「FFシリーズ」「ダンジョンエンカウンターズ」のATBは寝落ちから生まれた!?伊藤裕之のゲームデザイン【スクエニの創りかた】(2021/12/23配信回文字起こし)
2026.10.14
■「スクエニの創りかた」とは
声優の安元洋貴さんが、スクウェア・エニックスのタイトルについて、クリエイターに直接開発過程のエピソードを聞いていく動画番組です。スクウェア・エニックス公式コラムでは、過去配信回の文字起こし記事を順不同で公開していきます。
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安元 皆さん、どうもこんにちは安元洋貴です。
今回は新規RPGタイトルである『ダンジョンエンカウンターズ』のディレクター伊藤裕之さん、そしてプロデューサーの加藤弘彰さんにお話を伺っていきたいと思っております。よろしくお願いします。
『ダンジョンエンカウンターズ』のコンセプト
安元 『ダンジョンエンカウンターズ』私も遊ばせていただいておりますが、この言い方が合ってるのかどうか分からないですけど、......渋いですね。非常にソリッドですね。何も余計なものが付いてないっていう。
ただ僕は最初やっていってスルメみたいなゲームだなと思って、一回やって状況を理解して、やることを理解していくとなるほどこういうことかと。トライ アンド エラーを積み重ねていくのがすごい楽しいゲームだなと、僕自身は思って遊ばせていただいているんですけど。
一般的に見たら令和の時代にマジかよっていう、すごいシンプルの極みのようなゲームでございますが。このようなゲームデザインにしたのは何かコンセプトがあって、狙いがあってなさったんですか?
伊藤 まず自分自身シンプルなゲームを作りたいっていうのがありましたね。
「ゲームの核」となる部分、「システム」で遊んでもらうためには余計なものって言っちゃうと大げさなんですけど、必要最低限のものだけでなんとかゲームができないかって考えましたね。
安元 あるべきものだと我々が思い込んでいるものをなくてもできるんじゃないか、みたいなことだったんですね。
伊藤 見た目の演出やデコレーションを省いて、一体どうなるんだろうっていうふうに考えてました。
安元 パズルゲームだったりとか、ゲームの創成期のインベーダーゲームみたいなものだったら結構理解し得るところもあるんですが、「ロールプレイングゲーム」でやろうというのはすごいことだなと。今の時代にやるのはすごいことだなと思いました。
ビジュアル全盛期のゲームに対するアンチテーゼなのか【ユーザー質問】
安元 ここでスクエニメンバーズで募集した質問のメールが来ているので、読ませていただきます。「吟遊詩人ロレンス」さんからの質問です。
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本作は昨今では基本となっている3Dマップを
縦横無尽に動き回るRPGへのアンチテーゼのような
気がしますが企画をするにあたって今のゲームに対する
不満のようなものを持っていらっしゃったのでしょうか?
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安元 最近のゲーム......これスクエニに言うのもアレなんですけどビジュアル全盛期といいますか、ビジュアルすごいゲーム多いじゃないですか。(本作は)ビジュアルがメインではなくて、本質的なところをメインにしようみたいな思いだったんですかね?
