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REPORT錬⾦ゼミ活動レポート

[第007章] 7-7

火の巫女カーシャ

担当:ルーファス

「錬金ゼミナール...? イスタンタールにそんな学部あったかしら...」

「そして、その中に元正教騎士団員がいて...」

「剣派と黒鉄之刃に書状を届けにカッカ火山洞を火の神殿に向けて歩いていた、と...」

火の巫女カーシャ様は、僕たちの顔をひとりひとり覗き込むようにして見定め、最後はお手上げとばかりに降参した。

「あなたたちは、敵なの? 味方なの?」

味方に決まってるじゃないですか...そう言い切れるほどの根拠があるわけではなかった。

第一、敵だったとしてもこの場は味方だと言うだろうし...。

サンディは、火の巫女様のものと同じだけ困惑している。

火の巫女ともあろうお方が、火の神殿が今にも攻撃されようとしているこの時期に、2人の従者を連れただけでこの火山洞で何をしているのだろう?

火の巫女様は、困惑していると言いつつ、さほど困ってはいないようだ。
僕たちを疑いながら、僕たちが語ることをいちいち受け入れている。

「なんか調子くるうなオイ...」
スティールのつぶやきがすべてだった。
調子はくるうが、不快ではない。
ひょうひょうとしているというか、達観しているというか...。

「火の神殿は、まもなくマグマに沈むわ」
(またそうやっていきなり切り出す...)

「託宣...というか、予知夢というか...。数日前、火の神殿がマグマに沈む情景が鮮明に、脳裏に浮かんだの」

火の神殿と火のクリスタルがマグマに没してしまえば制御が利かなくなったカッカ火山は今以上の大噴火を起こす。
そして、内戦で疲弊したエイゼンの大地は、ますます荒廃するだろう。

(それで、火の巫女様はここで何を?)
サンディの、無言の問いに気づいた火の巫女様は、洞内を眺めながら答えた。
「私は、この火山洞に『道しるべ』を作っていたのよ」
火の神殿がマグマに没した後、何年後になるかはわからないけれど、いつの日か、誰かが火の神殿を復興してくれる日がやってくることを信じて、火の巫女様の思念を封じた道しるべを、この火山洞の中に用意しているらしい。

しばらく姿を見せなかった2人の従者が血相を変えてこちらに駆けてくる。
そして、背後には魔物を引き連れていた。

「ずいぶんと不用意なお供だなオイ」
僕たちは、魔物を迎え撃った。

***

「よし、決めた...!」
僕たちが魔物を撃退した辺りで、火の巫女様がつぶやいた。
どうやら、僕たちを味方であると"割り切った"らしい。

サンディが護衛を名乗り出て、僕たちは、火の巫女様が思念を封じるという3か所までついていくことにした。

***

道すがら、火の巫女様の質問に答えるうちに、クレアはヴェルメリオで起きている状況を打ち明けることになる。

ヴェルメリオでも火山の噴火で人々が困っている。
火の巫女様は、火の神殿がマグマに没しようとしているせいなのかと推察したが、ヴェルメリオにある火山がルクセンダルクにある火のクリスタルの影響下にあるわけがない。
それは変な話だと反論しかけたとき、火の巫女様はあることに気づき口にする...。

「あなたたちはまさか、別の星から来たというんじゃないでしょうね?」
別の星かどうかはわからないが、別の時空からやってきたのであるから、あながち間違っているわけでもない。

正直者のクレアが、口ごもりながら近しいものがあるとつぶやくと、火の巫女様はあっさりとそれを受け入れる。

驚かないのかと尋ねると、
「驚いてるわよ。渾身の冗談がそのまま肯定されるんですもの」
...と、そう言ってのける。

(冗談だったのか...)
なかなか調子がくるう...。
スティールと目で合図していると、火の巫女様は由々しいことを口にする。

「火の神殿がマグマに沈む...。そのきっかけは、おそらく私の死...」
予想はしていたが誰もが口にしなかったことを、火の巫女様はこともなげに言ってのける。

火の巫女様は、困惑する僕たちに、自分が死ぬ予知夢を見てから肝が据わったこと、以来、何事にも動じなくなったことなど「だからそう気にしないでね」ぐらいの軽さで語り続ける。

***

クレアがこの世界に『火のクリスタルの息吹』を入手しに来たことを告げると、火の巫女様は「『継晶の儀』に使うクリスタルの種火のようなものね」と言い当て、何の抵抗もなく受け入れる。

火のクリスタルに参詣したい者が、火のクリスタルを奪おうとする者に宛てた書状を届けに行く途中、火の神殿がマグマに沈むことを確信してその復興の時のために道しるべを残そうとする火の巫女と出会い、その護衛をしている...。
言われてみれば、何とも不思議な出会いだった...。

しばし沈黙が続き、辺りには遠方から聞こえる地鳴りと、噴き上がる溶岩が流れる音だけが響いていた。

***

「カーシャ様、着きました」
2人の従者に促され、不思議と静寂な雰囲気が漂う一角に歩を進める火の巫女様...。

「ここは、地脈の気が極まる場所...。こういったところは、どんなに火山洞の中が流動しても決して地中に埋もれることはないといわれているわ」
そう言うと、火の巫女様は祈りを捧げる...。

火の巫女様の祈りが、光となってその一角を照らし、やがて元に戻った。

「さあ、済んだわ。次の場所に行きましょう」
2人の従者が頭を垂れ、先導するように先を進んでいった...。