BRAVELY DEFAULT BRILLIANT LIGHTS
REPORT錬⾦ゼミ活動レポート
[第008章] 8-12
大聖堂探索
ライムダールの町へ戻ったヘリオ審問官は、無事神竜の御子バハムートを連れ戻した旨をドモヴォイ最高司祭に報告していた。
一緒にいた魔道士は捨て置いたことも同時に報告したが、ドモヴォイ最高司祭はそのようなことに興味はないようだ。
「おうおうおう、そなたはバハという名なのか...」
バハムートの反応ひとつひとつに相好を崩し、その姿はまるで、孫のいうことなら何でも聞いてしまう好々爺そのものであった。
「...よいのですか? 審問の強化を申し出るのではなかったのですか?」
側近がささやくのを聞き流すようにしてヘリオ審問官はドモヴォイ最高司祭とバハムートのやりとりを、一見ほほえまし気に...内心はとても冷ややかに眺めている。
「構いません。ドモヴォイ最高司祭は、承諾されましたから...。グラディスにもそう伝えるのです」
ヘリオ審問官は、聞き返そうとする側近を視線だけで制すと、そのまま大聖堂を後にした。
***
再び屋敷を訪れたあたしたちを見て、ランドルフ司祭は興奮気味に神竜の御子捜索の成功を褒めてくれた。
...が、あたしらの陰でうじうじしているオミノスの姿を見ると、表情を一変させる。
「あ...!! 神竜様の御子をかどわかした魔道士...!!」
想像通りの展開に、オミノスの顔つきは卑屈さを増してゆく...。
「実は...」
バハムートは、ファイアドゴンという本来エクシラント大陸にはいない種族の生き物で、ここにいる黒魔道士オミノス・クロウのかけがえのない親友であること...。
神竜信仰をもち、ファイアドゴンを見たことがないこの町の人が、神竜の御子と誤解したことなどの事情をクレアが説明すると、本来ライムダール正教側のランドルフ司祭も戸惑いの表情を浮かべ始める。
「そんな...、だって神竜様の御子が現れてから、このライムダールは一段と暖かく...これは、ドモヴォイ最高司祭様が神竜様の声をお聞きになった結果ではないのですか?」
...マルグリットは信じられないとばかりに反論していたが、おそらく違うだろう。
クレアがバハムートのところへ案内してもらえないか尋ねるも、ランドルフ司祭は腕を組んで悩み続けている。
状況的に、ドモヴォイ最高司祭が民を欺いているのにも薄々気づいていて、おそらくあたしらがバハムートを取り戻そうとしているのにも気づいている。
しかし、教団関係者としてそれに表立って加担するわけにもいかない...そんなところだろう。
マルグリットが次の審問が始まると告げると、まるで助け舟を得たとばかりにほっとした表情を浮かべるランドルフ司祭...。
「最近、やけに審問の回数が増えてきた...。ヘリオ殿に一度釘を刺さねばいかんな」
また『審問』という言葉が出た。
ランドルフ司祭が発する審問という言葉にも、どこか暗い雰囲気が漂うのはなぜだろう...。
あるいは、この司祭はヘリオ審問官を快く思っておらず、そのためにあたしらの言葉に耳を貸したのかもしれない...と、ここまで推測した頃、司祭は、大聖堂への案内をマルグリットに託すと屋敷を出て行くのであった。
***
ライムダール大聖堂は、ランドルフ司祭の屋敷が建つ反対側の崖の頂上付近にある。
金色に輝く大きな竜の像があしらわれ、町の入り口から見上げた信心深い者には、渓谷の上をまるで竜が雄飛しているようにも見えたことだろう。
大聖堂の中に入ると、一般の信者が祈りを捧げる礼拝堂のようになっていて、祭壇の両脇には奥へと続く入口があり、おそらくは回廊の奥に、教団の各主要施設...教団上層部が祈りを捧げる祭壇など...があるものと思われる。
ランドルフ司祭の指示が伝わっているのか、入口に衛兵の姿などは見えなかったが、中からは、なかなかの雰囲気が伝わってくる。
「こちらになります」
そう言ってさらに案内を続けようとするマルグリットの肩をポンと叩いたスティールが、
「ありがとう。あんたはここまででいいよ」
...そういってマルグリットの脇をすり抜けるようにして入口に入ってゆく。
「あーあ、この先は、きっと魔物がウジャウジャなんだろうな~...」
ルーファスも続き、
「そういうこと...。あんたはここに残っていなよ」
あたしが、(ついてきちゃだめだよ)と多少の脅しの意味を込めて言い置き、
「じゃあ、私たちも行きましょう」
...と、オミノスと一緒に中へ入っていった。
ひとり大聖堂に残されたマルグリットは、不安そうな顔つきをしてあたしたちが奥へと進むのを見送っていた。