伊藤 そうです。アンチテーゼでは全くなくて、RPGが持っている一番その根幹にあるもの、もう一回それを見直して、果たして本当に面白いかどうかっていうのを自分で確認するというのもありましたね。
加藤 私もプロデュースする立場ではアンチテーゼみたいなものが一切なかったです。当然今のスクウェア・エニックスの作るゲームは自分も遊んでますし大好きですし。
その中で敢えてこれまでとは違うアプローチでありそうでなかったプレイ体験、やっぱり時間を溶かすように遊んでいただくようなゲームが生み出せたらなっていうところがこの『ダンジョンエンカウンターズ』には繋がっていますね。
安元 今我々の前に『ダンジョンエンカウンターズ』のポスターがあるんですけど、本当にキャッチコピーは一言「THINK .」考えろって書いてます。今気付きました。考えてました、確かに。
加藤 一番最初、伊藤さんから企画書とか、次にどういうゲームやろうねみたいな話をしてるときには、(伊藤さんから)話があった通りでシンプルさを突き詰めて考えるシステムを楽しんでもらうゲームをぜひやってみたい、と。
当然自分はもうプロデューサーなので少しでも見た目がいい方が売りやすいしっていうところもあったんですけど、シンプルさは伊藤さんも頑として譲らずというブレずにというところで
そこからいろいろと他のタイトルもやりながら何度か話していくうちに、お話を楽しむとはまた別のアプローチで考えていくというところの本質的な楽しさを提供するっていうのはアリなんじゃないかなっていうふうに考えが変わっていきました。
安元 これパズルゲームと勘違いしちゃう人いますよ。
加藤 なので(パズルゲームと)あんまり勘違いしないように、ギリギリドラゴンのしっぽがうっすら見えて、一応RPGですよっていうところも暗に示していたりします。

安元 触れてみたらこのゲームの面白さはわかるから、ぜひみんなにも手に取っていただきたいなと本当に思いますけれども
「NieRシリーズ」とかを作っていらっしゃる、他社の方だけどスクエニの作品も作っているヨコオタロウさんとかは、『ダンジョンエンカウンターズ』めっちゃ気になるっていうのをずっとおっしゃってましたから。
加藤 よりによって同じタイミングでシンクロしてしまった。
安元 『Voice of Cards ドラゴンの島』と同じタイミングでド渋ゲームが2本出るという、意外とみんな考えていることが近かった。渋めのゲームが同じタイミングで2本出る会社、すごいなと思いましたけどね。
加藤 齊藤さん(『Voice of Cards ドラゴンの島』プロデューサー)のところに今度こういう企画をやろうと思ってるんでって話しに行ったら 実はうちも同じような企画を考えていてしかも、時期いつ? 10月? え、うちも! みたいな。じゃあ一緒に盛り上げていければいいよねっていう話をしました。
安元 僕はどっちも遊ばせていただいてますけど、当たり前のように盛り上がるCG・ムービー・音楽も当然大好きだけども シンプルで己の脳の中で補完することって若かりし頃のゲームみんなそうだったよなと思ってそれが楽しかったりだとか。
『ダンジョンエンカウンターズ』に至ってはもっと(デコレーションが)ないしバトル中心と言いつつキャラクターという概念があるわけじゃないですか。そのキャラクターによりキャラクター性を持たせるために会話だったりイベントだったりがあったりもするゲームというのは多いと思うんですけどそれすらもなし!としたのはなぜですか?
加藤 ボイスとかも入れなかったですからね。
伊藤 最初の段階では男女の中でパーティーを組んだメンバーたちがちょっと会話した方が面白いかなっていうのもあったんです。そうなってくると今度そこにキャラクターの顔グラを出して何をしゃべってるかって文章で表示するっていう方法があるんですが、そうなってくると今度ボイスが欲しくなるんですよね。
やはりボイスを聞いてこのキャラクターはこんな声してたんだというのがゲームの一つの醍醐味だと思うんですけども、そうするとボイスとかいろいろなものが必要になってきてだんだんデコレーション化していってしまうというのがあったので、思い切って中途半端になるよりは全部やめてしまえってそう思いましたね。
安元 なるほど。シンプルだからこそ自分の中で考えていくのは本当に楽しいから「THINK.」とはよく言ったものだなと本当に感じております。
「ATB」採用の経緯 「FFシリーズ」でやり残したこと
安元 『ダンジョンエンカウンターズ』のバトルは伊藤さんの代名詞と言ったらちょっと失礼かもしれませんが「ATB」が採用されています。何か「ATB」でいこうという理由があったんですか?
伊藤 (FFシリーズで)やり残したことがあったので、今回このタイトルでやってみようかなと思いました。
安元 やり残したものとはなんですか?
伊藤 敵側のパラメーターとか「ATBゲージ」を出したままのバトルにしたらまた違った遊びが生まれるんじゃないかなっていう、それを試してみたかったんですよね。
安元 プレイヤーサイドと敵サイドの「ATBゲージ」が見えてるから、完全にどの順番で動くかが見えた状態でやるとどうなるのか ということですよね?
伊藤 はい。
安元 普通に受け止めて遊んでましたね。防御などの数値にしても裏で何らかのダメージ計算が行われるわけではなく見えている数値そのままなのも潔いと思いました。
物理防御と魔法防御を設定した理由、何か別々にした理由があるんですか?
