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REPORT錬⾦ゼミ活動レポート

[序章] 序-16

ルミナのいざない

担当:スティール・フランクリン

今日は、朝から教授の代わりにクレアが俺たちに錬金学の初歩を講義してくれた。
専門用語の羅列などではなく、ヴェルメリオ大陸の古代に隆盛し、ある時を境に衰退した錬金学について簡単に説明する程度で、俺みたいな学のない者にもすんなり頭に入ってくる内容だった。

俺たちは、講義が終わると昼飯までのわずかな時間を大講堂の中で過ごした。
サンディとルーファスは、板書してある講義の内容を確認してあれこれ話をしている。
俺は、日差しが挿し込む席でうたた寝を決め込み、クレアは机の上に置いたランタンに向かってずっと話しかけていた。

よく見ると、時折ランタンが机の上で暴れている。
クレアの矢継ぎ早の質問に、ルミナの苛立ちが爆発している...といったところか。

俺は、2人の会話が聞こえる席に移り、聞き耳を立ててみた。
気づけばサンディやルーファスも近くに来ている。

  ***

「あんたがあの錬金術を使うヤツらの仲間だと知ってたら、誰が合図なんかするもんですか...!」
ランタンの中で、ルミナが腕を組み、そっぽを向く。

ルミナは太古の昔、あの錬金のピラミッドと呼ばれる建造物が建てられた頃に生まれたのだという。

滅びに向かう世界を救うため、大錬金術師たちは、伝説の宝珠『クリスタル』を創り出そうとしていた。

ルミナは、錬金術師たちによって創られた存在...。
クリスタルを産む母体として創り出されたのだという。

サンディが、ルミナの古の大錬金術師に対する態度と、他の錬金術師に対する態度に大きな差があることをつぶやく。
それがどういうことなのかも、俺たち3人にはまったくわからない。

ルミナは続ける。
古の大錬金術師の研究は順調に進み、ルミナが産んだ『希望の卵』は孵ってこの世を照らすクリスタルが誕生する...はずだった。

希望の卵が、希望の繭となったあの日...。
(この辺りで新しい用語が増えてきて、俺の理解が追いつかなくなってくる)

突如、古の大錬金術師は、ルミナをランタンに閉じ込め堅く封印してしまった。
気がつくと、ランタンの傍らには骸が横たわっていて、ルミナが次に目覚めたときには、人の形をした砂になっていた。

深い眠りについたルミナは、以降の記憶をところどころ無くしているらしい。

数千年の月日が経ち、数度の地鳴りで目を覚ましたルミナは、まどろみの中ふと楽しげな4つの気配を感じ、ランタンに火を灯して気配の主に合図したのだという。

それが、俺たちだった、か...。

  ***

どうすれば世界の荒廃は止められるのか。
ルミナは8つの世界を旅すると言ったがそれは何か。
人々の暮らしを見つめるとはどういうことなのか。
人の痛みに寄り添うとは、手に入れる8つの希望とは何か...。

いつになく空気を読まないクレアが、ルミナに対して矢継ぎ早に質問をぶつけ、ルミナがキレ散らかす。

俺たちの指摘で、ようやくクレアが我に返って落ち着きを取り戻し、ルミナは俺たちに対しても説明をしだした。

ルミナは、ランタンに閉じ込められた状態では、クリスタルの卵を産みだすことも、クリスタルの恩恵によって世界の荒廃を止めることもできないらしい。

そしてランタンの封印からルミナを解放するには、火、水、風、土の『息吹』を2つずつ...合計8つの息吹を入手してルミナ本来の霊力を解放するしかないという。

『息吹』は、ヴェルメリオ大陸には存在せず、ルクセンダルクとエクシラント大陸...サンディとルーファスがいた世界に『息吹』は存在する。

『賢者の間』の魔法陣から2つの世界のどちからに向かい、クリスタルの息吹を入手して帰ってくる...。
そうすれば、ルミナの羽の紋様がひとつ彩りを取り戻し、この世界の災いがひとつ取り除かれるのだそうだ。
(この辺りで、俺は考えることを放棄した。以後は聞こえてきたことだけ記載しておく)
賢者の間の魔法陣を使えば、元いた世界に戻れる...。
「ええ、戻れるわよ~。でも...、帰りたいの? あなたたち...。...ふふふ。そんなハズは、ないわよね~」
呆然とするサンディとルーファスを嘲笑うルミナは、少し残忍なものにも見えた。

「クリスタルの息吹とは、あのミューザ国から奪われたという噂の至宝から得るというのか?」
ルーファスが、慌てて話題を変え、サンディもそれに乗る。
「何を言っているんだい...。あの神殿に祀られた巨大なクリスタルから得るんだろう?」
2人が言及するクリスタル像に、どこか根本的な違いがあるように感じてはいるものの、それが何かが見当つかない。クレアは首を傾げっぱなしだった。
思考を止めている俺に、隙はなかった。

説明するのに飽きたルミナが、いたずらな笑みを見せる。

「どう? これから実際に、行ってみない?」

チャイムが鳴り響き、学食へダッシュする多くの音が聞こえてくる。
そうか、今日は揚げパンの日だったのか...。
今からダッシュしても間に合わない。俺たちは、外の屋台で昼飯を食うことにした。