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BLOG開発ブログ
開発ブログ
2022.01.18
開発ブログ vol.004 アートディレクター 鈴木優 & チーフデザイナー 平牟禮好空
みなさん、こんにちは。本日は『ブレイブリーデフォルト ブリリアントライツ』(『BDBL』)開発ブログ第4回をお届けして参ります。
本ブログでは、普段あまりお見せすることができない開発チームの制作コンセプトやデザイン意図、非公開資料や開発中のエピソードをご紹介できればと思っております。
開発ブログ第4回の今回は「グラフィック」に焦点を当て、本作のアート関連およびデザイン全般のディレクションを行うアートディレクターの鈴木優(すずき ゆう)氏、「錬金の街ブラス」というメインイラストや背景グラフィック全般のデザインおよびご監修を担当している平牟禮好空(ひらむれ よしひろ)氏にお話を伺いました。『BDBL』のグラフィック面に関する制作秘話、クローズドβテストでのプレイヤーの方々の反応への感想について語っていただきました。
■10周年の集大成にふさわしく、新しさと懐かしさを感じられるものに
――本日は『BDBL』のグラフィックについてのお話をお聞かせください。お二方は本作においてどの部分を担当されているのでしょうか。
鈴木:
『BDBL』の世界観をゲームとしてどのようにプレイヤーに魅せるかを設計・制作を行っており、デザイン面全般を担当しております。
平牟禮:
背景全般の監修とメインイラスト、そして街背景を担当しています。
――ありがとうございます。「ブレイブリー」シリーズは、バトル、グラフィックすべてに独特なコンセプトがあるタイトルという印象があります。本作をどのようなイメージをして制作に携わったのでしょうか。本シリーズをどのような作品とイメージして制作に携わったのでしょうか。
平牟禮:
「ブレイブリー」シリーズのグラフィック的なイメージを一言で表現すると、「ミニチュア感」でしょうか。今回『BDBL』に関してはファンタジーであるとともに、スチームパンク要素を付け加えていることがポイントです。そして、デフォルメ感も特徴で建物を普通よりは一部大きく表現したり、縦横比の倍率をいじったりと、そういった工夫をして「ブレイブリー」シリーズの雰囲気を保つように調整しています。
――こちらが想像していないようなところまで、細かく気を配ってデザインを構築しているのですね。
鈴木:
「ブレイブリー」シリーズが10周年ということで、今回『BDBL』ではオールスターキャラクターゲームということで本シリーズのキャラクターが続々と登場します。これまで「ブレイブリー」シリーズが積み上げてきたイメージすべてが調和するような形を意識して、キャラクターデザイン、世界観を組み上げています。
過去作の装飾のあしらいを使うなど、「気づけるひとは気づくかな?」という部分はふんだんに入れています。「ブレイブリー」だからこそ、シリーズの特徴を尖らせて表現している場所もあります。
平牟禮:
10周年の記念タイトルということもあり、今までの歴代のキャラクターが多数登場します。キャラクターもそうなのですが、背景に関してもいままでの作品をプレイしていただいている方々に「懐かしさ」を感じていただけるように制作しています。そして、それがこれまでのシリーズのイメージとズレがないように、という部分も気を使いました。
■こだわりのグラフィック表現・技法
――今回グラフィック面でこだわった技法などがありましたら教えて下さい。
平牟禮:
先ほどもお伝えしたミニチュア感を大事にするために、被写界深度......チルトシフトといったカメラレンズを使用した表現を目指しました。
――チルトシフトを使用した表現とは、具体的にどのように見えるものなのでしょうか。
平牟禮:
写真で撮影したときの演出の一種なのですが、特定の範囲にピントが合って、その周囲が若干ボケるような距離感の見え方の表現、といえば分かりやすいでしょうか。そうすると、実際にカメラで撮影したようなミニチュア背景の雰囲気が出るというわけです。
鈴木:
この『BDBL』制作のお話をいただいたのは3年ほど前になるのですが、『ブレイブリーデフォルトII』の開発チームからこのチルトシフトを使用した表現方法を見せてもらい、同時に「これでオールスターゲームを作りたいんだよね。」といただきました。
そのときに率直に「これができたらすごく面白そう!」って思ったのですが、それと同時に「スマートフォンで動かせるかな......」と考えたのが今でも印象に残っています(笑)。「ブレイブリー」シリーズはグラフィック表現にもこだわっているタイトルですので、どうやってそのイメージを保ちながらスマートフォンで動かすか。この点が一番苦労していますね。
――スマートフォンで表現するのが難しいと感じた要因はどこにあるのでしょうか。
鈴木:
スマートフォンで遊んでいただくとなると、幅広いプレイヤー、さまざまな端末にて遊んでいただけるような形で作ることになります。それだと、コンシューマーでリリースした『ブレイブリーデフォルトII』のままだと描画、エフェクトのクオリティが高すぎて、キャラクターが動かなかったり、それこそアプリが落ちてしまったりというケースもあります。
端末の性能を考慮して、この表現をどこまでスマートフォンで生かせるのか、と考えたわけです。
――スマートフォンのスペック的に難しいところから、どのようにその問題を解決していったのでしょうか。
平牟禮:
今は技術の向上もあり、コンシューマーハードと遜色ない形で仕上がっているので楽しみにしていただきたいのですが、まず実装に向けて行ったのは「絶対やること」、そして「やらないこと」の精査です。ここまではギリギリまで頑張るかわりに、重要度が比較的に低い部分は切り捨てようなど、そういった取捨選択を繰り返して、今の表現にたどり着きました。
――ハードがスマートフォンに切り替わることで気を使った部分を教えて下さい。
平牟禮:
スマートフォンにはさまざまな端末がありますが、大抵はコンシューマーのときより小さい画面で見ることになります。その画面の大きさを意識して、よりキャラクターが目立つようなライティング技法を使って制作をしています。背景が目立ちすぎてしまっても不自然になるので、背景のコントラストを調整はとくに気をつけた、といった感じでしょうか。
――プレイするとき僕らはそれを無意識に見ているのですが、キャラクターを目立たせるためにライティング......光の当て方が大事ということでしょうか?