伊藤 今回ですね「属性」っていうものをやめてみたんですよね。
加藤 火属性とか水属性とかありますからね。
伊藤 そうなってくるとモンスターたちの特徴ってなかなか付けられないんですよ。
それでこのモンスターは魔法に弱い、このモンスターは物理攻撃に弱いっていう弱点みたいなものを付けるために2つに分けて、2つぐらいであればもう表示してしまって、ここが弱点ですよっていうふうにプレイヤーに教えても大丈夫なんじゃないかなって思いましたね。
安元 なるほど、確かに全部視覚情報でいちいち向こうのキャラに対して「調べる」みたいなアクションをしなくても情報が目に見えた状態でバトルできますもんね。
伊藤 そうです。プレイヤーとモンスター側を対等な扱いにしたいなと思ってましたね。ただモンスターにとってはプレイヤーは見えていないんですけどね。
安元 『ファイナルファンタジータクティクス』の例をスタッフさんが用意してくださってるんですけど、このゲームを作る上で大事な要素の1つだったりするんですかね?
伊藤 そもそも『FFタクティクス』をRPGで遊んだらどんなバトルになるんだろう、というのは考えてましたね。
RPGにした場合、なんとなくですがシミュレーション臭さというかお互いが同じ戦場でギリギリの戦いをするというのは残したかったんですよね。今回はたぶんどのバトルもギリギリ勝てるかどうかというその辺を狙っていたりするんですけど。
安元 サクサク進むと実際問題結構シビアなものが多かったですね。
加藤 もともとやっぱりベースは『ファイナルファンタジータクティクス』のバトルデザインはやっぱり伊藤さんがやってたので、そういうエッセンスとかはまた別の形で出てるのかなというのは実際に遊んでいて感じます。
安元 今回も「数字」だったりとかでどこで何が起こるかとかを視認できるわけじゃないですか、そういう意味では、確かに近しいところもあると言えばあるか。
加藤 フィールドも斜め見下ろしのマス目があるところとか。
安元 何て言えばいいんですかね、このフィールドは。面白いですけどね、びっくりしました。何だこれはって思って。
お金がマイナスまで減る仕組みにした意図【ユーザー質問】
安元 ここでユーザーさんからの質問です。「テトラポッド」さんから
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道中で気が付いたら
所持金が大幅にマイナスになって絶望したのですが
なぜマイナスまでいく仕組みにしたのでしょうか
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安元 そうなんですよね。別に金融機関とか行ってないのに強制的に借金を背負わされるという。
加藤 これもやっぱり開発終盤でモニターにバランスチェックをしてもらってるときに、モニターから所持金がマイナス50万になるのはちょっときついと思うんですけどっていう話が出て、自分も確かにそれはちょっときついかなっていうところで
伊藤さんと話してもう少し軽減した方がいいんじゃないですかねっていう話で、一旦進んでいたんですけれども。
安元 伊藤さん的にはどう思われていらっしゃるポイントですか?
伊藤 皆さんキャッシュディスペンサーに行かれてお金を引き出す時にだいたい1万円ぐらい引き出すじゃないですか?大きな送金をするときにきっと50万ぐらいだと思うんですよね。限度額もあるかもしれないですから。
安元 実家に何かあったとかそういう時に。
伊藤 残高照会すると今は手数料で100円取られたりしますよね。もうちょっと高いのかな?その体験を乗せたかった。
安元 驚きですよね。
加藤 やっぱりゲーム自体のデータ量がすごい膨大なので、トータルのバランスとしてはやっぱりこれで良かったのかなっていうのは感じてますが、これがちょっと減らすとかなり複雑に絡み合ったゲームなので そういったところにも影響は出ちゃうのかなっていう。
伊藤 後々簡単に数百万を取り返す方法もあるので、そこに行き着いたらついに借金生活から逃れることができたんだっていうひとつのストーリーができると思うんですよね。そこに期待ですね。
安元 僕自身はそういうのを笑っちゃう人間なので全然笑ってやるんですけど、分からない人は「いやー!」てなった人はいるでしょうね。
伊藤 本当に申し訳ないです。
安元 知っちゃえば何てことないですからね。避けることも可能ですから。
加藤 本当にそこも元々ゲームの中に明確なお話は入れてないので、そういったプレイ体験の一つ一つが、こういう目にあったけどうまく乗り越えられたっていうところも盛り上がるのではないかということで。
安元 伊藤さんの感覚とか伊藤さんのおっしゃっているのってとても難しいというか、僕別の資料を見せていただいたんですが、ちっとも分からなかったです。
加藤さんとかは分かるものだったんですか?
