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REPORT錬⾦ゼミ活動レポート

[第008章] 8-3

地質調査員

担当:サンドラ・カサンドラ

「...お~、寒いな...」
そうつぶやくスティールの息が白い。

(そんな腹を出して寒くはないのか?)
みんなの視線がうるさいので、あたしもニーザの街で購入した外套を羽織った。

「おそらく、この辺りだと思うんだけどなぁ...」
手製の地図を片手に周囲を見回すスティール。

「見てごらんよ。あれが巨人の矢じゃないかな?」
ルーファスが東の空にそびえる何かに気づく。
低い雪雲に霞んでぼんやりとしか見えないけど、とんでもなくデカいのだけはうかがえる。

「あっ、あの木...!! 例のご神木じゃない?」
そう言ってクレアが指さしたところには、雪をかぶった樹々の中にひと際大きな樹が立っているのが見える。

「うわ~~~ったったった!!」

あたしらがご神木の発見に喜んでいる中、誰かが大声をあげながら文字通り転がり込んできた。

「た、助けてください...!! 向こうから、魔物の群れが...!」
男の背後から、雪煙をあげながら魔物の群れが押し寄せてくる。

あたしは、動きの妨げになる外套を脱ぎ捨て、大剣を鞘から引き抜いた。

***

「あぶないところを、ありがとうございました」

丁寧にお辞儀をする男は、クランブルス共和国国土地理院の地質調査員のヤッパフ・ドーサンと名乗った。

ありていに言えば、クランブルス国内の地質を調査して記録する研究員で、
父親のヤッパフ・オアグラの跡を継いでの初の調査であるという。

近年、クランブルスの北に広がる『クランブルス北海』の氷が溶け始めている報告があり、その調査のためにキドケイユの地に派遣されてきたという。

「暖かくなって氷が溶けると何が都合が悪いんだ?」
スティールとルーファスが、足先をもぞもぞさせながら尋ねる。

「氷が溶けると海面が上昇し、沿岸部の波による浸食が甚だしくなったり、
高潮が起きたり...」

カシオタの街を襲った高潮を目の当たりにしてきたあたしたちには、とても分かりやすい例だった。それに加えて...

「氷によって阻まれていたサイローンの海軍が南下してきたり...」
そうつぶやいたドーサンの目からは、それまでたたえていた笑みが消えていた。

なるほど、国土地理院とやらが動いている本当の理由は、そんなところにあるのだろう。

「地形調査員として、この村に何か変わったことはなかった?」
ルーファスの問いに、村...だったのですか? と驚きを示しつつ、なるほど、それでか...とドーサンはしきりにうなずいている。

怪訝そうにしているあたしたちにドーサンは、例の大きな木を指さして、
「あのニレの大木のさらに奥に、お墓が...墓碑銘にララ・フランクリンと
あったんですよ」
...とつぶやき、あたしたちは思わずスティールの顔を見つめた。

「親方の...死んだ奥さんの名だ」
再び呆気にとられているあたしたちを置いて、スティールがニレの大木の方に向かって雪をかき分けていった。