イヴァリースという世界─『ファイナルファンタジーXII』発売から20年
2026.03.16
2006年3月16日、PlayStation 2向けに発売された『ファイナルファンタジーXII』(以下、FFXII)は、今年発売20周年を迎えた。
舞台となるのは「イヴァリース」と呼ばれる広大な架空世界。魔法があたり前のように存在し、天かける飛空艇が大空を埋めるこの世界で、強大な帝国の侵略と、抗う小国の運命が交差する政治劇が幕を開ける。
主人公は、帝国に占領された小国ダルマスカの孤児・ヴァン。王女アーシェとの偶然の出会いから、空賊バルフレアやその相棒フラン、「裏切り者」の汚名を着せられた将軍バッシュなど、様々な仲間と出会い、世界を揺るがす陰謀へと巻き込まれていく。従来のFFシリーズに多かった「主人公を中心とした世界の物語」という構図から一歩引いた、立場や視点によって正義や悪が変質する群像劇を描いた物語になっている。
システム面でも、FFXIIは革新的だった。「アクティブ・ディメンションバトル(ADB)」と呼ばれる戦闘システムは、フィールドからバトルへとシームレスにつながり、プレイヤーはリアルタイムに行動する敵を相手に立ち回ることになる。またキャラクターの行動を組み合わせて自動化できる「ガンビット」システムにより、リアルタイムでのコマンド入力無しでバトルを行うことができる点は、シリーズに新しい戦略性をもたらした。
2007年には北米版をベースとしながら一部のバトルシステムに調整を加えた『ファイナルファンタジーXII インターナショナル ゾディアックジョブシステム』を、その10年後となる2017年にはPlayStation 4向けに『ファイナルファンタジーXII ザ ゾディアック エイジ』をリリース。ジョブシステムの大幅な刷新をはじめ、グラフィックのHD化や、全楽曲を生演奏で再収録するなど、現代のプレイヤーが快適に楽しめる内容へと進化している。
2026年現在ではPlayStation 4・Nintendo Switch・PC(Steam)・Xbox Oneでプレイ可能だ。
「イヴァリース」とは
「イヴァリース」は、ゲームデザイナー・松野泰己氏が生み出した架空の世界だ。ファイナルファンタジーシリーズの中でも独立した世界観を持つ「イヴァリース・アライアンス」と呼ばれる作品群に共通する舞台として登場する。
この世界には、ヒュム族と呼ばれる人間のほかに、ヴィエラ族、モーグリ族、バンガ族、シーク族など多様な種族が存在する。剣と魔法が存在するファンタジー世界をベースにしながら、時代ごとに変遷する各国の文明や政治的背景などが緻密に描かれているのが大きな特徴だ。
作品ごとに時代設定は異なるが、それらは同一の地平線上にある歴史の断片として繋がっている。

『ファイナルファンタジータクティクス』
イヴァリースという世界が初めて登場したのは、1997年にPlayStation向けに発売された『ファイナルファンタジータクティクス』(以下、FFT)だ。
本作はシリーズ初のシミュレーションRPGとなり、クォータービューのフィールドで展開するターン制のバトルが特徴。プレイヤーはユニットを動かし、地形や行動順、ジョブの組み合わせを考慮しながら敵と戦う。また、20種類以上のジョブに400種類以上のアビリティを自由に組み合わせてキャラクターを成長させることができた。
本作の大きな魅力は、そのシナリオにある。主人公 ラムザと、かつての友 ディリータ。持つ者と持たざる者という立場の違いを背負った二人が、獅子戦争を巡る策略と陰謀に翻弄されながらも、それぞれの正義を見出して歩んでいく。真実の先にある正解なき問いが、プレイヤーの心を強く揺さぶった。
イヴァリースとの関連という点では、種族・地名・神話体系など随所に共通する要素が散りばめられている。
2007年には移植版としてPlayStation Portable向けに『ファイナルファンタジータクティクス 獅子戦争』が発売。2025年には『ファイナルファンタジータクティクス - イヴァリース クロニクルズ』が発売された。

『ファイナルファンタジータクティクス アドバンス』
2003年にゲームボーイアドバンス向けに発売された『ファイナルファンタジータクティクス アドバンス』(以下、FFTA)は、FFTと同じタクティクスシリーズでありながら、まったく異なるトーンと物語を持つ作品だ。
身分や格差、策略や陰謀などをテーマとした社会派な前作からは一転、FFTAのイヴァリースは明るくポップなビジュアルと雰囲気を持ち、誰にでも親しみやすい世界として描かれている。主人公は現代に暮らす普通の子供・マーシュ。田舎町セント・イヴァリースに引っ越してきたばかりの彼は、ある古い本に触れたことで、出会ったばかりの友人とともに「異世界イヴァリース」へと迷い込んでしまう。
戦闘システムは前作同様、クォータービューのフィールドで展開するが、本作でのバトルは「エンゲージ」と呼ばれるゲーム形式で進行する。「ジャッジ」と呼ばれる法の番人が戦場に登場し、あらかじめ設定された「ワールドロウ(法)」に従って戦う必要があるという本作ならではのユニークなルールが追加された。なお、「ジャッジ」はFFXIIにも登場し、そのうちの一人は物語の重要なキーパーソンでもある。
人間族(ヒュム)、ヴィエラ族、ン・モゥ族、バンガ族、モーグリ族の5種族がそれぞれ固有のジョブと能力を持ち、パーティを編成する。この種族はFFXIIにも登場し、イヴァリースを構成するひとつの要素として両作品をつないでいる。
物語の目的は元の世界に戻ること。だが、共に飛ばされた友人たちは、それぞれの理由から異世界にとどまることを望み、マーシュと対立することになる。
2007年にはニンテンドーDS向けの続編『ファイナルファンタジータクティクス A2 封穴のグリモア』が発売された。

『ファイナルファンタジータクティクス - イヴァリース クロニクルズ』
『ファイナルファンタジータクティクス』を、新たな時代のプレイヤーに向けて鮮やかによみがえらせたのが『ファイナルファンタジータクティクス - イヴァリース クロニクルズ』だ。
本作の大きな特徴は、「エンハンスド」と「クラシック」の2バージョンを収録している点だ。『ファイナルファンタジータクティクス』のグラフィックスを進化させ、ユーザーインターフェースを全面一新、そして現代版として大きく加筆・調整の施されたストーリーをフルボイスで楽しむことができる。「クラシック」ではオリジナル版をできるだけ忠実に再現し、かつての思い出のままにゲームを楽しむことができる。
対応プラットフォームはNintendo Switch 2・Nintendo Switch・PlayStation 5・PlayStation 4・Xbox Series X|S・Steamと幅広く、現行のほぼすべての主要ハードでプレイできる。
『ファイナルファンタジータクティクス』、『ファイナルファンタジータクティクス アドバンス』、『ファイナルファンタジーXII』はそれぞれ異なるジャンル、異なるトーン、異なるメッセージがこめられた作品でありながら、「イヴァリース」という世界を共有している作品群だ。
三作品に共通するのは、世界の理不尽さと向き合い、それでも前へ進もうとする人間の姿だ。それぞれのイヴァリースは「正解のない問い」をプレイヤーに投げかけてくる。
『ファイナルファンタジーXII』20周年という節目にイヴァリースを訪れ、あなたの正解を探してみてはどうだろうか。
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