加藤 ぶっちゃけやっぱりちょっと次元が違うかなっていうところはありつつで、よくあるのがミーティングをしているときに、バランスをどうとっていくかみたいな話をしている時に一瞬伊藤さんが固まってこんな感じでちょっとうつむきながら間が空くときがあるんですよね。
でもその時に全部ゴールはこうなってるからどういうふうにやっていくべきかみたいなところを瞬間的に何か計算してるみたいで、そこでもう、本当に最適解は出してきたりするので自分では全然何でそういうロジックになるのか分からない。伊藤さんの凄さなんだなっていうのはやりながら感じているところです。
言い方はちょっと本人の前で言うとアレですけど、天才肌のところはすごい感じますね。
安元 あと、さっきポロッとおっしゃって僕がスルーしてしまったんですけど、Excelでゲームを作ってるんですか?
今画面に出ているんですけど、先程僕が見せていただいた資料がこれなんですど、何もわからないんですよ。これはまず「index」っていうのは何に値するもの何ですか?

伊藤 これは僕が今回見返したんですけど、果たしてこの「index」ってどこから算出されたものか、記憶にないんですよね。
そこに詳しく自分がどう考えてこの表を作っているかっていうのが書いてあるんですけど、それは本当に自分が書いたのだろうかっていう。果たしてこれを読んだ人がこうやれば同じことができるかどうかっていうのも定かでないし、何を書いてるのだろうかという感じですね。
安元 これでゲームできたんですよ。
加藤 フォローしておきますと、『ダンジョンエンカウンターズ』は見た目はシンプルなんですがデータ量はこれまで伊藤さんが手がけてきた「FF」と同じぐらいのボリュームがあるので、それを1人で全部設計管理しているので、そういったところもちょっと出てきちゃったのかしらっていうのはありますね。
安元 ダメージの算出ってことだと思うんですけど「乗数12」というのは何か理由があるんですか?
伊藤 後々『ダンジョンエンカウンターズ』って大体イメージとして倍々に武器の強さが上がっていくのが面白いかなと思って作ったんですよ。
それで倍々にしていくと二乗曲線でどんどん増えていくんですけれども、それだとやり過ぎなので、もう少し小さい数を乗算していって上手い感じのカーブができないかなということで。そこに12って書いてあるんですけど8でも9でも10でも11でもだいたい同じようなグラフしかできないんですけど、なんとなく12という数字がいいのではないかと暗示をかけるしかないんですよね、決断しなくちゃいけない時って。
多分これは12でやったのかなと思いますね。

安元 ダメージ算出量とかを見て、後半戦のいわゆる強い武器みたいなものは思い切ってグーンと行っちゃえと。
伊藤 そんな感じですね。
安元 だからこそレアリティがあって入手するのが大変だよっていう楽しみがあるわけですよね。
加藤 伊藤さんがよく、1回ベースを作ったからあとはこれで他の人がシステムをさらにより良く作ってどんどんシリーズ化していけばいいんじゃないの?みたいな話を結構簡単に言うんですけど、本人ですらこの状況なので、簡単に他の人には同じようなバランス取りをやるっていうのは相当難易度高いですね。
安元 加藤さん的には「伊藤さんのあの数式で作っておいてよ」と軽はずみに人には言えないと。
伊藤 適当な数式さえできればできるよということが伝わればいいと思っているんです。
安元 まだ伝わってないかもしれませんね。
加藤 他の人でもやれるよって言うけど...やれない...。これができたら本当にすごいですね。
安元 これは情報漏えいばりに数式とかダメージ算出とかが出ちゃってて、他業種の方に見せていいの分からないんですけど、...いいんですね? 出ちゃってますけど。
伊藤 たぶん大丈夫。自分も忘れているので、そこから落とし込むことはかなり難しいと思いますね。
数値問題が解けやしません【ユーザー質問】
安元 もう一個皆さんから来たメールいきましょうかね。「吟遊詩人ロレンス」さんから。再びありがとうございます。
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数値問題が解けやしません
誰ですか?あんな難解な問題を作った人は?
採用しようとした人は?
