BRAVELY DEFAULT BRILLIANT LIGHTS
REPORT錬⾦ゼミ活動レポート
[第008章] 8-16
最後の息吹の儀
「...いないっ!!」
「バハが、神竜の御子がどこにもおらぬっ!!」
火のクリスタルが鎮座する広間に、最高司祭...いや、ドモヴォイ老人の悲鳴にも似た叫び声がこだまする。
「また誰かにかどわかされたのか...?」
「誰か、誰か...! 一大事じゃ...!!」
ひとしきり右往左往した後、ドモヴォイは広間を去っていった。
***
広間に戻った俺たちは...いや、サンディやルーファス、クレアは、息吹の儀式のための準備をテキパキと進めていた。
俺は、王麗から受け取った衝撃的過ぎる情報に、まだ心ここにあらずといった感じで少しふわふわした感覚になっていた。
「よかったわね、お父さんの汚名が雪がれて...」
そうクレアに言われ、「顔も覚えていない人だけどな」などと強がってみせたが、おそらく俺は、嬉しそうな間抜けなツラをしていたに違いない。
「スティール、クレア。周囲に人の気配はないみたいだよ」
サンディが儀式の開始を促す。
サンディもルーファスも、俺の実父の汚名が雪がれたことを祝ってくれている...。
「ハァ~~~!!」
俺は、大きく息を吐いて両頬をパチンと叩いた。
クレバーな自分を取り戻したかった。
***
「これが、火のクリスタル...。聞いていたよりずいぶん小さいんだな」
オミノスが、覗き込むようにして火のクリスタルを見ている。
バハムートもうなずいているようだ。
「ルクセンダルク民はみんな同じ反応だね」
ルーファスが気を利かせたつもりで放った言葉を、ケンカでも吹っ掛けられたかのように険しい表情で睨み返すオミノス...。
(いや、そんなつもりじゃ...)とルーファスが白旗をはためかせても、眉間も口の端もピクピクさせて威圧しようとしている...いったいどんな境遇で育ったらこんな反応が人間になるんだろう...?
かたや親友のバハムートはのほほ~んとしている...。
(ふん、面白いヤツらだ)
俺は、ルの字も含めて鼻で笑っていると、クレアがランタンをかざし、ルミナが現れた。
***
「あっ、よ、妖精...? だ、大丈夫なのかよ...こんなところで」
オミノスが血相を変える。
「大丈夫、誰も見てやしないさ」
サンディは、ヘリオ審問官やこの国の人々が敵視している妖精のことを言っていたが、オミノスは別の意味で驚いていたらしい。
ギャラリーが多いことにやや驚いてはいたが、ルミナが息吹の儀式を開始した。
***
「我は...、ル、...ミナ...、遠き...ヴェル...メリオの世界にて...クリスタルの...母となる者な...り!」
そう発した後、ルミナは体をくの字に曲げて苦しみだす。
荒れる息をどうにかこうにか押さえながらルミナは続ける...。
「か、かの地の火の災厄を...祓い、さらなる...荒廃を止める...ため、願わくば...、火の息吹を...分け賜えらると......かたじけ...なく...」
「何卒...、なにと...コフッ...! なに...とぞっ...!!」
最後は、軽くせき込みながら、ようやく祝詞を言い切ったルミナは、そのままうなだれて動かなくなる。
まばゆく煌めく火のクリスタルから、ほのかな光輝く息吹が出現し、うなだれたままのルミナが収まるランタンの周りをくるくる回りながら降りてくる。
「これ...で...8つの...希望が...そろっ...」
ルミナは座っていた蝋燭から崩れ落ちるのを、ランタンの内壁に手をついてかろうじて堪えていた。
「ルミナ、ルミナっ!! ねぇ、大丈夫? ルミナ!!」
心配してかけよるクレアを(大丈夫よ)と手で制し、
「さあ...、帰りましょう...。賢者の...間へ。みん...な、近寄って...」
...と言い終わる頃にはもう足元に魔法陣が出現して光り輝きだしている...。
「あ、オミノスさん...」
クレアが別れの言葉を言おうとしたが、何も言えぬまま俺たちは光に包まれた...。
光の中で、オミノスとバハムートの混乱した声...の最初の方だけが一瞬聞こえて消えた...。