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REPORT錬⾦ゼミ活動レポート

[第009章] 9-14

錐のように

担当:ルーファス

王軍には、元は四家の家臣だった者も数多くつき従っている。

「なあ、俺、カシオタの街の出身なんだけどよ...」

ブラス突入を前に、心中の呵責を同僚に打ち明けるこの男もまた、カッシーオ家領カシオタの街の出身で、先の増水騒ぎの時には錬金の街ブラスの支援によって故郷の家族が助けられている。

「戦いに私情を挟むと弾が当たりやすくなるというぞ」

この男の迷いを同僚は払ってやろうとしたが、結果的にこの男は突入時に味方の流れ弾に当たって落命することになる。

王軍の第三陣が、ブラスの街に侵入してゆく...。

***

ブラスに残る来訪者隊を束ねるハインケル殿は、ぽっかりと開いた西門を見つめていた。

イヴァール、イデア、リズたちが、大急ぎでこちらへと駆けてくる。
行きしなに持っていった大ダライは、3人とも打ち捨ててきたらしい。

首尾は上々らしい...。
イデアが親指を立ててハインケルに示しながら大盾の後ろへと隠れ、代わりにエルヴィスとリングアベルが前に出る...。

西門に、陽炎で歪んだ数両の青い機甲兵器が見えた...。

「お前ら、出番だぞ。王軍のヤツらを目いっぱい挑発してやれ」

2人は、味方が見ていてもイラっとくるセリフと仕草で王軍を挑発し始める。
「お前たちの相手など、このブラスの酔いどれ三銃士だけで十分だ...!」

(この三銃士にあたしを足すと四天王になるらしいのが納得いっていないのだが...)
(いや...)
(以下同)
(イヤ...)

見るからに挑発に乗った王軍が、一斉に内堀にかかる石橋に殺到してくる...!!

***

同時刻、ブラスから北へ数刻の地点...。

街役人モネールを先頭にしたブラスの避難民が長蛇の列を作っている。
モネールも含めて、王軍に殺されたくない住民は皆必死で歩いていたが、遅々として進んでいない...。

地位や財を持つ者も、家族や自分の命以外何も持たない者も皆一様に、必死に...時には手を取り合って、生き残るために血砂を踏みしめていた。

21年前の戦で負傷した片足が異様に重い...。
クルーンがふと後ろを振り返ると、ちょうどブラスの街から黒煙が上がるのが見えた。

「ブラスの街から黒煙が上がったぞ...! お、俺たちだけでも、街に戻って王軍のヤツらと...」

クルーンは、自分などは決して戦力になどなりやしないのはわかっていた。
それでもなお、戻って戦わなければ...クルーンは、この避難民の実質上の引率者クリッシーに言い募った。

このどこか頼りなさげなイトロプタ出身の若者は、悲嘆に暮れて苛立つ住民たちを宥めすかし、時には優しく励ましながらこの隊列をよく維持している。

「ダメです。今僕たちが街に戻っては...」
クルーンは、いつになく厳しい態度のクリッシーに、何か別の意図でもあるのかのようにも感じた。

大きな蛇の魔物を連れたニハルという来訪者がやってきて、王軍の第四陣が出撃したこと...同時に、王の本陣が手薄になることを報告してきた。

「そろそろ、頃合いのようですね」
クリッシーは、西の方を見て何かをつぶやいていた...。

***

クリッリーがいた地点から西へ数刻の位置...王軍からみればちょうど錬金のピラミッドの陰にあたるところに、我らが錬金ゼミナールの一団がいた。

ニハルとナードが王軍の動向や味方の首尾を逐一報告してくれている。

「よし、いい風が吹いてきたようだぜ」
我らがガキ大しょ...もとい、名軍師スティールが大きくうなずく。

軍師スティールの策は、今のところ上手くいっているようだった。

まずは、ブラスの北門から住民たちを避難させ、それを見た王軍がブラスに突入してきたら郭内に駐屯する来訪者たちが迎え撃つ...。

ブラスにいる来訪者隊は、敵がより突入しやすくなるように衛兵までもを北門から脱出させたらしい。

来訪者たちだけで、突入してくる王軍を撃退できるものなのか?
その辺りにも、何か必殺の策があるらしい。

軍師殿曰く、スティール発案、イヴァールがより過激化させた必殺技なのだそうだ。

「あんな、子どものいたずらのような手を食らった敵の顔が見ものでスネ」

今回は、あたしたちに同行してくれているデバコフ教授も嬉しそうにヒレをパタパタさせている。

「帰ったら洗濯場のおばはんたちに何かおごってやらないとな...」

何やら謎めいたことを言いながら核心については伏せ続ける軍師殿であったが、子どものいたずらじゃない方の、あたしらの作戦については地面に図を示して事細かな説明を開始する...。

あたしら錬金ゼミナールの一団は、住民の中に隠れて北門から脱出した。
頃合いを見て途中で別れ、錬金のピラミッドに隠れるようにして西へ西へと進み、王軍の本陣に接近している。

王軍は、第三陣に加え第四陣も出撃し、本陣が手薄になっているとニハルから報告があった。

「ここから先は、速度が重要だ」
敵が立ちはだかってきたら無論撃退する。
しかし決して深追いはせず、ただ錐のように王の本陣に向かって突き進む。

地面に描いた図を足で消し去ったスティールは、ゼミの級長であるクレアに進撃の号令を...と皆の前に立たせる。

教授がいるのに...と遠慮しまくるクレアであったが、当のデバコフ教授がクレアに対してどうぞどうぞしている。

観念したクレアが、皆の顔を見回しながら語りだす。

「私たちはこれより、街のみんなのささやかな生活を守るため、王様の本陣へ突っ込みますっ!」

それを見たスティールやルーファスは、硬い硬いとニヤニヤ...。
教授などはユーモアに欠けまスネと腕組みをしている。

「それじゃあ、みんな...!」
急に素っ頓狂な声を張り上げたクレアが、目をつぶってさらに大きな声を振り絞る。

「お、お、おっ...、おっ始めましょうかねっ...!!」

ワルぶったスティールがよくやる掛け声を、クソ真面目なクレアがクソ真面目に再現した。

「いい勢いだ、級長...!」
スティールに続き、皆で次々とクレアの背を叩いて西へと走り出した...!