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REPORT錬⾦ゼミ活動レポート

[第6章] 6-5

修理と対価

担当:サンドラ・カサンドラ

ザレルの都、大都の地下深く『繭の玉座』にて...。

風の将ナンナンは、大神官が招集してから大分遅れて参内してきた。

「出撃だと伝えたはずだが...」
大神官の小言に対し、ナンナンは一度うつむき、やがてまなざしを上げて普段とは違う強い口調で言上する。

「サガン...副将のサガンは、先の出撃で負った傷がまだ癒えておりません」

ほんの一瞬、間を空けて大神官の冷たい言葉が返ってくる。
「そうか...。出撃は明朝。準備を急げ...」

言うべきこと...いや言わねばならぬことを言上したのに...ナンナンが必死の思いで振り絞った意見は、無視されつつある。

なおも食い下がるナンナンに、大神官は失望したかのような冷めた言葉を投げかける。
「.........。サガンをここへ...」
「ワシが直々に治療してやると言っている。引きずってでもここへ連れてこい」

大神官の静かなる圧に、ナンナンは視線を上げられないでいた...。

***

ナンナンの部下数名に支えられて、風の副将サガンが参内してくる。

「...来たか。これよりワシが、お前の体を"修理"してやろう」
大神官が手をかざすと、無数の亡者のようなものが噴出し、サガンの体を包んだ...。
思わず目をつぶったナンナンの耳に、亡者たちのうめきと、サガンの痛みに耐えるうめきが押し寄せて、やがて静かになった。

「これで、お前の体は元のように動けるようになったはず」
さっきから、サガンはナンナンの問いにまったく答えようとしない。
大神官は、少し肩で息をしながらナンナンに向かってつぶやく...。

「こやつは、記憶と人間性の一部が剥がれ落ちてしもうたようじゃ」
大神官が施した治療とは、錬金術の一種だといい、錬金術とは、何かを得るために相応の対価を支払うものだという。

「サガン、サガン...!! あたしを、憶えているか...?」
「...はい」
サガンは、ナンナンのことは憶えている。
しかし、まるで意思をもたない"もの"と話しているようだった。

「風の将ナンナン、そなたたちにあらためて命じる。故郷ラヴィヤカの窮状を救ってほしければ、死ぬ気で風の命脈を奪ってまいれ。よいな!」

ナンナンにとって、かすんでしまっていた故郷ラヴィヤカについての想いが押し寄せてくる。

(あたしの祈願のために、あたしはこの手負いのサガンを出撃させようとしている...)
ナンナンが見上げる、サガンはまったくの無反応だった。

***

一方その頃、あたしたちは賢者の間、魔法陣の上にいた。

ルミナがいつも以上にあたしたちを急かす。
記憶が戻りかけているからはりきっているのか、はたまた何かに焦っているのか...。
ルミナが目を閉じると、魔法陣に光が宿る...。

「...見える、見えるわ...! 風が止んでしまった砂漠をたったひとり、北を目指すひとりの少女の姿が...」

「さあ、旅立ちましょう...! 孤独に打ちひしがれる救世の巫女に
一時の安らぎと温もりを与え、彼女が決して独りではないことを伝える旅へと...」

あたしはルミナの祝詞に何かを感じつつも、それが何かを思い出せないでいる中、光に飲まれていった...。

***

足の裏に熱い砂を感じた...。
あたしは、目を開ける前に、匂いでそこがどこだかわかった...。