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安元 作った人と採用しようとした人が今ここにいるんですけど。
加藤 全部作られてます。
伊藤 1回のプレーですべてを遊び尽くせるような設計がしたいですね。
安元 これは加藤さんにお伺いしたいんですけど、このゲームバランス難易度バランスもろもろっていうのはプロデューサーという目線から見て、どういうふうに考えていらっしゃいましたか?
加藤 結論としてはラストバトルがバトルのアクティブモードでそんなに難しくなく勝てるのであれば、あとは難易度はおまかせでいいですよって言ってはいるんですよね。
まずラスボスが倒せることが絶対。
安元 無理ゲーじゃだめですもんね。
加藤 かつ今回は、いろんな目に遭いながらもプレイヤー自身が成長していくようなプレイ体験のゲームになっているので、そういった部分であえて難易度は付けずに、プレーヤー自身の成長で乗り越えてもらえる形がいいなっていうのもあったので、イージー・ノーマルみたいなものはあえて入れなかったですね。
安元 考えて考えてたどり着いて倒して生き残ってと。それはプレイヤー自身の成長ですよね。考えなきゃいけないから、丸ボタン連打してちゃ無理ですもんね。
加藤 今回さらに最終的な段階でのバランス調整は結構4カ月ぐらいかけてかなり丁寧にやっていたので、そういった部分ではきちんと練り込まれた形のゲームになっているだろうっていうところは確信は持ってはいましたね。
安元 僕自身も最初は緩めの階層で「おお~」という感じで、途中から「あれ?」ってなるじゃないですか。考えて敵倒さないと次持たないわとか、そこら辺とかは僕は楽しくやれたんですけれども。
加藤 そのへんは全部伊藤さんの掌の上で転がされながらみんなプレイするような。
安元 最初は爽快感が勝ってて、サクサクいけて気持ちいいと思ってたんですけど途中から「あれ?」ってなって、それはそれで僕はすごく楽しかったんですけども。
「ATB」は寝落ちから生まれた!?
安元 それこそ『FFIV』かアクティブ・タイム・バトル(ATB)が開発された時って今とは全然環境が違うわけじゃないですか。
そんな環境の中で戦闘に時間という概念を持ち込むっていうのはなかなか難しかったと思うんですけど、あれは何から生まれたものなんですかね?
加藤 よくインターネットとか見ると伊藤さんはF1のセミオートマチックから発想を得たって書いてありますけど、そこは若干ニュアンスが違うみたいなことをこの間言ってましたよね?
伊藤 そうです、あれは違うんですよ。
「ATB」が生まれたのはあるRPGを当時プレイしていた時に寝てしまったんですね。バトル中に僕自身が寝落ちしたというか。その後ぱっと目が覚めるじゃないですか。そしたらまだ画面に敵が並んでいるんですけど、待っていてくれたんですよ。こっちの入力を。
......待てよ、と。
もしこれリアルな世界だったら全滅してるじゃないかと。もしそれくらいのリアルさがあれば寝なかったんじゃないかな、とそもそも。だとすると時間さえ流れていれば、もっとスリリングな展開になってたんじゃないかなと思いましたね。
安元 なるほど。F1全然関係なくなっちゃってますね。
伊藤 そうなんですよF1関係ないんですよ。
安元 どこからF1の話になっちゃったんですかね?
伊藤 ここからF1が出てくるんですよ。
じゃあリアルタイムなバトルにしようっていう風に考えてみようと思ったんですね。ただリアルタイムといっても、もう敵も味方も全部時間が流れていて実際戦場で戦ってるような感じになってしまうので、元々ゲームが持っていたターン制っていうのが楽しめなくなっちゃうんじゃないかと。何をしていいかわからない状態でどんどんバトルが進んでいく、これはターン制を遊んでいた子たちが戸惑ってしまうんじゃないかなと思って。
そうであればリアルタイムと今までのターン制の中間に何か、求めているものがあるんじゃないかなって思っていたんですよ。きっとリアルタイムとターン制の中間のものさえあればある程度のリアルタイム感を感じて、なおかつ今までのターン制のバトルをしっかりと楽しめると思ってるんですね。
そこでたまたまF1を見ていた時に「セミオートマチックシステム」っていうのがあったんです。これは「オートマチック」と「ミッション」のちょうど中間にあるものなんですよね。「セミオートマチックシステム」だったら「ミッション」が難しいなと思っている子たちも「セミオートマチック」だったら「オートマチック」っぽいわけだから、ちょっと「ミッション」の雰囲気を味わえるじゃん、って思うと思うんですよね。
これだ!と思って。じゃあ途中で何度かターンを入力する時ぐらいは止まればいいんじゃないかなって思ったんですよね。それだったらちゃんと入力も考えられるし、時間も流れている。それが実現するんじゃないかと思いましたね。
安元 後々(ATBを)可視化できるゲージになってますけども、己のキャラクターのタイムが来ましたら1回コマンドで止まると。でもそれ以外はリアルタイムで時が流れ、ゲージが溜まる様をみんなで見てハラハラすると。なるほど。
伊藤 それで最初に企画会議で提出したのが「セミリアルタイムバトル」だったんですよ。これこれこういう感じですと言ったんで、今までターン制を遊んでいた子たちも素直に遊べますよっていう、そういうアピールをしましたね。
安元 なるほど、でも今僕らも当たり前のように「ATB」って言ってますけど何で「ATB」って名前になったんですかね?
