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REPORT錬⾦ゼミ活動レポート
[第008章] 8-2
キドケイユ村の記憶
キドケイユの地へと向かう途中、僕たちは国境の街ニーザに立ち寄り、テロール将軍に挨拶した。
歓迎してくれたテロール将軍は、キドケイユという懐かしい名が、かの大盗S・ビリーの今わの際に発せられたことをずいぶんと不思議がっていた。
22年前、王国暦のクラム825年...。
幼王救出の任に就き東へと向かう将軍は、ランケード夫人の密書を受け取って進路を北へと変えた。
将軍の側にひかえるマイヨ兵士長のお父さんは、夫人の第二の密書を受け取り、夫人とともに幼王への追撃をかわす囮となって戦死した。
将軍が夫人の第一の密書に書かれていた通りキドケイユ村に急行すると、そこには、寒村に似つかわしくない夫人が幼王に乗り換えさせた豪奢なランケード家の馬車があったという。
村人からふるまわれた芋のスープに舌鼓を打っていた幼王を保護した将軍は、幼王がこの村にいたという痕跡をすべて消すように命じた。
痕跡をすべて消す...つまり...。
クレアを除く全員が、その最悪の結末を想像したし、現にその時の将軍もそれを思わぬわけではなかった。
しかし、幼王が、ブルース殿下がそれを許さなかったのだという。
僕たちが、幼王がまともな王子であったことにほっとしていると、クレアがようやく想像が追いついたらしく目を見開いている...。
将軍は、豪奢な馬車を打ち壊して、村人には多額のpqを渡し、御年12歳のブルース殿下には馬に乗ってもらって西へと帰っていったのだという。
将軍が記憶しているキドケイユ村には、大きなニレの木が神木として祀られていて、その大木に幼王ブルースを乗せたランケード家の馬車が繋がれていたという。
あの神木ならば、おいそれと切り倒されはしないだろうし、たとえ切り倒されていたとしても切り株ぐらいは残っているだろうとのこと。
僕たちは、将軍に礼を言ってニーザの街を後にした。
***
僕たちは、ニーザの街で物資を調達した後、北へと旅立った。
ちょうどその頃、大慌てで将軍の元へと駆けこんでくるマイヨ兵士長の姿があった。
何をそんなに息を切らして...と呆れ顔の将軍であったが、差し出された書簡にあった蝋印をひと目見て言葉を失う...。
「こ、この書簡は...ま、まさかっ...!! 私は、私は...、いったい、どうすれば...」
将軍の大きな背中が、微かに震えているようだった。