平牟禮:
はい、キャラクターのライティングと背景のライティング、そしてエフェクトがポイントになります。ぜひそれを意識して街やバトルなどを見てみてください。
――キャラクターがどのように強調されているか、そのような視点で画面をしっかり見てみるのも楽しそうですね! 鈴木さんはいかがでしょうか。
鈴木:
私はUIも担当しているのですが、スマートフォンになると基本画面タップでの操作になるのでコントローラーとは操作感がだいぶ変わります。そこを違和感なくプレイしやすいようにスマートフォン用に最適化したところは多数あります。
必要な情報までにたどり着く画面遷移の数、タップ数、どこに掲載されているのか、これらの導線にはとくに気を配って制作しました。
――コントローラーがないことによる差はどこにあるのでしょうか。
鈴木:
コントローラーと違うので、できる限り画面で見える範囲ですべての操作が完結できることを目指しました。そして、なるべくタップ数が増えて分かりにくくならないように、階層を多く作らないっていうのは心がけています。
プレイヤーの方々はどのゲームをプレイしていても「イライラするポイント」って絶対にあると思うんです。「この機能どこにあるの?」とか「タップ数が多くてわずらわしい」的な。操作時間がかかったり、重要なファクターなのに遷移場所が深すぎて気づけなかったり、そのようなトラブルが極力なくなるように注意を払っています。
――確かに、相当プレイしたのちに「こんな便利なシステムがあるのか!?」など気づくこともありますね。
■すさまじいレベルで描き込まれた「錬金の街ブラス」
――今回、アート、グラフィック面でもっとも苦労したところをあえて挙げるとしたらどこでしょうか。
鈴木:
やっぱり、これじゃないですかね。(錬金の街ブラスのイラストを広げて)。
▼錬金の街ブラス▼
鈴木:
今作の「錬金の街ブラス」というホームとなる街のイラストなのですが、じつは調整に調整を経てひとまず完成にこぎつけた状態です。これよく見てみると分かると思うのですが、凄まじいボリュームとデータ量なんですよ(笑)。
平牟禮:
イラストをプリントアウトしたときの実寸サイズがゆうに1平方メートルを超えていると思います。ふつうのパソコンだと重すぎて開けないんですよ(笑)。データを画面で見たとき、どれだけ拡大しても画像が崩れないほど描き込んでいます。
――......すごい。
鈴木:
画像のサイズが大きければ大きいほど、実際に細部まで描き込まなければいけないので、ここは平牟禮さんが本当にすごいことをやってくれたな、と(笑)。
平牟禮:
数値で言って理解していただけるかわからないのですが、ゆうに2万ピクセルを軽く超えました。通常ゲーム内で使用されるサイズ感としては2000~5000pixel前後が多いと思われます。最近だと1万pixelとかもあったりはしますが。
鈴木:
イラストだと水面を塗りつぶしてしまっているのですが、実際ゲームでは、水面は3D表現になっているので、建物が映ったり水面の中が見えたりもします。実際は奥行き、深さと細かいところまで描いていただきました。
平牟禮:
自分の中ではもっと描き込みたい部分があったんですけど、ゲームに落とし込む事を考えてちょっと抑えているところもあります。
――これで......ですか?
平牟禮:
一部の建物には歯車があり、実際のゲーム内ではぐるぐる回っているのですが、これを水面の中にも多数配置しようと考えていました。元来、ここは水車のイメージだったのですが、スチームパンクらしく歯車にしてみたんですよね。
鈴木:
背景の細部をスマートフォン上で表現するとなったら3Dで結構な負担がかかるよ、という部分もあり、そこは選択できなかった部分でもあります。
――この錬金の街のイメージを完成にはどれぐらいの期間がかかったのでしょうか。
平牟禮:
プロデューサーを含めチームによる確認のやり取りも踏まえると、半年ぐらいでしょうか。
最初はプロデューサーから「こんな街を作りたいんだよな!」的な考えをいただいてから、さまざまな資料をそろえて、まずこのラフを作りました。そこからラフのやり取りを何回か行いつつ、試行錯誤を重ねてこの段階までたどり着いたという感じですね。
――1からアイデアを集めて描きはじめ、修正しながらここまでたどり着くのは......正直想像できないです。
平牟禮:
プロデューサーやスタッフの面々とやりとりをした線画のいくつかがこれですね。
――おおー!