伊藤 おそらくなんですけどもリアルタイムっていう言葉がたぶんユーザーを寄せつけない言葉なんですよね。
リアルタイムでしょ?って、何かプレッシャーを与えているような感じになってしまうので。何日か後に坂口さんが「じゃあアクティブタイムバトルにしようか」と。
安元 何か腑に落ちる名前を考えてくださったんですね。
伊藤 そうなんですよ。だからそれまではアクティブという言葉がリアルタイムなんだけどもそれをすごく和らげて、なんとなく時間が動いているんだよっていうようなイメージをもたらしてくれる。すごくいい言葉だなと思いました。
安元 程よい緊張感といいますかね。面白い、坂口さんだったんですね。「FF」を作られた方ですからね。
『FFXII』の「ガンビット」は疑似オンラインゲーム体験
安元 今ちょっと「ATB」の話もありましたし、今この流れでお伺いしちゃおうかと思うんですけど、『ファイナルファンタジーXII』のガンビットのシステム。こちらはどのような感覚で発案なさったんですか?
伊藤 ホノルルに勤めてたんですけど、ホノルルから帰って来たときにみんな会社の人たちが『FFXI』を作ってたんですよ。それはオンラインゲームで仲間がワイワイ一緒になって戦ってて、何かすごく面白そうに見えたんですよ。
あまりにも面白そうに見えたので、一人でそのオンラインゲームを味わえるようなシステムを作ってやろうって思ったんですね。
安元 『ダンジョンエンカウンターズ』こちらは「ガンビット」のシステムを採用する可能性もあったんですか?
加藤 そうですね。一番最初の企画も決めて、仕様を作っている段階プロトタイプを作ろうかっていう時は最初「ガンビット」でバトルが展開するっていう形で、デモ映像とかも作ってたんですよね。こういう形のゲームの流れになりますっていう。
ただこれは今回伊藤さんが全部一人で設計監理をやるっていうところで「ガンビット」を使うとデータ量もさらに膨大になって、デバックのコストも伊藤さん一人じゃ背負いきれないだろうというので、今回はそこはやらずにまた次の機会でやっていこうかという話で進めました。
安元 「ガンビット」特化型のゲームもちょっとやってみたい気がしますけどね。それもそれで潔いまたソリッドなものが出たら僕自身は遊びたいなと思いますけれども。今ゲームのバトルのシステム部分のお話をしましたが、こういったものも伺いたいと思いますのでちょっと読みますね。
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「ファイナルファンタジー」の場合はシナリオ前提というお話でしたが
ゲームのバランス調整はどうやっているのでしょうか?
シナリオの都合上突如として仲間が強い技を覚えたり
仲間がいなくなったりすると思いますが
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ということですけれども。これは確かにシナリオありきのゲームの方がバランス取りとかってちょっと大変だったりしましたか?
伊藤 そんなことはなかったですね。ただキャラクターが途中でいなくなったりとか辻褄が合わなくなってしまうとまずいので、その辺をすごく注意しながら作ってましたね。
安元 特に『FFIV』なんかは急にパラディンになっちゃったり闇の男だったのに。そういうのもありましたけどあそこら辺のバランスとかも別にそんなには大変ではなかった?
