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REPORT錬⾦ゼミ活動レポート

[序章] 序-9

将軍の課題

担当:クレア

ニーザの街中を見物していると、この街に住むという錬金術師に声をかけられた。
私の上着に縫いつけられている校章をみて、私がブラスの錬金術師だとわかったらしい。
『新都』の錬金学アカデミー所属の錬金術師らしく、技術交流のつもりでいろいろ話してみたけれど、どうやら生物の錬成に興味をもつ人だったらしく、私とは少し研究の範囲が違っていてあまり話がかみ合わなかった。

「クレアは、錬金学で何を目指しているんだい?」
ルーファスさんが興味深げに尋ねてくる。
うまくは言えないけれど...そういいながら私の中では何年も前から心に決めた目標があった。

四季を、錬金の力でこの世界にもたらすこと...。

それは気象学では? いやいやある意味環境学といえるね...。
イヴァールとルーファスさんが朝からディベートを始めようとするのを、スティールさんは苦々しく、サンディさんはニヤニヤ眺めていた。

  ***

将軍がニーザの街で手配してくれた宿は、とても快適だった。
男女別々にとってくれた広々とした間取りの部屋には風呂がついており、ふかふかのベッド、普通は旅人が自身で煮炊きをするか、外の屋台で済ませるかする朝食も宿側が用意してくれた。

ニーザの街の城門を出たところで、あまり見たことがない装束の人たちが目に入った。

「あれは、ザレルの商人だな...」
スティールさんの言葉に、イヴァール以外の全員が驚きを見せる。

これだけ厳重にザレル軍の侵攻に備えた街なのに、ザレルの商人の通行は許されているのか...。
私たちの疑問に、イヴァールが応える。

このニーザの街は、ザレルとの国境になる遥か以前から、『塩の道』、『絹の道』、『鉄の道』など、様々な通商のルートが交錯する交易の重要地点であったこと。
ザレルに限らず大陸中の商人たちは、様々な物産と情報をクランブルスの西海岸までもたらしてくれていたこと。
戦時の際に、一時的に商人の通行を制限することはあっても、約20年間、ザレルとの直接的な交戦がない今は、ザレルの商人といえど妨げることはしないのだという。

  ***

出がけに将軍の部下から書簡を預かっていた。
「おはよう諸君。寝心地はどうだったかな? さて、他でもないが、その宿は国境の街ニーザの中でもそこそこのランクの宿だ。いわゆる宿代もけっこうなものになる...」

ここまで読み上げたところでスティールさんには将軍の意図がわかったようだ。
将軍は、宿代の代わりに、私たちに国境の街ニーザ周辺の偵察をするように言ってきていた。

一泊の宿代が高くつきそうだ...スティールさんは舌打ちしていたけれど、サンディさんやルーファスさんはこの周辺の土地を見ておきたいらしく将軍の課題は渡りに船といったところのよう。

私は、将軍の「ただし、ザレル兵の部隊と遭遇しても決して交戦をしないように...!」という一文が少し気になっていた。

  ***

私たちが北へ向かおうとしたところ、まるで豚のような頭を持つ魔物が襲い掛かってきた。
難なく撃退した後に、サンディさんが複雑そうな表情を浮かべている。

「いや、どこの世界にも似たような魔物が出るんだな~って」
サンディさんがいたルクセンダルクにも、今倒したような魔物が人間社会のすぐ近くに出没していたらしく、ルーファスさんも大きくうなずく。
時折、エクシラント大陸で見かけたのとそっくりな魔物に出くわしてルクセンダルク、エクシラント大陸、ヴェルメリオ大陸で同じ魔物が分布するのかとびっくりしているそうだ。

しかし、スティールさんにいわせてみれば逆らしい。
サンディさんやルーファスさんが見かけたことがあるという魔物は、スティールさんには全く馴染みがなく、最近になって見かけるようになったという。

「『来訪者』は人間だけじゃなかったりしてな...」
スティールさんのつぶやきに、サンディさんもルーファスさんも信じたくないがゆえの沈黙をしている。

ふとランタンを覗くと、ルミナは別の意味の沈黙をしてほほ笑んでいるように見えた...。