デッシュは首をかしげていた。
闇のクリスタルコアがエネルギーを放った後、オニオンナイトの称号を持つ少年と再会してから、何やら様子がおかしいからだ。
この安息の大地とやら、いまは「新世界」というらしいこの世界では、強靭な意志の光が力を持つという。
だとすれば、この少年こそがリーダー、他の戦士たちを導く光になるはずだ。
自分は彼を支えてやればいい。デッシュはそう思っている。
その彼が、どこか恐る恐る尋ねた言葉に、デッシュはさらに首をかしげた。
「ねえ、デッシュ。君は、僕が昔どこか遠い世界で戦ったことがあるって言ったら、信じる?」
「この世界に来る前にか? 故郷を飛び出して、また冒険でもしてきたのか」
このやんちゃな少年のことだ。デッシュを差し置いて、どこかへ冒険に出かけていてもおかしくない。そう思って答えたのに、返事をする彼は何やら遠くを見ていた。
「……やっぱり、なんでもない」
「なんでもなかったら聞かないだろ? 何かあったな」
「僕は……ここに来るまでの間、夢……みたいなものを見ていたんだ。そこで僕は今とは全く違う世界で、でも違う世界から集まった仲間と一緒に戦っていたんだよ。こんな話、おかしいだろ」
「そうだな、荒唐無稽だが……ウソだって決めつけやしないぜ。おまえさんには何か確信があって言ってるんだろ」
「デッシュは優しいな」
「それだけか? 続きはないのかよ」
「今は、それよりやるべきことがあるから」
一瞬、うつむいていた、その憂いの表情を無理やり剥がすように、少年は真っ直ぐに前を見た。
「僕は『光の戦士』として、やるべきことをするよ」
「つきあうぜ。『パートナー』だろ」
「心強いよ」
それは、嘘偽りのない本心のように思われた。
どうやら、少年は記憶について何か迷いがあるらしい。そういえば、「暗闇の雲」も何か惑わすようなことを言っていたか。
ならば、それを支えられるのは、冒険を共にし、同じ思い出を共有するデッシュのほかにいないだろう。
彼の「成すべきこと」に、どこまでもついて行こう、支えてやろう、と、デッシュは決意を新たにするのだった。