伊藤 そうですね、キャラクターはそのままなんですけど。モンスター側でいくらでも調整が効くというか。
安元 なるほど。次の戦うモンスターで調整が効いたってことか。
伊藤 だからプレイヤーありきでそれに合わせてモンスター側を作っていくっていう感じですね。
安元 戦闘回数ってどういった基準値で決められるんですかね?
伊藤 『FFI』のバトルがだいたい500回ぐらいなんです。それでゲームが終わるのでそれが基準になってますね。
安元 一番最初の「FF」。
伊藤 バトル500回でだいたい13、14時間ぐらいでゲームが終了してちょうどデバックして朝から晩までやれば一通りデバッグできるっていう、ちょうどいい長さのゲームだったんですね。
安元 出社した人がちゃんと帰れると。でも大切ですよ、特に今の時代大切です。
加藤 次の日やることもちゃんと明確にして直すことも決めて。
伊藤 なのでそれがもう染み付いちゃってて。自分でもあれが基準だなって思うようになってますね。
安元 なるほど『FFV』のお話もちょっと伺ってみたいと思ったんですが、『FFV』とかは裏技みたいなものですけど、やろうと思ったらボスが一撃で倒せるとかあったじゃないですか。これは作る段階から伊藤さんとかが実はこっそりしめしめって仕込んでたりするんですかね?
伊藤 はいそうです。『FFV』とかはだいたいプレイヤーたちがどんな攻撃をしてくるかというのを分かってるので、それに合わせてモンスターたちを作ってたんですけど、そのモンスターの行動の中にこの攻撃を浴びたら一撃で倒れるとかそういうのを仕込んでましたね。例えば「フェニックスの尾」を与えると一撃で倒せるとか。
だから結局ゲームを作る側の人間って毎回同じようなことを考えているってことなんですね。しめしめっていうことを考えてるということなんじゃないですかね。
伊藤さんが今後やってみたい事
安元 伊藤さんは本作で久しぶりにディレクターを担当されたということですが、今後やってみたいことやゲームのアイデアとかはございますか?
伊藤 そうですね。作りたいものはまだまだあるんですけども、僕は会社員なんですよ。
会社員なので(定年があるので)できることといえばあと数作になってしまうかもしれないんですけど、ユーザーフレンドリーなものを作りたいなと思ってるんですよね。あまりにもひどい目に合わせすぎてしまったので。
安元 いやいやそんなことないですよ。確かに若干ピーキーなチューンではありますけど。
伊藤 今度はちゃんと保険が効くようなそういう配慮をしたいと思います。
安元 でも何かたぶん仕掛けあるんだろうな。
伊藤 この保険を買っておくと武器壊れませんよとか、保障しますよとか。
加藤 それもずっと昔から必ずあがるネタの一つですよね。
伊藤 言ってます?
加藤 何回も聞いてます、僕。
安元 皮肉ギンギンのゲームじゃないですか。
伊藤 あとはちゃんとお金も最初に借りられるようにして始めた方がいいかなとか。
加藤 現実とファンタジーが織り混ざるような感じが...
安元 めちゃくちゃリアリティがあったらそれはそれでまた違う頭の発想が必要だと、ユーザーも良い意味で楽しそうな気がしますけども
伊藤 そうですね。作っている側もプレイする側もやっぱり現実社会でいろいろ体験してるので、その体験が基になっているんだと思います。
安元 なるほどなるほど。なんと今日ずいぶん前の企画書があるということなのですが、これは見ても大丈夫なやつですか?
伊藤 多分大丈夫だと思います。用意されているのであれば大丈夫だと思います。

安元 多分どこかの偉い人がGOを出したんだと思うんですけど、これはでも今見た感じ結構『ダンジョンエンカウンターズ』感のある......これ企画書なんですよね?
加藤 これ10年前に一番最初に自分が見せてもらった企画書なんです。RPGで次どんな企画を考えていきましょうかっていう話をしている時の。
安元 もう10年前にこの発想があったんですね?これほぼ『ダンジョンエンカウンターズ』ですよね?見た感じ。
伊藤 10年前からこの発想しかなかったっていう感じですね。
安元 でも形になるのにはある程度時間というのは必要ですけど。こういう企画書なんですね。書いてある数字はちんぷんかんぷんで全然わからないんですけども。
加藤 しかも当時このままゲーム画面で作ろうとして、コンシューマーでやろうとしてたので。
安元 これ80年代のパソコンゲームですよね?
