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REPORT錬⾦ゼミ活動レポート

[序章] 序-10

天焦山脈

担当:スティール・フランクリン

俺たち5人は、『国境の街ニーザ』から北東、1日半の地点に来ていた。
ここから北へ数日間進むと、『北の大地溝』の大きく3筋伸びる地溝の先端に行き着くことになる。

この辺りは、ザレルとの境があいまいになっていて、いつザレルの哨戒に引っかかるかわからなかったが、とりあえず見える範囲に俺たち以外の集団はいないようだった。

イヴァールが、俺も知らない知識を披露する。
北の大地溝ができる原因となった『巨人の二の矢』は、ヴェルメリオ大陸の北端に突き刺さり、大地溝の中心部が北の海『凍海』とつながっていて、海水が流入した地溝は、まるで切り立った入江のようになっているという。

サンディが北西にそびえる山岳を見つめて言った。
「あのもうもうと煙をあげている山脈は? 火山かい?」

「西から東までずっと噴煙を上げているじゃないか...!」
ルーファスも驚きの声をあげる。

2人の予想通りの反応に、俺はイヴァールに解説してやるように促した。
俺たちが遠望するのは『天焦(てんしょう)山脈』といって、あの山脈の北に『サイローン帝国』がある。

山脈の尾根から立ち上る黒煙は、ルーファスが言う噴煙ではなく火山でもない。
俺が言う"壮大な山火事"という喩えをイヴァールは否定しなかった。

天焦山脈とは、人の手で放たれた火が、20年間燃え続けているのだ。
いまいちピンときていないサンディ、ルーファス、クレア。
サンディがさらなる説明を求める。

  ***

22年前のクラム825年(ザラール79年)、『王都の戦い』で王都を奪われた当時のクランブルス王国は、周辺諸国に対して侵略者ザレルの討伐の檄を飛ばし、それに対して南方の盟約国ガーマと、北方のサイローン帝国が応じ、兵を出した。

翌々年のクラム827年(ザラール81年)、サイローン帝国は大軍を発して天衝山脈を越え、ザレル軍もまた天衝山麓に迎撃の陣を布いた。

数か月のにらみ合いの末、戦いの火ぶたは切られ両軍合わせて10万を超える大軍が天衝山麓で激突した...!

丸一昼夜続けられた戦闘で、サイローン帝国軍は7人の将軍を討たれ、ザレルは若き君主ザレル2世が深手を負った。
実に両軍の半数以上が命を落とすという、史上まれにみる大会戦となった。

甚大な被害を受けたサイローン帝国軍は、北の大地へと引き揚げ、ザレル軍は、サイローン帝国軍が二度と山脈を越えてこないよう、尾根に消えない火『錬金の炎』を放った。

  ***

「ザレル軍にも、錬金術師がいるっていうこと...?」
予想通りの反応を示すクレアだったが、それには何も答えないでイヴァールが続ける。

それ以降、20年もの間、山脈の炎は消えず、もうもうと黒煙を上げ続けている。
本来、"天を衝く"という意味で名付けられた『天衝山脈』であったが、いつしか"天を焦がす"という意味の『天焦山脈』と呼ばれるようになったという。

クレアのカバンに下げられているランタンを小突いた俺は、錬金の妖精ルミナに解説を要求してみたが、「あの炎は四序の乱れの外側にある災厄よ」と、自分の力ではどうにもならないことを訴え、俺たちの道草を散々なじりながら姿を消す。

クレアは、錬金の炎について調査する気満々だったが、天焦山脈の麓は完全にザレルの領地...。
調べたいからといってすんなり入れてもらえるはずもなかった。

  ***

イヴァールは、ランタンに入ったルミナが気になって仕方がないらしい。
説明が面倒だった俺は、錬金術で動く人形...とテキトーに答え、同じわずらわしさを感じたクレアも偽りの同調を示した。