではなく、スローンさんの背後にいたサンディが、眉をつり上げてぶんぶん首を振るもんだからつい...。

俺にはわからねぇが、まるで悪戯をした孫でも見るようなまなざしでほほ笑むスローンさんは、どうして風のクリスタルの気配だけを感じることができるのか説明してくれた。

「わしは、50年ほど前、風のクリスタルの啓示を受けたのじゃよ」
風のクリスタルが、スローンさんにどう生きるか、覚悟のほどを問いかけてきたのだという。

「問いかけて...つまり、クリスタルは意思があるということですか?」
ルの字が、ルの字らしい(まあ、俺も同じ思いだったが)質問を繰り出すと、スローンさんは、概ねそれを認めつつも、言葉を濁した。

「あるに決まってるじゃない。ねぇ? クレア」
ルミナの少し蔑んだような言葉にムッとするルの字。そして「錬金学では、どんな物質にも意思はあるって...」と、ルミナが望む答えとはおそらく違うクレアの返し...。

デバコフ教授が感じるものが、クレアにはまだ、意思というほど明確には感じられないらしい。

「わしは、クリスタルの啓示で覚悟を決め、後の冒険の中でそなたと同じ、妖精族と出会ったのじゃ」
クレアに求めた答えをスローンさんが答えたものだから、ルミナがへそを曲げそっぽを向く。

スローンさんは、最初に問いかけた俺の方を見て、
「こうしてその方らと出会い、一緒に戦うのも風のクリスタルの啓示を受けたからこそ...。わしの定められた運命なのやもしれぬな」
...そう言って、目尻の皺を深くした。

サンディが、洞穴の奥を見て静かに告げる。
「しっ...、向うから誰かが来ます」

スローンさんはふっと気配を消し、俺もサンディもそれに倣った。
クレアとルーファスは、必死に口を押さえている...。

***

洞窟の奥から、ずいぶんとバランスの悪い歩き方をした男がこちらにやってくる...。

ただでさえ甲冑に身を包んでいるのに、懐に何やら詰め込んでいるようだ。

「...くっ、少し欲張りすぎたか。軍服の下に入れた財宝が重くて敵わん」
(チッ...、そういうことかよ...)

スローンさんが音もなく男に近づき、静かな声で問いただす...。
「それは、ミューザから略奪したものか」

突然暗闇から湧き上がった声に驚いた男が、さらに体勢を崩し、ガチャガチャと醜い音を立てる。

「貴様が奪ったものすべてを、ここで返してもらおう...」
スローンさんの剣が一閃し、男の直垂だけを斬り裂き、中から金銀財宝がこぼれ落ちる...。

「貴様っ、王墓まで暴いたというのか!!」
洞穴内に、スローンさんの怒りが膨れ上がるのがわかった...。

身が軽くなった男は、少しだけ後方に飛び退ると、
「どうやら、この魔獣使いのアスタリスクの力を発揮する時らしいな!!」
そう叫び、口笛を吹く!!

突然、男の背後から巨大な牛の化け物が現れて襲いかかる...!!

(ふん、こっちだって...!) 
そう思ったことを、後でサンディにこっぴどく叱られた。「あたしと牛の化け物を一緒にすんな」だと...。そんな意味で思ったわけじゃねえんだが...。

***

戦いはすべて、繰り出した魔物たちに任せていた男は、その魔物たちが次々と倒されるのを見て腰を抜かしそうになっている。

「さあ、風のクリスタルを返してもらおうか!」
スローンさんの切っ先が男の鼻先に突きつけられる...その時...背後から聞き慣れた音と光が...!!

「ま、まさか...!!」
「おいおいおいおい...!!」
「ここでザレルが現れんのかよ!!」

驚愕する俺たちに、一瞬だけ視線を外してしまったスローンさん...。
「こ、好機っ!!」
男はそう叫んで、脱兎のごとく洞穴の奥へ走り去ってしまう。

「爺さん、ここは俺たちが!! 追ってくれ...!!」

「かたじけないっ!!」
スローンさんは、男を追って洞穴の暗がりへと消えていった。