加藤 まさにシンプルの極みという。
この企画書を見た時は大体遊びたい内容とかは想像はできるので、間違いなくこれまでの伊藤さんのロジックで作るゲームであれば、システムとしては間違いなく面白いゲームになるのは見えてはいるけれども。もう少し見た目をもうちょっと何か、キャッチーなものにするともっといいんじゃないですか?みたいな話をしても、やっぱりここはあえて、こういうアプローチでやってみるのはどうだろうかっていう話をされていました。
安元 これ何なんだろうな?何がどれなのか全然わからないんですけど、左に並んでいるのがLIFEって書いてあるから、おそらくヒットポイントはなんだろうな。
加藤 パラメータがあってあとは敵と味方が右側が敵と味方の情報です。
安元 中央が敵か。レッドドラゴンとか書いてあるから敵なのか。
加藤 ATパワーの赤とかはあれですよね、「ATB」ですよね。
伊藤 そんなに掘り下げないでくださいよ。適当に作ってる企画書なので。
安元 かなり細かく見ようとしたらめっちゃ興味深いんですよね。
加藤 すごいのが、10年経っても伊藤さんのそこは一切ブレず核は変えずにやっぱりシンプルなものをっていうところですね。

安元 そしてこれは完全に『ダンジョンエンカウンターズ』ぽさがある。
伊藤 そうですね。これエンカウントをどうしようかなって思ったときに、どういう感じで敵がこのダンジョン内に現れるんだろうっていう検証のために作ったものですね。
安元 要はこれ配置図か。だからこの赤いところに何かを置いてるのか。
伊藤 そうです。実際はExcelでF9を押すと配置の形がどんどん変わっていくっていう。
安元 Excelめっちゃ使いこなしてるんですね。これはなんとなく形が見えてきてる状態ですよね。
伊藤 ここで例えば三差路とかに現れればかなり困るだろうなとか、あるいは、いくつか並んでいたらこれを突破していくのも難しいから、これも使えるなぁなんて思いながら検証してましたね。
安元 でもゲームにたどり着くまで10年前の企画書から色々と経て、このような形になったっていうのが分かりました。
今日はちょっと面白いお話がたくさん聞けて嬉しかったんですが、なんとぼちぼちお時間になってしまいそうなので。じゃあまず加藤さんからお伺いしたいと思うんですが、加藤さんにとってゲームの面白さとは一体何なんでしょうか?
加藤 この辺も特に伊藤さんと一緒に仕事をやっていく中でより意識に根付いたものなんですけど、決められたルールの中でどのように攻略していくかっていう、その「考えること」というのがやっぱり面白さなのかなと感じていますね。
実際プレイをしていくとどんどんプレーヤー自身の習熟度が上がっていって、それに伴って攻略法の幅も広がっていったりするので、その上でいろんな状況に応じてプレーヤーが個々の解釈で自由に解釈しながら進めていって、どんどんクリアして進めていくっていうところが醍醐味なのかなっていうふうには感じています。
安元 まさにそれを僕は小学校からずっと楽しくやらせていただいてますので、これからも素敵なゲームをたくさん作っていただければと思います。
そして伊藤さんにもお伺いしたいんですけど、伊藤さんにとってゲームの仕組みって一体何だと思いますか?
伊藤 まず情報を手に入れて、その情報から予測をして、今度それを実行に移してみて、最後に結果が返ってくるんですけど。実行に移したときにその結果が予想通りであればすごくハッピーな気持ちになれるし、もしそうでなければもう一回情報収集から始めようかっていう。それでまた予測してっていうその繰り返しをするっていうこと。ゲームの本質なんじゃないかなと思いますね。
これはおそらくですけれどもきっと日常生活もすべて。これを元に何か行動してるような、暮らしてるような気もしますね。
安元 実際問題トライ アンド エラー、トライ トゥ サクセス、それの重なりが我々の日々であることは間違いないですからね。ゲームだってそうだと。だからこそ1つのゲームも体験として我々に感動を残してくれるんだと思います。
素敵なお話たくさん本当にありがとうございました。
というわけで本日は、伊藤さんそして加藤さんにお越しいただきました。本当にありがとうございました。
伊藤・加藤 ありがとうございました。
※公開当時の内容のまま掲載しています。
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