オニオンナイトの称号を持つ少年は、託された「光」を持っている。
「この光はいったい……なんだろう?」
闇のクリスタルコアがエネルギーを放出したその後、理の転換とともに、彼は新たな世界へと流されていた。もうろうとした意識のなか、あるはずのない記憶が彼に流れ込む。
「勝てない相手とは戦わない主義なんです」
全く身に覚えがないのに、他でもない自分の口から出た言葉。いったいいつの記憶なのだろう?
彼は自分の記憶を振り返る。
孤児としてウルの長老に育てられ、クリスタルに選ばれ、悠久の大地を旅した記憶。
光の戦士として、闇の戦士とともに、暗闇の雲を打倒した記憶。
その記憶こそが自分を構成し、戦士としてここに立たせているものだと思っていた。
「でも、あの人はきっと『違う』って言ったんだ。僕は『数多の戦いの記憶を宿して』いる。だから、皆のことを知っている……?」
異なる世界の戦士たちへ抱く奇妙な親近感。これはなんだろう?
初めて会ったはずなのに、たまらなく懐かしさを覚える瞬間がある。
「たとえば……ティナ。はじめて会ったはずなのに……」
あの少女には、確かな懐かしさを覚える瞬間がある。
しかし、それでは矛盾している。浮遊大陸に育った自分の過去に、彼女の姿も、他の戦士たちの姿ももちろんない。だが、光の戦士の言葉を信じるならば。
「あの人のことは信じているし、尊敬している。だったら、その言葉もきっと本当だ。それなら、僕は……」
少年が新しい世界で目を覚ますと、かたわらにはデッシュがいた。
デッシュの知らない自分がいる。そう言ってみたら彼はなんと答えるだろう?
口に出しかけて、やめる。怖い。確かめるのが怖い。
胸の光は確かなものなのに、自分自身の存在が曖昧に思える。
それが「数多の戦いの記憶を宿す」ということなのか?
それでも彼は歩まなければならない。尊敬する「光の戦士」が、彼に光を託したから。
「分からなくても、前に進まなくちゃ。大切な、皆のために」
少年は決意する。不安の種をいまだ自らのうちに飼いながら、それでも、大事な仲間のために、一歩を踏み出す。