鈴木:
線画ですらこのレベルの緻密さですからね。スマートフォンでの表示を考えると、細かく描きすぎると見えないなという部分もあり、少しずつ要素を抜いていった部分もありつつですが、歯車のようにこだわって付け加える要素もたくさんありました。
――よくよく見てみると、これまでのシリーズに登場したルクセンダルクや魔法学園イスタンタールのようなテイストも見られますよね。
平牟禮:
今までのシリーズを今作に落とし込むというところから、これまでシリーズに登場した街のディティール部分を尊重した作りにしています。
鈴木:
1作目から10年間積み重ねたシリーズのひとつの集大成として『BDBL』があると考えているので、シリーズの懐かしさを感じていただけるような演出にはかなりこだわっています。
平牟禮:
シリーズに登場した街並みに似ていると感じていただけたのは、正直狙っている部分でもあったので、純粋にうれしいですね。
――そのほか、コンセプトアートを含め、実際ゲームになったときにここを見てほしい部分など、アピールしたいところはありますか。
鈴木:
錬金の街とホーム画面のリンク具合です。街の中に立つとキャラクターたちが「ちゃんとここにいるんだよ」っていうのが分かる作りを意識しています。ゲームをスタートしたときや、プレイ中によく着地する部分がこのホーム画面なので、街の細部も意識してみていただけるとうれしいです。
ホーム画面でキャラクターが錬金の街にいる雰囲気を出したかったので、奥行き感の表現にはこだわったので『BDBL』の世界観をホーム画面から感じていただけたらと思います。
プロデューサーだったり、スタッフとゲーム内の機能の相談をしていたときも、街のイラストをベースに話したりもしました。「こんな機能があるんだけど、錬金のではどこに配置しようか?」みたいな感じでしょうか。相談しながら街の機能に関しては徐々に場所が決まっていきましたね。
僕らデザイナー側のエゴじゃないですけれども、この錬金の街には「ここを見せたいな!」という部分は強くあるので、プレイヤーの方々には街に立っていることをどれだけ実感していただけるかが楽しみなところです。
そして機会がありましたら、タブレットなど大画面で街を見て、細かく動いている街のパーツを探してもらえるとより楽しめると思いますし、スマートフォンでは表示されていない部分まで描写していますので、より一層世界観を感じていただけると思います。
■クローズドβテストでいただいた反応
――まず、クローズドβテストでのグラフィックに対するプレイヤーの方々の反応ですが、10代から20代の方々から80%以上の満足というアンケートをいただいております。
鈴木:
10周年となる「ブレイブリー」シリーズにとって、これまでプレイしたことがないような新しい世代が受け入れてくれたというのは、すごくうれしいことですね。
平牟禮:
自分たちの感性もそこまでずれていなかったということが確認できました。そこが怖かった部分でもありましたし。
――そして、プレイヤーの方々からリアクションをいただいたかと思うのですが、どのようなご意見やご感想が印象に残りましたか。
平牟禮:
「グラフィックに懐かさを感じた」など、僕らが意図して制作していた部分をプレイヤーの方々にちゃんと受け取っていただけたのは本当にうれしかったです。
鈴木:
クローズドβテストでは参考になるご意見やご感想をたくさんいただきました。ありがとうございました。
幸い、グラフィック面に関しては評価を高くいただいていたので、すごくうれしくて、そして目指すべきところが間違っていなかったとほっとした部分もありました。このまま進めて、ご意見をいただいた部分に適宜修正、改善をしていけば、『BDBL』がよりよいものになっていくという実感ももらえました。
――ありがとうございます。最後に『BDBL』に興味がある方々、そしてこのインタビューを読んでくれている方々にそれぞれメッセージをいただけますでしょうか。
平牟禮:
シリーズ10周年というひとつの区切りとして、『BDBL』は10周年記念企画として新たな物語を生み出している作品です。グラフィックもストーリーもバトルもですが、プレイしていただいたプレイヤーの皆様の心の中になにか残せるようなものに仕上がっていると思います。リリースまでもうしばらくお待ちいただけると幸いです。本日はありがとうございました。
鈴木:
「ブレイブリー」シリーズとはいえど、『BDBL』はシリーズのスマホ向け新しいタイトルとして楽しんでいただける作品です。そして、繰り返しになりますがオールスターキャラクターゲームとなっているので、シリーズの各作品からもキャラクターが続々と登場する予定です。現在、自身の今お気に入りのキャラクターが発表されていないとしても、今後登場しますので、楽しみに待っていただけるとありがたいです。
そして、グラフィックチームとしては街の細部などでも世界観を表現、こだわっている部分が多数ありますので、少しでもそこに触れて楽しんでいただけるとうれしいです。
――ありがとうございました。